みなさんは、グリーンズってどんな人たちがつくってると思います?
NPO法人グリーンズのコアメンバー(フルタイムスタッフ)は、5人。
パーマカルチャー見習いの編集長・鈴木菜央さん
ビジネスと書いて「彼」と読む、プロデューサー・小野裕之さん
I LOVE RECORDS! 副編集長・スズキコウタさん
見た目とギャップのメタル好き! 学校・事業部マネージャーの高橋奈保子さん
そして、greenz peopleを担当する、コミュニティエディターの植原正太郎くんです。
この5名を中心に、フリーランスのプロジェクトマネージャーやエディター、ライターなどがチームとなって、NPO法人グリーンズは動いています。
では、グリーンズのコアメンバーは、それぞれ具体的にどんな仕事をしているの? そこで、これからコアメンバーの5人をインタビューしていきます。1人目は植原正太郎くんです!
NPO法人グリーンズ/greenz.jp コミュニティエディター。88年、仙台生まれ。大学卒業後、WEBマーケティング会社を経て、2014年10月よりグリーンズにスタッフとして参画。「greenz.jp」の寄付読者制度「greenz people」を担当し、日本初の寄付型メディアづくりに挑戦中!ライフワークとして、東京の武蔵小山で「風邪で倒れた時にお粥を届けあう」助け合いの地域コミュニティづくりに励む。(写真:廣川慶明)
僕、本を出版したことがあるんです(笑)
新井 正太郎くんとは編集学校で知り合ってからの付き合いだけど、改めて、どんな人だったのか、これまで正太郎くんがインタビューに答えてる記事を読んできました!「Huffington Post」と「キャリアハック」のやつ。
正太郎 恥ずかしいな!
新井 でも、おかげで2016年までの経歴がよくわかりました。小学校時代に頻繁に転校したとか、大学時代にブラインドサッカーのNPOで広報インターンをしたとか、SNSを学びたくて就職先を選んだとか、ライターインターンがきっかけでグリーンズと関わるようになったとか。意外だったのは、LINE@の本を書いていたということ!
正太郎 そうそう。僕、本を出版したことがあるんです。新卒で入社したSNSマーケティングのコンサルティングをする会社・トライバルメディアハウスでお世話になっていた縁で書くことができました。今でもたまに印税が入ります。2,000円ぐらい、気づいたときに(笑)
コミュニティエディターって?
新井 まぁ、そんな正太郎くんは、今、グリーンズでどんな仕事をしているんですか?
正太郎 主に「green drinks Tokyo」(以下、green drinks)と「greenz people」(以下、ピープル)を担当しています。コアメンバーの中でも特にグリーンズの読者と触れ合う機会の多いポジションです。
新井 それがコミュニティエディター? 初耳で、よくわからないな・・・
正太郎 ははは、自分でつくった肩書ですもん。今すでにある職種だと「コミュニティマネージャー」や「コミュニティデザイナー」に近いと思います。ブランドやサービスに紐づくコミュニティを運営したり、コミュニティの力を活かしてプロジェクトをしたり。ただ、自分が読者ならマネージメントって言われたら、どこか横柄で嫌ですし、コミュニティの課題解決だけをしたいわけでもないからデザインでもなく、代わる言葉を探しました。
新井 それが編集だったと。
正太郎 例えばピープルには魅力的な活動に取り組む人たちがたくさんいるので、そんなピープルのみなさんのスキルや思い、所在地などで重なり合う人同士をつなげていくのが僕の仕事です。それは、世の中のいろんな話題をつなげて、一冊の本にしていく編集と近い部分があるなと。あと、コミュニティエディターって検索したら出てこなかったので「これだ」と思ってつけました!
greenz peopleでやりたいこと
新井 ちょうど話題にのぼったので、ピープルについてもっと詳しく教えてください!
正太郎 NPO法人グリーンズの寄付会員をgreenz peopleと呼びます。ここ3ヶ月で約150人増えて、800名以上のコミュニティになりました。
主にFacebookを利用して、オンラインでみなさんがつながれるようなグループをつくっています。今では東京、大阪、岡山、島根、福岡など、地域ごとのグループまで生まれていて、各地で活発なやりとりが行われてます。岡山や福岡に至っては、地域のピープルがつながってgreen drinksの運営まで始まりました!
