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捨てるときにカードをタッチするだけ! 食料廃棄を削減すべく韓国が採用した、最新だけどすぐそこにある技術って?

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野菜の皮、魚の骨、残してしまった料理など、食べれば必ず出てしまうのが「生ゴミ」。食料廃棄とも呼ばれるその排出量、実は日本が世界一だって知ってました?(出典元

「どうせ減らせないよ…」なんて、あきらめるのはまだ早いです。なぜならお隣の国・韓国では、最新だけど身近な「あの技術」で、食料廃棄をみるみる減らすことに成功したというのですから。

韓国で最近、マンションのゴミ置き場に並んでいるのが、この生ゴミ専用のハイテクゴミ箱。何がハイテクって、日本でも自動改札などですっかりおなじみ、IDカードリーダーが搭載されているのです。
 
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秘密はこの箱の中に…

使い方は簡単。キッチンで集めて来た生ゴミを片手に、IDカードをタッチすると、ゴミ箱のフタが開き、生ゴミを捨てることができます。
 
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再びカードをタッチすると、「○○グラム捨てました!」のアナウンスとともにフタが閉まります。最後にもう一度カードをタッチすれば、ゴミ捨て完了。
 
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パスワードや部屋番号を最初に登録しておくと、IDカードによって、いつ、どこの世帯が、どのぐらいの量を捨てたのか記録に残り、住民は確認することが可能です。そして後日、マンションの管理費として月額請求される仕組みになっています。

つまり、「捨てた分だけ払う」、生ゴミ従量課金制なんです。

1ヶ月の利用料金は、1世帯当たり400~600ウォン(40~60円)ほどで(出典元)、マンション全体の分を全世帯で割っていた「定額制」の頃と比べ、半額で済んでいる家が続々。「捨てた分だけ払う」システムは、「捨てない人が得をする」ことを実現し、節約のために捨てる量を削減する住民を生み出すことにつながっているようです。

ソウル市の公務員ユさんは、

ユさん 昔はみんな、食べものをたくさん買っては、残り物を気にすることなく捨てていました。捨てた分だけ払うようになってからは、食べものの買い方から気をつけるようになりました。

と、行動の変化を語ります。同じくソウル市の主婦、チョさんは、

チョさん とてもいいアイデアだと思います。みんな自分がどれだけゴミを捨てているかに、もっと気を配るようになりましたから。それに今では食糧廃棄も減って、ゴミ捨て場も前よりきれいになりました。

と、満足げな表情。住民が受けた恩恵は、お金だけじゃないみたいですね。
 
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食料廃棄の削減だけでなく、住民たちの行動までも変えてしまった「捨てた分だけ払う」システム。実はここまで来るのには、苦労の歴史がありました。

背景にあったのは、韓国の食文化。韓国は伝統的に「食べきれないほどの料理でもてなす」のが、善しとされてきた国なんです。
 
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しかし、経済が豊かになるとともに、「食べ残し」を生みやすい食文化は、社会問題の種と化してしまいます。政府は食料廃棄削減のため、前にも触れた「定額課金制」や、「有料ゴミ袋」の導入、埋立処理を禁止する法整備までしたものの、カンやビンならともかく、生ゴミの分別となると難易度も高く、大きな成果は得られませんでした。
 
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そして登場したのが、「カードをタッチ」で実現した今回の事例だったのです。

2011年に始まったこのシステムは、初年度だけで食料廃棄25%の削減に成功。処理費用に換算すると、1世帯当たり年間19万ウォン(1万8000円)の節約に当たり(出典元)、ゴミ箱1台170万ウォン(16万円)で60世帯をカバーするというから、初期費用から考えても上々の効果といえるでしょう。

また、捨てる量を減らしたい欲求は、リサイクルの推進にも寄与。生ゴミを再資源化できるフードプロセッサーが売れに売れ、製造メーカーの売上は前年の3倍にも当たる36億ウォン(約3億円)を突破したのだとか。
 
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生ゴミを粉砕し、肥料や燃料に生まれ変わらせる | Some rights reserved by THE STRAITSTIMES

最新技術の導入を機に、大きな進化を遂げた韓国の食料廃棄事情。「ゴミを捨てるのにはお金がかかる」という気づきが、「ゴミは努力すれば減らせる」という行動に変わり、ただ捨てるしかなかった生ゴミの再資源化にまで発展するなんて、正直私はびっくりしました。

一方、食料廃棄が世界一といわれる、私たちの国・日本。年間の排出量約1700万トンのうち、500~800万トンが、まだ食べられるのに捨てられる「食品ロス」ともいわれています。(出典元

ここ日本で今すぐに、ハイテクゴミ箱が登場することはないかもしれませんが、韓国の住民一人一人が、当たり前だった食文化や生活習慣を見直し、食料廃棄の削減に成功したように、私たちもそのスタンスを真似することはできそうですね。

みなさんもこの機会に「当たり前」を見直してみませんか? それが、あなたのほしい未来を実現することにつながるかもしれません。

[via psfk, digitaltrend, odditycentral, thestraitstimes]

(Text: 松原裕香子)

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