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日曜のお昼は、ソーシャルばあちゃん家でランチしよう! 孤独なお年寄りと若者をSNSでつなぐ「Sunday Grannies」

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世界最大の広告・コミュニケーションの祭典、「カンヌ・クリエイティビティ・フェスティバル」。「Cannes Lions 2015」では2015年の受賞作の中から、新たなアクションを考える刺激になるような、ソーシャルグッドな広告を連載で紹介していきます。今回ご紹介するのは、ルーマニアでの事例です。

スマートフォンやSNSの普及は、人と人とのつながりを大きく変えました。

いつでも気軽に人とコミュニケーションをとることができ、思いがけない出会いがある。いつの間にか、そんな生活が当たり前のようになっている人も少なくないのではないでしょうか。

しかし、電子機器に慣れていないお年寄りにとっては、リアルなつながりがすべて。パートナーや友だちを亡くしたことで、寂しい思いをしているお年寄りがたくさんいます。

今回紹介するプロジェクトの舞台、ルーマニアでは人口の40%近くが独身世帯で、75歳以上のお年寄りのうち4万人が独身のまま暮らしているそう。通信会社のボーダフォンは、そんなお年寄りたちの寂しさを解消するために、ある社会的な実験を行いました。
 
対象となったのは、ご主人を亡くしてからいっしょに暮らしはじめたというおばあちゃんふたり。ボーダフォンはふたりにスマートフォンを貸し出し、SNSの使い方を教えました。

最初はいぶかしがっていたふたりですが、慣れるに従い、徐々にその世界を自分たちなりに楽しむように。
 
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[via Facebook]

やがて自分たちが得意とする料理をアップしだすとたちまち評判になり、彼らの「食べたい!」という声にこたえて、おばあちゃんたちは日曜の午後、学生さんたちをランチに招待。

それまで寂しかったふたりの部屋は、あっという間に街で人気のレストランのようににぎやかになったのです。
 

たくさんの人と楽しく過ごすひとときを恋しがっていたお年寄りたちと、家庭の味に飢えていた若者たちがつながって生まれたあたたかいふれあいは、SNSで一気に拡散。

ふたりのもとには数千ものメッセージが届き、一躍人気者に。さらに、なんとテレビで料理番組をもつようになったり、ふたりのレシピをもとにしたレモンパイがスーパーで販売されるまでになりました。
 
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この反響を受け、ボーダフォンはこのおばあちゃんたちと同じような思いを抱えているお年寄りたちが同じようなランチ会を開けるようにFacebook上に「Sunday Grannies」(日曜日のおばあちゃん)というアカウントを立ちげました。

その結果、ルーマニアにいる65歳以上の人たちのSNS利用率はなんと3倍に跳ね上がり、ボーダフォンのスマートフォンのセールスも78%もアップすることに。これまでスマホやSNSに無関心だったり、むしろ良からぬものだと思っていたりしたお年寄りを動かしたのは、リアルに喜びを交わし合うふれあいの場だったのです。
 
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Sunday Grannies」(日曜日のおばあちゃん)のページ

高齢化と核家族化が進んだことで、日本でも孤独に過ごすお年寄りの暮らしが問題になっています。この「Sunday Grannies」のような、通信技術のあたたかい使い方がひとつの解決策になるかもしれませんね。