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これからの渋谷での暮らし方って? 左京泰明さん、藤崎祥見さん、大島芳彦さんを迎えて開催した「住む渋谷をデザインするワークショップ powered by リブシブ賞」をレポート!

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みなさんは、「渋谷の町に住んでみたい!」と思ったことはありますか?

渋谷という町には、多様なカルチャーが集う非日常的なイメージがあるかもしれません。住むというよりは、都会ならではのクリエイティブな刺激を味わうために「わざわざ遊びに行く町」としての存在感が大きいように思います。

そんな渋谷の町に住む可能性を考えるワークショップが、昨年2015年12月に渋谷ヒカリエで開催されました。それが今回ご紹介する、渋谷宮下町リアルティ株式会社とグリーンズが共催した「渋谷が、やろう。住む渋谷をデザインするワークショップ powered by リブシブ賞」です。

2017年春、渋谷一丁目の都有地に複合施設が完成予定です。店舗、オフィス、シェアオフィス、賃貸住宅などからなるこの建物は、「クリエイティブな交流・育成・発信の拠点になる」ことを目指して計画されています。

当日のイベントでは、施設内にオープンするコレクティブハウスでの住まい方を公募する「リブシブ賞」を盛りあげるべく、約50名の参加者とともに「渋谷の暮らし方の未来」を描いてみました。当日の様子をお伝えします!
 
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イベント終了までの約6時間で、参加者同士でアイデアを出し合い、発表するまでを行ないます。

イベントは、まず3名のゲストによるレクチャーからスタート。今回は「シブヤ大学」の左京泰明さん、「KitchHike」の藤崎祥見さん、「ブルースタジオ」の大島芳彦さんをお迎えし、これまでの経験や問題意識を伺いながら、渋谷に住まう可能性を考えました。

その後、いくつかのグループに分かれて具体的なアイデアを練り、発表しあうことで学びを深めます。進行役はグリーンズの小野裕之がつとめました。
 
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左から順番に、ゲストの左京泰明さん(シブヤ大学)、藤崎祥見さん(KitchHike)、小野、そして大島芳彦さん(ブルースタジオ)。まったく違う個性を持った顔ぶれでした!

ソーシャル時代の、渋谷の新しいカルチャーとは?

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左京泰明さん(シブヤ大学
1979年、福岡県出身。早稲田大学卒業後、住友商事株式会社に入社。2005年に退社後、特定非営利活動法人グリーンバードを経て、2006年9月、特定非営利活動法人シブヤ大学を設立。街全体をキャンパスに見立て、一人一人が教えあい学びあうシブヤ大学のモデルは新しい生涯学習や地域づくりの施策として全国に拡がっている。また平成27年より中央教育審議会生涯学習分科会臨時委員として人口減少社会の地域づくりの観点における生涯学習行政のあり方についての検討に参画している。著書に『シブヤ大学の教科書』(シブヤ大学=編 講談社)、『働かないひと。』(弘文堂)がある。2007年度グッドデザイン賞(新領域デザイン部門)受賞

渋谷全体を「まなび」のキャンパスと見立てたユニークな生涯学習サービスを提供する「シブヤ大学」の左京泰明さんは、ここ10年の渋谷を振り返りながら「まちの文脈」のこれまでとこれからをひも解きました。

左京さん もともと渋谷は、「社会の課題解決の拠点になる町」というコンテクストを持っているんです。

たとえば2015年11月5日に、同性カップルのパートナーシップを公認する「パートナーシップ証明書」の交付が始まりました。セクシャリティの多様性について、語り合える空気がまったくなかった10年前には予想もつかなかったことが、今、渋谷を拠点にものすごいスピードで現実となっています。

そんな渋谷のこれからは、社会課題の解決そのものが町の新しいカルチャーとなっていくのでは? と予感しています。行政と民間の連携が今以上に進んで、高い公共性を発揮するソーシャルビジネスの事例が、渋谷にどんどん増えるのではないかな。

都市、未来、暮らし方、どれも大きな言葉ですよね。だからこそ、具体的な課題発見がポイントです。まずは、いち生活者として身の回りに目を向け、課題を感じているのは誰か、抱えているニーズは何かを考えてみてほしいと思います。

渋谷が世界に向けた多様な文化の拠点となるには?

