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最期に残された、いつもの言葉たちが訴えかける。運転中のSMSによる交通事故を激減させた展示イベント「SMS LAST WORDS」

2016年10月9日に公開した記事を再編集してお届けします!

位置情報を使ったゲーム。
街中で立ち止まったときにも仕事ができるアプリ。
さらにはスマホ1台あれば、どこでも会議ができるビデオ通話システム。

新型コロナウイルスのパンデミックや、そもそも技術が発達したことにより、何かをしながら働いたり、観たり、遊ぶことができるようになりました。

その一方で、長年その危険性が指摘され続けているのが、街中や移動中の「ながらスマホ」です。特に危ないのが車の運転中。よそ見をしたり注意力が散漫になったりすることで、自分はもちろん、他人も巻き込む事故を招くおそれがあります。

「秋の全国交通安全運動」が始まる今日、2022年9月21日。この「ついやってしまう」けれど、自分や誰かの生命を奪ってしまうリスクがある行動を減らそうと行われたキャンペーン「SMS LAST WORDS(最後のショートメッセージ)」をご紹介しましょう。

このキャンペーンが展開されたのは、中国。日本よりもスマートフォンが普及する中国でも、ながらスマホによる事故が大きな社会問題になっており、車の運転中にメッセージのやりとりをすることで起きる死亡事故が後を絶ちません。その頻度は、8分ごとに中国国内で発生していると言われるほど。あまりにも日常的なことになっているので、その危険性を認識していない人が多いことがその原因でした。

何気なくしていることが、いかに重大な結果を招くか。ただ注意を促すだけでは伝わらないメッセージを届けるために、交通安全に取り組む団体「GLOBAL ROAD SAFETY PARTNERSHIP」は、現実を突きつけるあるイベントを実施しました。

まず、運転中のメッセージのやり取りで事故を起こし、亡くなってしまった350人が実際に使っていたスマートフォンを回収。事故を起こした瞬間まで交わしていたメッセージを、壊れたスマートフォンの画面に表示されているような形にし、交通安全の日に「SMS LAST WORDS」というイベントを開き、一挙に展示したのです。

ひとつひとつのスマートフォンには亡くなった人の名前と日付、そして死因が書かれたタグがぶら下げられ、墓石に見立てた黒い壁に掲げられました。

「もうすぐだよ!家に帰る途中!」
「わかった、ゆっくり運転しなさいよ」

「心配しないで。すぐに家に帰るよ」
「オッケー、待ってるね」

壊れた画面に映るそんな何気ないやりとりからは、このあとの一瞬で失われた命と、ささやかな幸せを想像させられ、胸が詰まります。

この展示会プロジェクトのメッセージは新聞やラジオによる報道、ブログやSNSで広まり、4,000万人以上のドライバーたちに「今後、運転中にメッセージのやりとりをしない」と約束させることに成功し、第一四半期においてSMSが原因の交通事故は48%も減少する結果に。

頭ではわかっていても、なかなかやめられない。そんな習慣をストップさせるために機能したのが、想像し、共感する力、つまり心に働きかけることでした。

社会的なメッセージを伝えようとするとき、ともすると説明的になってしまいがちですが、伝えるためにこそ、もっと感じさせることが大切なのかもしれませんね。

(翻訳アシスタント: 松沢美月)
(編集: スズキコウタ)