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放送事故が一週間も!? 赤色が抜けたニュース放送で献血不足を訴える「RGB NEWS」

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世界最大の広告・コミュニケーションの祭典、「カンヌ・クリエイティビティ・フェスティバル」。「Cannes Lions 2015」では2015年の受賞作の中から、新たなアクションを考える刺激になるような、ソーシャルグッドな広告を連載で紹介していきます。今回ご紹介するのは、ルーマニアでの事例です。

ただいま血液が不足しています。献血にご協力をお願いします!

休みの日に駅前でこんなかけ声を聞くこと、ありますよね。日本では毎日約3,000人もの患者さんが輸血を受けていますが、血液は長期保存できないため常に不足しがちだと言われています。

しかし、そんな血液が不足しがちなのは日本だけではありません。

今回ご紹介するプロジェクトの舞台であるルーマニアでは、献血をしたことのある人が全人口のわずか2%しかいない状況でした。その2%の人たちも献血すればもらえる食事のクーポンが目当てのことが多く、人の命を救うために献血が必要だという意識は低くなっていたのだそう。

そんな状況を変えるために、テレビ局は驚くべきアイデアを実行しました。国民的に人気のある夕方のニュース番組「Observator」に一週間ほどあるトリックを仕掛けたのです。それが今回ご紹介するプロジェクト、「RGB NEWS」です。

ある日、視聴者がいつものようにテレビをつけて番組を見ると、色がおかしいことになっています。なんと赤色が抜けているのです!

特殊なカメラを使って、赤が抜けた状態で撮影されたニュース番組が一週間放映されつづける。しかし他の番組は、いままでと変わらない映り方をするのですから、視聴者はイライラ、モヤモヤしますよね。
 
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どうなってんの!? という気持ちが膨らみまくったタイミングで、キャスターが種明かし。献血が足りていないこと、そしてそれを啓発するために血をあらわす赤が抜けた放送をしていたことをお知らせしました。

あなたのテレビが壊れているわけではありません。これが赤(血)が失われた世界なんです。

クレーム覚悟で実施されたこの放送は1,400万人に視聴され、献血をする人はこれまでと比べて80%以上増えたといいます。

さらに驚くべきことに、ルーマニアの厚生大臣が、

助かるはずの命が、献血不足で失われてしまうのは耐えられない! 献血センターを増やし、短期的でなく長期的に効果の出る施策をしたい。

と発言。政府に献血に割く予算を300%引き上げることを約束させるという成果を上げることにもつながりました。
 

一週間モヤモヤさせたぶん、忘れられないメッセージとして強く印象に残すことができた「THE RGB NEWS」。だれにとっても貴重な「時間」をデザインに組み込むことで、コミュニケーションはぐっと強くなるのかもしれません。

(翻訳アシスタント:スズキコウタ/「greenz global」編集部)