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藤崎祥見さん(KitchHike
筑波大学在学中に休学し、京都へ渡る。1年間の修練後、西本願寺で住職の資格を取得。学生時代、世界中の人々が無償で1つのものを創り上げていくオープンソースコミュニティに仏教の世界観との共通点を見いだし、エンジニアとして活動をはじめる。筑波大学大学院を卒業後、2008年に野村総合研究所へ、仏教の専門知識を活かせるテクニカルエンジニアとして入社。2013年に野村総合研究所を退社し、KitchHike共同創業者となる。

料理をつくる人と食べる人をつなぎ、キッチンを通じて世界と出会うウェブサービス「KitchHike」の藤崎祥見さんは、世界中の人々が集まる文化の拠点として渋谷に可能性を感じています。そのヒントとして、宗教と暮らしの関係を読み解きました。

藤崎さん プログラミングの世界に置き換えて考えてみたいと思います。「世界に向けた交流、育成、発信の拠点」を渋谷に実装するときに、どんな「コンテクスト」が定義できれば最適解を導きだせるのでしょう?ナゾナゾですね(笑)

この答えを見つけるのに「宗教への理解を深めること」が、実はとても大きなヒントになると考えています。宗教は人の暮らしと密接に関係しています。芸術や音楽、教育機関や建築物。これらはすべて宗教のコミュニティで発展してきたものです。つまり、宗教には移りゆく時代の「コンテクスト」をつくってきた側面があるんです。

プログラミングでは「コンテクスト」によって最適解は変わるという見方をします。世界に向けた渋谷のコミュニティをデザインするにはまず、文化や言語、価値観が違う人々の「コンテクスト」を理解したうえで、みんなが信じられるあたらしい「コンテクスト」をみんなで定義することが大事ではないでしょうか。

暮らしをつくる世代における共同住宅の価値とは?

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大島芳彦さん(ブルースタジオ
1970年東京都生まれ。建築家。大手組織設計事務所勤務を経て2000 年、ブルースタジオにて遊休不動産の再生流通活性化をテーマとした「リノベーション」 業を開始。その活動域は建築設計にとどまらず企画、コンサルティング、グラフィックデザイン、不動産仲介管理など多岐にわたる。団地再生など都市スケールの再生プロジェクトを手掛ける一方、個別の物件探しからはじめる中古住宅のワンストップリノベーションサービスを展開。近年では公益施設、商業施設の再生も手がける。リノベーションスクールの実績により2015年「日本建築学会教育賞」を受賞。一社)リノベーション住宅推進協議会理事副会長。一社)HEAD 研究会理事、リノベーション・タスクフォース委員長。

中古住宅のリノベーションを通じて住み手の「物語」を共につくる「ブルースタジオ」の大島芳彦さんは、暮らしの価値を編集し、暮らし手同士が共感の連鎖によってつながる「物語」の世界を解き明かしました。

大島さん 「家」といえば、つくったり買ったりするもの、というのが昔からの一般的な感覚です。ところが、今みなさんは「家」よりも「暮らし」に関心があるのではないでしょうか。そして自分らしい暮らしは、つくるものではなくむしろ「編集」するものである、そんな感覚を持っているはずです。

そういう時代の理想的な共同住宅の環境ってなんだろう? 私はそれを、共感の連鎖によってゆるくつながるコミュニティの存在にあると考えています。

共感とは、当事者として参加してみたくなる、そんな気持ちのするものです。参加してさらに自分たちの暮らしをよくしてみる。それがまた共感を生み、どんどん伝播していきます。するとそこには、入居者同士が当事者となって暮らしを編集する「物語」が生まれます。

私たちが暮らしを編集するとき、自分にとって何が大事なのかを考えます。あなたはなぜそれをするのか? あなたでなければ、そこでなければ、今でなければ。それを伝えることができれば、共感者の集まる理想的な共同住宅が誕生するのではないでしょうか。

アイデアソン開始! みんなで描く、住む渋谷のほしい未来。

さて、ゲストのみなさんが持つユニークな切り口をインプットし、新たな視点を獲得した後は、いよいよ「住む渋谷」を考えるアイデアソンの時間です。

アイデアソン(ideathon)とは、アイデアとマラソンをかけ合わせた造語。気になったゲストの下でチームをつくり、短い時間の中で新しいアイデアを見つけてプレゼンするまでを駆け足で行います。はじめて会う人たちとの共同作業は、エキサイティングで、なんとも濃密な時間でした!
 
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ゲスト3名+小野のサポートを得ながら、7チームに分かれてブレストが始まりました!アイデアソンの制限時間は1時間30分。

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現状・問題の把握、課題・ターゲットの設定、リソースの把握、コンセプトとアイデアの決定、ネーミング、発表準備とやることは盛りだくさん。

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思いつくままに、どんどん情報を集めていきます。書く手が止まりません。

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集まった情報を整理し、そぎ落としてアイデアを固めていきます。時間がもっとほしい!

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ある程度決まってきたところで、プレゼン資料の作成を開始。プレゼン時間は約3分です。

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登壇するスピーカーを決め、トークのシナリオを描き、急いで最終チェック!

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会場全体に冬らしからぬ熱気が立ち上っていました。さて、どんな「住む渋谷のデザイン」が描けたのでしょうか?

いよいよ発表! みんなが住みたい渋谷のアイデア

さて、イベントも終盤に近づいてきました。全7チームの成果発表が始まります。スピーカーとして代表1名が登壇し、生まれたアイデアを披露しました。ご紹介します!

