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オフグリッドな暮らしのはじめかた……独立型の自家発電で、晴耕雨読の日々をおくる佐藤隆哉さん・千佳さんと鈴木菜央対談

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講演参加者との集合写真。左から、鈴木菜央、佐藤千佳さん、佐藤隆哉さん

この記事は環境省と太陽と星空のサーカスがこの夏、渋谷区神宮前につくり出した仮想都市「COOL CHOICE CITY」の活動の一環として開催された「greenz talk」のイベントレポートです。

みなさんは、「オフグリッド」という言葉を聞いたことはありますか?「グリッド」というのは、送電網に代表されるような網の目のように張り巡らされたネットワークインフラのことです。

ぼくたちは、電力に限らず、ガスとか水道とか、インターネットとか、いろんな大きなものに依存して暮らしていますが、そこから離脱することをめざす「オフグリッド」という動きがあります。

今回のイベントのゲストである佐藤隆哉さんと千佳さんのご夫妻は、昨年の9月から横浜市戸塚区に家を新築して、電力を完全にオフグリッドにして暮らしています。

夫の隆哉さんは、電化製品の設計をされているサラリーマンで、妻の千佳さんは、自然療法士としてセラピーを行われています。千佳さんは、家庭菜園をするのが夢で、できるだけ食もエネルギーも自立した家を建てたいと考えたことが、電力自給につながったとのこと。

greenz.jpでは、佐藤さんご夫妻の暮らしを紹介する記事を5月に公開。瞬く間に2万シェアを突破し、大きな反響を呼びました。これは、グリーンズが始まって以来、9年間でもっともたくさんシェアされた記事になります。オフグリッド生活には、それだけ注目度が高まっているんですね。

さらに、greenz.jp編集長の鈴木菜央さんは、家の一部を太陽光を使ってオフグリッドにするというチャレンジをしています。今回お届けする3人の対談では、「グリッドって何だろう?」とか、「実際に電力会社と切り離して暮らしてどうなのか?」といったリアルな話が聞けるはずです。
 
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佐藤隆哉さん・千佳さんご夫妻

佐藤隆哉さん・千佳さん(さとうたかや・ちか)
佐藤隆哉(34)千佳(32)2014年9月から神奈川県横浜市で、電力会社と繋がらずに電力完全自給をして暮らす“オフグリッド”生活を満喫中。それゆえ電柱も電線も電気メーターもない。自分たちの家で電気を作って使うそのユニークな暮らしは、雑誌やテレビなどで数多く取り上げられている。電気の他にも野菜を極力自給したり、ソーラークッカーを使って太陽光で調理をしたりと、エコで自然と調和した暮らしをしている。

佐藤家の電力自給設備を紹介!

菜央 僕が編集長をつとめるgreenz.jpで、エネルギーは大きなテーマの一つです。なぜかというと、エネルギーは僕らの生活を支える大事な存在だけど、これまでは、あまりにも官僚や大企業にお任せにしてしまったな、と思うのです。

僕らが、もっとエネルギーをつくったりしていく社会になったらいろんなことが変わるな、と思い、greenz.jpでエネルギーを減らしたりつくったり楽しんだりする人々を取材してきました。

そして、自分なりにも自分で発電して自分で使うという、電気のオフグリッドに挑戦していたりもします。その中で今年の5月に、佐藤さんのお家も取材させてもらいました。
 
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佐藤家の外観。周囲に電柱は建っていない

千佳さん これが我が家です。横浜市の戸塚区で建てた新築の家で、電柱とつながっていない完全なオフグリッドになっています。

当初は一応電力会社とつなげておいて、電力が底をついたときにバックアップとして使うことも考えていたんです。でも着工する直前になって、電力会社とつなげるには、敷地内に電柱を建てる必要があることがわかり、完全なオフグリッドにする決意をしました。

菜央 なるほど。

千佳さん 屋根には8枚のソーラーパネルがあって、1時間に2キロワットの発電をしています。年平均の日照時間は平均で3.3時間と言われていて、1日では6.6キロワット時の発電ができます。

我が家はもともと311の震災のあと節電に務めていたので、1日に使用する電力がだいたい3キロワット時、月の電気代が3000円くらいで足りていたので、これでいけるだろうと考えました。一般的な家庭では1日に10キロワット時の電気を使うと言われていますから、その量をまかなおうとすればもっと必要になります。

たった8枚のパネルですが、充分やっていけています。一度も電力が底をついたことはありません。蓄電料が50%を切らないようにした方がバッテリーが長持ちすると言われたので気をつけていますが、50%以下になったこともまだ1回だけです。

菜央 すごいですね。 夏や冬でも、その8枚のソーラーパネルでやって行けてますか?