新井 そうなんだ! ちなみに彼・彼女たちの寄付は、何に使われるんですか?
正太郎 今は主にgreenz.jpの運営費です。記事を制作するためのライターさんの原稿料、取材費、校正費に充てられています。greenz.jpで日々配信される記事の中にはgreenz peopleの寄付で作成されているものが増えています。supported by greenz peopleというプロジェクトページもあります。
新井 確かに。今年はもう21記事(2月24日現在)も公開されていて、最近だと書籍『N女の研究』のノンフィクション作家・中村安希さんへのインタビューや、書籍『自分の仕事をつくる』の著者でもある西村佳哲さんが徳島県の神山町で暮らし始めたいきさつを語ったインタビューと言ったヒット記事が生まれてますね。
正太郎 現在では毎月70万円ほどの寄付をいただけるようになっていますが、今後はそれをピープルの活動サポートに充てていけたらいいなと思っているんです!
新井 ほほぉー。具体的には?
正太郎 新しいヒントを得たり、活動を次のステップに進めるために「green drinks Tokyo」や「グリーンズの学校」を半額で参加できるように割引分を寄付で補うとか、大きなことでは、ピープルのコミュニティで応援したいテーマを決めて、そのテーマに沿った活動をしているピープルの活動費をみなさんから寄せられた寄付で支援するとか。
新井 なるほど。
正太郎 まず実際にスタートしたのは、「greenz peopleの狼煙(のろし)」という連載企画です。シニアエディターの池田美砂子さんに編集を担当してもらって、マイプロジェクトの、まさに狼煙をあげ始めたピープルをgreenz.jpで紹介して、仲間をつのって、活動を応援をするコーナーです。
連載1本目の佐藤真実さんのインタビュー記事では、掲載をきっかけにテレビさいたまの取材につながったんです! こういうのをもっと増やしていきたいと、情熱を燃やしはじめています。
植原正太郎が担当している仕事内容って?
新井 ちなみに、典型的な1日のスケジュールは? 大枠は、なんとなくわかったんだけど、「じゃあ、何してるの?」と疑問を持つ読者もいるんじゃないかなと思って。
正太郎 う〜ん、実は日常業務はかなり地味なんですよ。
新井 地味でもいいですよ(笑) 僕がグリーンズの原宿オフィスに来ると、いつも忙しそうにパソコンを叩いてるから「何やってんだろう?」って気になってたんですよね。
正太郎 う〜ん……。
(ここで取材しているすぐ横で仕事をしていた、「グリーンズの学校」担当・高橋奈保子、通称Qちゃんが補足に入る)
Qちゃん あの、常にね。コミュニケーションをとっているんですよ。正太郎くんは。
Qちゃん 常に誰かと連絡を取り合っていても、それって何になるのか見えないですよね? でも、green drinksみたいなイベントや集いの時にそのコミュニケーションをとってきた力がガッと発揮される。それが正太郎くんの仕事です。
正太郎 確かにそうだなと思います。だって、ずっとFacebookメッセージいじってますもん。今日はこの時間(15時)までに1、2、3、4……20人とやりとりしましたよ!
新井 うわ、多い!
正太郎 あとはピープルのみなさんからのお問い合わせに答えたり、ピープルが増えるようにキャンペーンを考えたり。「PEOPLE OPEN NIGHT!」という個性豊かなピープルのみなさんが集まって、つながるきっかけのイベントを企画したり。ピープルから離れた仕事では、知り合いのスタートアップに頼んでgreenz.jpのモバイルアプリ(iOS)をつくってもらいました。
グリーンズの哲学
正太郎 あとは「出前グリーンズ」というキャンペーンもしてます。ピープルの方がイベントに呼んでくださったら、日本全国どこにでも飛んでいっています! ピープルのみなさんが集めてくださったお友達の方に「ほしい未来は、つくろう。」というグリーンズの大切にしている考え方や、地域の活動のヒントになるような事例をお話しに行っています。
新井 そうなんだ!
