「おはようございます!」
「朝晩が冷える季節になりましたね。」
最近、このような会話が私たちのまわりから姿を消しつつあるように感じる方はいませんか?
インターネットが発達したことで、どんなに離れた場所にいてもすぐ隣にいるような感覚で会話をすることができるようになり、私たちは直接会えなくても簡単にコミュニケーションをとることができるようになりました。
しかし同時に、顔をあわせて真剣にぶつかりあうコミュニケーションが減ってしまったことで、現実社会の人間関係の希薄さが社会問題につながりつつあるという声もある様子です。
このように、社会の個人化が加速している中で、ブラジルのビスケット会社「Biscoitos Zezé」は時代の流れに逆行する少し変わった広告キャンペーンを数多く展開しています。
そこで、彼らが数多く展開してきたキャンペーンのなかから、「Compliments at the Traffic Light」と「The Chair on Street」というふたつの事例を紹介しましょう。
シンプルな仕掛けで、人々のつながりをつくる
まず最初に紹介するのは、シンプルな仕掛けで人々のつながりをつくることができる「Compliments at the Traffic Light」というキャンペーン。そのシンプルな仕掛けとは、街中の横断歩道や電柱などのあちらこちらに設置してある張り紙と磁石。
街を歩く人びとは設置された張り紙に書いてある「向こう側に立っている人のことを想像してみてください」というメッセージにしたがって、向こう側に立っている相手のイメージにあてはまるものをいくつかの選択肢の中から選んで磁石を置いていきます。向こう側の相手が自分に対してどのようなイメージを抱いていたのかは、道路を渡り終えて柱をチェックするまでのお楽しみ。
ちなみに、この張り紙の選択肢には「優しそうな雰囲気」「フレンドリーな笑顔」などといったポジティブな言葉が並んでいて、言われたら思わずにやけてしまうようなものばかり。
相手が自分に対してどの言葉を選んだのか気になって、横断歩道を歩くスピードもこころなしか早くなる・・・なんてこともあるかもしれませんね。
実際のキャンペーン時の街の様子
昔の社会のコミュニティのつながりを取り戻すための椅子
つづいて紹介するのは、「The Chair on Street」というキャンペーン。
こちらは「昔の社会のコミュニティのつながりを取り戻そう!」と、突如家の前に椅子を2つ設置し、隣人との会話を生み出すというものです。
家の前に突如現れた椅子に住人たちは最初びっくりしているものの、すぐに打ち解けてビスケットをほおばりながら会話を楽しんでいる様子。
この動画はFacebook上で2万回以上再生され600人以上にシェアされるほどの反響をよび、話題になりました。
このキャンペーンの効果は、隣人と良い関係を築くことだけにとどまりません。
この動画に登場するいくつかの家にあるフェンスも象徴しているように、ブラジル国内の一部地域は治安が懸念されているのだそう。そんな中、この道端に突如現れた椅子は隣人との会話を生むことで街に活気をもたらし、街全体の治安に貢献する効果を生んだのです。
人々にコミュニティの一員であることを実感してほしい
街のコミュニティづくりに貢献するような広告キャンペーンを、積極的に打ち出しているビスケットメーカー「Biscoitos Zezé」。一見、これらの広告キャンペーンは、彼らの商品であるビスケットとは何の関係もないように見えます。
ではなぜ、なぜ彼らはこのようなキャンペーンを考えついたのでしょうか?
「Biscoitos Zezé」の本当の目的は、これらのキャンペーンを通して、人々と社会の接点をつくり、彼らにコミュニティの一員であることを実感してもらうことだといいます。
そして、「Biscoitos Zezé」社がただのビスケットをつくる会社ではなく、人々にわくわくするような特別な想いを届け続けるブランドであるというイメージを消費者に伝えることだったのではないでしょうか。
世界第2位の広告大国と言われる日本。CMや広告キャンペーンを、TVや電車で見かけない日はありません。
でももし、単なる商品プロモーションとしてみなされてきた広告が、社会に対していい影響を与えられるようになるとしたら? それは現代に生まれた、新しい広告の姿だと言えるのではないでしょうか。
広告キャンペーンは一時的・一方通行的なものが多く、継続的に社会に貢献しつづけることは難しいかもしれません。しかし、だからこそ多くの人を巻き込みながら、人々に対して強烈なインパクトを持つメッセージを届けることができます。
みなさんが、もしCMプランナーだったとしたら、どのようなキャンペーンで人々を巻き込みますか? ぜひ教えてください!
[via:PSFK,TrendHunter,osocio]
(Text: 江頭由佳)