千佳さん 冬は、きついですね。雨のときや厚い雲が立ちこめる日は、1日1キロワットさえ発電しない時もあります。でも蓄電をしているから、全く問題ありません。冬を越えたら朝からずっと発電するので、電気を使い切れないほどです。
 
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オフグリッドのためのバッテリーなどの設備が入った物置き

菜央 ソーラーパネルで発電した電気をためておくために、佐藤さんはどのような設備を使っていますか?

隆哉さん 必要な設備は4つだけです。まずはソーラーパネル8枚。それから物置には、中古品のバッテリーを置いています。これで4日から5日は発電しなくても、問題ありません。再生鉛バッテリーだったので価格は55万円で済みましたが、リチウムイオン電池だと同じ容量で800万円するようです。

あとは充放電コントローラーといって、パネルで発電した電気をバッテリーに入れる司令塔みたいな機器です。最後にインバーターという、生み出した電気を家庭で使えるように、直流を交流に変換する機器になります。この4つさえあれば、誰でも発電して蓄電することができます。

千佳さん 100%依存していたものに疑問を持って、10%でも自立して生み出そうという気持ちが大事ですね。さすがに家一軒分まかなうというのは、私たちもドキドキしました。

電気がなくなって真っ暗になったらどうしようと、引っ越しの際にローソクをたくさん買ったんですけど(笑)、まったく使っていません。

隆哉さん 設営には、自給エネルギーチーム(自エネ組)というグループに手伝ってもらって、組み立ては4時間で終わりました。

菜央 システム導入には、合計でどれぐらいの費用がかかりましたか?

千佳さん 総額220万円です。これを高いと考えるかどうかは価値観ですね。私たちは高いとは思っていません。そして、こういう取り組みが広がればいいと思っていたので、迷いもありませんでした。
 
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佐藤隆哉さん

自立するって気持ちいい!

菜央 佐藤さん夫妻が、オフグリッドを目指すようになったきっかけを教えてもらえますか?

千佳さん 311の原発事故の際、私たちは川崎市の溝ノ口という所に住んでいました。その地区は停電して、真っ暗になったんです。

すれ違う人も見えなくて肩がぶつかったりしながら、職場から家に急いで帰りました。ところがマンションは自動ドアが電気なので開きません。そのとき「あ、電気ってこうなってるんだ!」と思ったんです。

管理人さんに何とか開けてもらって部屋に入ったのですが、照明もテレビもつかない。だから情報も得られません。食料は買い占められていて、スーパーにもコンビニにも何も置いていなくて、お金は役に立ちませんでした。

それでお金や電気に依存しすぎる生活って、危険なのかもしれないと思ったんですね。私はそれ以来、お金は貯めるものではなくて、命を助けるために使うものなんだと考えるようになりました。

だからオフグリッドのための220万円は、私たちにはちっとも高くないんです。あのときのようなことが起きても電気は使えますし、地域の方々の避難所としても使うことができるかもしれませんから。よく「元は取れますか」と聞かれるんですが、そういった軸では考えていないですね。
 
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佐藤家のキッチン

千佳さん オフグリッドハウスが完成したその日に、電柱を抜きました。家の建設工事の際は大工さんが電動ノコギリなどを使うので、仮設の電柱を建てて使っていたんですが、もう必要なくなったんです。

電柱や電線がなくても電気がつくんだ、ということを実感した日でもあります。常識が覆されるというか、自立した気持ちになった日ですね。

菜央 わかります。僕たちも藤野電力というグループと一緒に、電力自給ワークショップをやっていて、4万円くらいのすごく小さなシステムを組み立てるんです。

完成して電気がついたときには、参加者の方の表情がぱっと明るくなる。「これで生きていける!」みたいな感じなんです(笑) それが自分の家全部の電気だったら余計感動するでしょうね。
 
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洗濯機はもちろん、電気を多く使う乾燥機能も使っている

千佳さん よくすごくきつい生活をしているように思われるんですが、実はまったくそんなことありません。

冷蔵庫もパソコンも、アイロンやドライヤーも使っていて、ドラム式の洗濯乾燥機も使っています。乾燥機能は電力を結構使うのでしばらく使っていませんでしたが、今年は梅雨が長かったので使いました。全然問題ありませんでしたね。

ただ2つだけないものがあります。それは、テレビと電子レンジです。テレビは311以降にほしい情報が得られないと感じて、引っ越しを機に手放しました。そして、もともと電子レンジは電磁波が体に良くないので、使っていませんでした。なので、温めるときは湯煎しています。

菜央 千佳さんは、電気が余った日はどう活用するんですか?

