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名もなき人びとの記憶を、その場で物語に。文字を書いたことがない30人による本「MAGIC WORDS」

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世界最大の広告・コミュニケーションの祭典、「カンヌ・クリエイティビティ・フェスティバル」。「Cannes Lions 2016」では2016年の受賞作の中から、新たなアクションを考える刺激になるような、ソーシャルグッドな広告を連載で紹介していきます。今回ご紹介するのは、ブラジルからの事例です。

昔はこの集落も人がいっぱいいて、お祭りのときなんかは賑やかだったもんだ。

戦争のときは空襲で、この家の前はすっかり焼け野原になってしまった。

お年寄りと話をしていると、いまの私たちが経験できないようなドラマに出会い、ハッとさせられることがあります。

歴史に残るような偉人を通して過去を知ることも大切ですが、名もなき庶民が見て、聞いて、体験したことから学べることも、きっと多いはずです。しかし、文字を書くことができない人たちは、自らの経験や思い出を書き残すことができません。

ブラジルには読み書きができない人が、およそ1300万人いると言われています。(参照元)自然に抱かれるように暮らす先住民や、人種の坩堝のような大都市まで。多様な文化をもつ人々の記憶は、人知れず失われていく運命にありました。

 
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名もなき人びとの記憶こそ、大切な物語として残していきたい。そう考えたヒューレットパッカード社は、自社の技術を活用し、音声入力をその場で文字に起こし、紙に印刷するアプリケーションを開発し、「MAGIC WORDS」というプロジェクトを立ち上げました。
 
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スタッフはアマゾンの熱帯雨林からリオデジャネイロといった大都市まで、ブラジル中を車で旅し、その場で声を収め文字にしていきました。そして、最終的に30の物語にまとめられ、語り部の写真とともに「MAGIC WORDS」という書籍として出版。

さらに本ができるまでのプロセスを収めたドキュメンタリー映像も制作し、ブラジルに息づくリアルな伝承を、テクノロジーという魔法で後世に残すことに貢献したのです。
 

生きた歴史を美しい物語として伝えるこのプロジェクトはすぐにブラジル中の注目を集め、70以上のメディアを通して400万人以上の人に届きました。書籍はもちろん、さまざまな人の物語がプリントされたポストカードも反響を呼び、ブラジル各地のターミナル駅などに設置しようという動きも出てきているそうです。
 
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文化や習慣の違いは、ときに対立を生みます。しかし、一人ひとりの素直な思いを聞くことで、その違いを楽しむきっかけになったり、また同じ人間としての共感につながったりすることがあります。

リテラシーの有無を超えたコミュニケーションを実現する「MAGIC WORDS」のようなテクノロジーには、社会の多様性を広げる可能性を感じますね。

(翻訳アシスタント: 松沢美月)