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フランス・ナントに突如現れたジェットコースター!まちの魅力を高めるパブリックアート『Stellar』に用いられたものとは?

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みなさんは、フランスと聞くと何を思い浮かべますか?

エッフェル搭や凱旋門をはじめとするロマンティックなまち並み、ファッション、芸術など、洗練されたおしゃれなイメージを思い浮かべる方が多いかもしれません。

今回紹介するのは、そんなフランスの西部に位置する都市、ナントのまち中に突如現れた、見上げるほど大きいジェットコースターのようなアート作品『Stellar』です!
 
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広場の中心に現れた『Stellar』。目を引くデザインに、通りすがりの人も思わず振り返ってしまう。

カラフルでインパクトのあるこのジェットコースター。一体、何でつくられていると思いますか?

実はこれ、周りのカフェやレストランで使われている椅子なんです! 1200脚もの色とりどりの椅子が空中で弧を描き、重なり合う姿には、圧倒されてしまいます。
 
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色鮮やかな椅子は、ジェットコースターのスピード感を演出し、迫力満点!

このパブリックアートを手がけたのは、これまでにも日常生活で使われているものを材料にアートを生み出してきたというアーティストのBaptiste Debombourg(以下、バティストさん)。バティストさんが注目したのは、このジェットコースターがある「Place du Bouffay」という場所。たくさんのカフェやレストランがあり、自然と人が集まってくる場所です。

バティストさんは、「このまちに人が存在しているからこそ、ここにカフェやレストランがつくられ、そしてこの椅子がある。だから椅子はある意味、人の象徴なんだ!」と考え、椅子を人に見立てて、この場所にアートをつくりあげると決めたのだといいます。
  
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バティストさんが『Stellar』の制作にあたり参考にした、Robert Delaunay(以下、ロバートさん)の作品『Hélice et Rythme』。

『Stellar』が現れた都市・ナントは、18世紀から19世紀にヨーロッパ大陸、アフリカ大陸、アメリカ(西インド諸島)間で行われていた三角貿易において、フランス国内一の貿易港として栄えた場所。また、ヨーロッパで初めて個人の信仰の自由を認める法令「ナントの勅令」が発布された、歴史あるまちでもあります。

しかし、貿易港として栄えた後、しばらくは工業都市として繁栄していたのですが、20世紀以降、貿易の場所が他の都市へと移り、徐々に経済的に衰退していきました。

そんなナントのまちに活気を取り戻したいという思いで始まったのが、現代アートによるまちづくり事業。バティストさんの『Stellar』は、市のまちづくり事業をサポートするために始まった「Le Voyage à Nantes」というアートプロジェクトの一環として生まれたものだったのです。

実際に『Stellar』を見た人たちからは、

椅子を使ったアートってすごくおもしろい!

これがまちづくりのためのアートだって聞いて驚いたよ! 僕はそんなナントが大好きだ!

人生はジェットコースターのようなもの。私はただそれを楽しまなきゃいけないのよ!

という声が上がっています。住民だけでなく、観光で訪れた人たちにもナントを好きになってもらえるきっかけを生み出している様子。

そして、このまちづくり事業「Le Voyage à Nantes」の関係者は、アートによるまちづくりについてこのように話してます。

この現代アートプロジェクトを毎年夏に開催することによって、住民にとって現代アートを身近なものにしていきたいと思っています。そして私たちはナントを、まちに残っている歴史的なまち並みと、定期的に移り変わる現代アートが入り混じる都市にしたいんです!

まちに元気を取り戻すためにはじまったこの現代アートプロジェクト。毎年新しいアートが日常のどこかに登場するため、住民も飽きることなく楽しむことができるでしょう。

そして今ではそのアートは、観光アトラクションの一つにもなりつつあります。歴史的なまち並みと現代アートが入り混じる都市として、ナントが世界から注目される日も、遠くはないのかもせれません。

アートによるまちづくりの事例は、日本でも多く見られるようになってきています。それはアートが、まちづくりと、観光促進の役割を同時に担うことのできるツールだからなのではないでしょうか?

新しいアイデアを探しているのなら、まずは、身近にあるアートにたくさん触れてみてはいかかでしょう? 見た人によっていろいろな感じ方ができるアートだからこそ、新たな分野でも思わぬ効果を生み出すのかもしれません。

[via World landscape architecture, Le Voyage à Nantes, Inspire me, Baptiste Debombourg]
(Text: 神本萌)