新井 やっとわかってきたんですけど、正太郎くんの「コミュニティエディター」という仕事は、ピープルの中をつなぐだけじゃなくて、グリーンズと社会をつなげる間口をつくることにも取り組んでいるんですね。アプリをつくったり、会いに行ってみたり。
正太郎 そうそうそう。グリーンズのコアメンバーを見渡したときに僕の役割はそれだと思ったんです。
正太郎 基本的に編集部チーム(鈴木菜央、スズキコウタ)は記事をつくっていく。事業部チーム(小野裕之)はそれをビジネスにする。Qちゃんは「グリーンズの学校」に参加してもらって、誰もが何かを自分で始められることに気づいてもらうのが仕事。
そんな中で僕ができるのは、グリーンズを広めたり、集まった人たちを盛り立てていくことだったんです。
でも、これはグリーンズが昔から大切にしてきたことと重なると思っています。
新井 はて、どういう意味でしょう?
正太郎 グリーンズって2006年に立ち上がって、翌年からgreen drinks Tokyoを始めているんです。当時はgreenz.jpというWebメディアしかなかったけど、人の集いや、集まって何かを生み出していくことの大切さ、そこから生まれてくるものを昔から信じてきたんですよね。
正太郎 「人をひとりずつちゃんと見る」というのはグリーンズの哲学だと思っています。
新井 確かにそうかもしれないですね。僕もgreen school Tokyo(現グリーンズの学校)に通った5年前がきっかけで、ことあるごとに相談にのってもらえて、それで2015年からライターやファシリテーターをするようになったので。忘れがちだけど……改めてサンキュー!
正太郎くんが感じたグリーンズの衝撃
新井 ところで、正太郎くんのほうは何をきっかけにグリーンズと関わるようになった?
正太郎 きっかけは僕が大学4年(2011年)のときです。今も編集部で脈々と続いている「ライターインターン」の実験台として採用されました。当時、モリジュンヤさんが編集部にいて、僕のブログを見て声かけてくれたんです。
正太郎 それで見よう見まねで記事を書いたりしていたわけですが、green drinks Tokyoに初めて参加して、衝撃を受けたんですよ。
新井 どんな?
正太郎 フリーランスも会社員も大学生もいて、それぞれがポジティブなマインドで、社会課題に関心があり、楽しくアクションを起こしている人ばかりでした。そういう人が集まってくるのがグリーンズなんだって衝撃を受けた体験は未だに残ってます。
その体験があって、いつかはグリーンズで働きたいと思ったんです。
新井 へぇ〜、そうなんだ!
正太郎 これ、ほかのインタビューでは話したことないんですけど、働きたいって気持ちを記録に残したんですよ。大学の卒業旅行で友だち5人と伊香保温泉に行ったとき、iPhone 3GSで10年後の自分へのビデオメッセージをみんなで撮影したんです。
僕はそこで「たぶんお前は、グリーンズで働いてるだろうな」って言ってました。
新井 ほほぉ〜、ロマンチックなエピソード!
正太郎 当時、グリーンズは新卒採用してなかったし、中途採用もあまりしてなかったけど、でも働きたいって思ってたんです。30歳ぐらいになったときには、って考えてたけど、気づいたら社会人3年目で実現しました!
ちなみに、そのビデオはタイムカプセルにしてiPhone 3GSごと公園に埋めたんですよ。一体、今はどこにあるんだろう……?
転校生トラウマを糧に変えて
新井 僕は正太郎くんを毎日見ているわけじゃないけど、ここ半年ぐらいでガッと変わったというか、大人の男性になったと思ってたんだよね、実は。
正太郎 そ、そんなふうに見られていたとは! でも、この1年でいうと、自分が何をするのかはっきりしてきたのは確かです。
正太郎 グリーンズってロックバンドみたいだと思っていて。編集長の菜央さんなら考えを広める役割、プロデューサーの小野さんなら事業をつくる役割。つまりは、それぞれが演奏する楽器がちゃんとあるんですね。
そこで自分は何が軸なんだろうと。そう考えていたら、小学生のときに3回も転校していた思い出に行き着いたんです。いく先々の小学校で「友達ゼロ」という環境から、なんとか自分も楽しく過ごせるようにクラスというコミュニティの中で友達をつくってきました。毎年友達がリセットされる体験はトラウマに近いものだったんですが、自分のまわりに友だちをつくったり、コミュニティをつくることに関しては、自然と誰にも負けないエネルギーを発揮できる源泉でもあるなって気がついたんです。
正太郎 そんな自分の原体験がピープルとシンクロして、ピープルをひとつのコミュニティとして捉えた時に、そのつながりで地域や社会がよくなる兆しをつくっていけるんじゃないかって。さまざまな活動をされているピープルのみなさんにお会いしていく中で実感できたんですね。
それがわかったら、すっごいスッキリして、グリーンズに居場所があるって感じられた。そんな風に腹落ちしたのがこの半年だったんですよ。
理想論はときに暴力。正太郎くんのやさしさ
新井 職場で自分の居場所をちゃんと見つける。それって多くの人にとって共感できるエピソードですよね。職場で何かうまくいかないとき、すぐ頭に浮かぶのは転職だけど、正太郎くんは自分の内面にフォーカスして、そこから生き方と役割の一致する部分を見つけられたんだね。多くの人のモデルケースになりそう。
正太郎 たしかに、ひとつの良い事例になれるかもしれませんね。でも、その理想論を誰かに押し付けるのも嫌だなって思います。
新井 え? その理想論を言っちゃいけないの?