シブヤに試住

 
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プレゼンの持ち時間はひとり3分。アラームがなったら終了です。

このチームは、そもそも「渋谷に住みたいと思わない」という課題があると認識。しかしブレストする中で、実際の渋谷には緑や公園があり、住みやすい空間があると分かりました。そこで、興味はあるけどイメージが湧かない人向けに「試住」を提案。

「試住」では、希望者にライフスタイルに合った試住プランをコンシェルジュが提案します。地域の空き物件に住めるだけでなく、その周辺の魅力あるコンテンツも紹介してもらえる仕組みです。

たとえば、子育て世代の家族には緑ゆたかな代々木上原周辺を。自転車で会社に通ってみたり、子供を地域の学校に体験入学させてみたり。渋谷でリアルな日常生活の体験ができるサービスです。

なかぬけごほん

 
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短時間で仕上げたプレゼンだからこそ、それぞれの個性が光ります。

一方、渋谷に住むメンバーが集まるチームもありました。彼らは職住近接型のライフスタイルを選んだ結果、便利すぎてプライベートの動線がガクンと減るという課題を抱えていました。提案したのは「なかぬけごほん」という名のサービス。

仕事が忙しく、ひとりごはんがほとんどで新しい出会いもない。そんな人に、渋谷にある大型書店4店舗が持ち回りでごはん会を開催。本をテーマに、知らない人とおしゃべりしながら食事ができるサービスです。

50分と短い時間で行なうため、仕事を中抜けして参加できるし、共通して話せるテーマとホストの存在があるので、人見知りでも参加しやすいのが魅力です。

深山幽谷の水墨画の世界

 
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聴き手をイマジネーションの世界に誘うプレゼンも。

「渋谷を見下ろすと、まるでスクランブル交差点を谷底とした石臼のように見えてきます。そこに水を流せば交差点に溜まっていきますが、実はキャットストリート方面に流れていく抜け道がひとすじあるんです。」

そんなイメージを語るのは「深山幽谷の水墨画の世界」チーム。公募中の「リブシブ賞」を意識して、コレクティブハウスがクリエイティブな拠点になるための仮説を立てました。

「ここに住んだ人たちで施設の一階に店を構えられる仕組みをデザインします。自分たちで仕掛けて生みだした人の流れを、13階から俯瞰しながら新たなアイデアを発見する、そんなクリエイティブな循環が生まれる仕組みにできれば。」

おためシブヤ

 
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プレゼンを通して、渋谷の持つ非日常と日常の両方の可能性を再発見できました。

毎日10万人の人々が集まる渋谷の町で、多様性を体験する場を提供したい。そんな提案をするのは「おためシブヤ」チームです。遊び、仕事、人、生活を通じて、自分の知らない新しい渋谷を体験できるアイデアを考えました。

たとえば、ホームレスと共に1日「ビックイシュー」を売る。渋谷で「Airbnb」をして、生活をお試しする。そんないろいろな体験コンテンツを集めた「おためシブヤアプリ」をつくって、いつでも好きな時に好きな体験ができるようにします。

また、対面でコミュニケーションができる交流スペース「おためシブヤ部室」も設置し、ふだん出会わないような人々がリアルに出会える拠点づくりも構想していました。

ほかにも、こんなアイデアが!

そのほかにも、残り物を上手にシェアしながら、副業的に働く機会が生まれるスーパーマーケットを提案した「しのえはこんな渋谷に帰りたい!」や、日本に長期滞在したい外国人と、渋谷に住みたい日本人を「洋服」を通じてつなぐシェアサービス「FUKU HIKE」、偶然会った人と話し込む機会が偶然生まれる「喫煙所」のような場をつくる「宮下町で日常の待ち合わせ」など、渋谷の可能性を感じさせるユニークなアイデアが発表されました。

「渋谷の暮らし方の未来」をデザインするアイデアソン、いかがでしたか?

お試し、シェア、食、体験、コミュニティ……。今世の中で盛り上がっているキーワードを織り交ぜながら、渋谷の暮らし方、過ごし方を再定義するとてもワクワクする時間となりました。

自分を主語にしながら、今感じていることを大切にしたとき、短時間でもユニークなアイデアが浮かび上がってくるクリエイティブさが、アイデアソンの面白さなのだと思います。
 
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イベント終了後は、おいしい料理とドリンクをいただきながらの打ち上げタイム。

「リブシブ賞」は、あなたのアイデアをお待ちしています!

大盛況のうちに幕を下ろしたアイデアソンですが、公募中の「リブシブ賞」では、引き続きあなたのアイデアをお待ちしています。

渋谷の町で多様な人々が交わるサロンのような空間が生まれ、新しい生活文化が自然と芽生えたら。そんなまちづくりを、あなたの力でリアルに叶えるチャンスが今、ここにあります。応募期限は2月8日まで!

ぜひ、みなさんもこの機会にアイデアを応募してみませんか?

(撮影:関口佳代)

[sponsored by 渋谷宮下町リアルティ株式会社]