正太郎 グリーンズという職場は、ピンときたら自分に合った環境を、自分でつくれる場所です。個々のメンバーの自主性を重要視するスモールチームだからです。そんな環境で働いているから、僕のようにできたと思っています。でも自分の役割や原体験に気づいても、自分ではどうしようもない環境にいる人だったら転職ってありですよ。
新井 確かに。「理想論や正論になっちゃう」って気にかけられるのは、コミュニティエディターにとって重要な要素かもしれないね。みんなの居心地の良さを考えられるというか。正太郎くんは、どうしてそう感じるんだろう?
正太郎 greenz.jpの記事で紹介している人は、見る人によってはキラキラしすぎていて、これが正しい働き方や暮らし方ですって迫ってくることがあると思っています。そうなると、そこまで至ることができない人にとっては、理想論や正論も暴力になるというか。「それができないから悩んでるんだよ!」って、なるというか。そんな人でも居心地良く、グリーンズに関わってくださるきっかけをつくるのが僕の役割だと思ってるんです。
(ここで、今回の取材に立ち会ったピープルの植草さんからもコメントが)
植草さん greenz.jpを知ったのは4年前だったんですけど、当時は僕もキラキラ系ってイメージでした。似たようなことをしたくても、できないでいて、率直にファンだったんです。でも、このままだとしたいことができないと思って、それでピープルに入ったんですよ。
正太郎 そうだったんですか。とってもありがたいです。
新井 正太郎くんも、やっとgreenz peopleに自分がどうやって力を傾けていけばいいのかがわかって、これからの時期。だから植草さんのような、なんとか一歩踏み出したいという人が、これからもgreenz peopleに入ってきてくれるといいね!
それでは最後に、今後の目標を教えてもらえますか?
正太郎 まず今年の話をすると、ピープル感謝祭をしたい! 毎月1,000円も寄付をいただいているんだから、感謝を伝えたくて。
例えばQちゃんは絵が描けるから似顔絵ブースを出展したり、副編集長のコウタさんがつくった曲を流して、料理上手の小野さんがごはんを振舞い、菜央さんがありがたい話をする(笑)、みたいなフェスです!
Qちゃん 菜央さんの説法ね(笑)
新井 通称「NAO ZEN」(笑)
正太郎 あとは、ピープルには本当に面白い人がたくさんいるので、ピープルのWebサイトでどんどん紹介していける「図鑑」をつくりたいですね。ピープル同士で取材して、記事をつくって、たまに編集部のアドバイスももらえて、文章がうまくなっていくとか。
新井 いいね!
正太郎 でも一番は、ピープルの方々ともっと関わりたいので、どんな些細な悩みでもいいし、協力してほしいことがあったら、遠慮しないで気軽に連絡してほしいです! 朝カフェや、ランチはいつでも!
今年は今まで以上に、グリーンズの出せるかぎりのリソースをピープルのみなさんの活動に活かしていきたいんです! ピープルの方は、相談があれば僕宛にFacebookメッセージを送ってくださいね!
1時間40分のインタビューは、書き起こすと2万4,000文字を超えました。ここに公開できたのは、わずか4分の1あまり。もったいないので、書き起こした「ほぼ全文」をこちらに公開しました! 正太郎くんをもっとディープに知りたい方は、ぜひご覧くださいー。