千佳さん 晴れた日は空からお金が降って来るイメージですね(笑) 使わないともったいないので、たくさん家電を動かしています。普段、ご飯は土鍋で炊いますが、炊飯器を出して煮豆やケーキをつくったりしています。それを「電気富豪の日」と言ってます(笑)

菜央 じゃあ、逆に「電気貧乏」のときは、どの辺で調整しているんですか?

千佳さん 掃除機ではなく、ほうきとちりとりを使ったりとか、消費電力の少ないパソコンを利用したりという感じですね。でも年間にそんなに困る日はありません。 

菜央 断熱もしっかりしているから、冬に寒くて困ることもないですよね。

千佳さん はい、そうなんです。

オフグリッド生活で変わったこと

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佐藤千佳さん

菜央 おふたりがオフグリッドにシフトしたことで、生活にはどのような変化がありましたか?

千佳さん オフグリッド生活へシフトしたことで、自然のリズムに自分の生活を合わせることになり、心身が健康になりました。

原発事故からしばらくは電力会社からの電気を使うことに、すごく罪悪感がありました。誰かの犠牲の上にできた電気を使うのが苦しかったんです。

でもオフグリッドにしてからは、電気をつくる喜びと使う喜びを感じて、罪悪感はゼロですね。今はマンション時代よりもたくさん家電を動かしているんです(笑)  

菜央 気分が良いというのは、僕もわかります。僕は自分の小屋のパネルに携帯電話やパソコンで充電して、仕事に持って行けた日は気分がいいんです。自然の力を活かしている気持ちよさがあるじゃないですか?

千佳さん 311のときにお金があっても食料が得られなかった経験から、我が家では家庭菜園で、自分たちの食料も育てています。その一部は収穫せず、種を取って次の年のために植えているんです。「命をつないでいく」というのはこういうことだと思います。

菜央 太陽という無料で降り注ぐありがたいエネルギーを使って、電気をつくるのも畑で食べ物を育てるのも、佐藤さんの中ではひとつのことなんですね。

千佳さん そうなんですよ。オフグリッド生活をしていることで「がんばってますね」と言われるんですけど、私たちは何も頑張っていないんです。本当に天と大地のめぐみで楽をさせてもらっているので。私が発電しているわけではありませんから(笑)

ソーラークッカーでホクホクのご飯

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ソーラークッカー。この中に食べ物を入れて太陽の下に置いておく

千佳さん あとは電力をオフグリッドしてみると、どんどん他のことも自立したくなるんですね。

電気の次はガスも気になりました。そこでソーラークッカーを使って調理をしています。

我が家で使っているのは二重の真空管でできているもので、中が筒状になっています。中に食材を入れてフタをして反射板で囲っておくと、20−30分くらいで中がホクホクのおいしいご飯ができるんです。

太陽の熱でできたご飯とかお野菜って、火ではできない本当においしいものができるんですよ。「何これ?」って思うくらい、甘くてホクホクになるんです。

菜央 僕もソーラークッカーでつくった料理を食べたことあるんですけど、すごくおいしいんですよね。これも太陽というエネルギーを活かすと、こんなに便利で簡単で、しかもおいしいという証明です。

なんか普通に生きていると、現代社会ってどんどん便利になって前に進んでるように思うじゃないですか? でもふと気がつくと、質が落ちていたり、不便になっていたりするんですよね。
 
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ソーラークッカーでつくったドライカレー

菜央 僕の子どもはニンジンを食べなかったんですけど、ちゃんとしたニンジンを食べさせたらバクバク食べるようになったんです。「あぁ本物ってこういうことなんだな」と。

スーパーでは24時間ニンジンを買えるようになったけど、実は質は落ちてるんです。本物ってやっぱりおいしいし、実はらくちん。ソーラークッカーを見て、「これが本当の進化」だという気がしますね。

千佳さん こういう生活をしていると、ガスとか石油とか、化石燃料を燃焼して何かをつくるというのは、もう時代遅れだって気づくんですよ。発電にしてもソーラークッカーにしても、何も燃やさずに得られるんですから。

菜央 技術の使い方を変えるだけで、暮らしのクオリティが上がるんですね。これからは熱を得るのに、「化石燃料を燃やすのはダサいぞ」という時代ですね(笑)
 
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対談の様子

菜央 今日のテーマはオフグリッドなんですけど、長い人類の歴史の中でグリッドがつくられたのはここ50年とか100年の話です。そのグリッドにつながっているのが基本になったから「オフグリッド」なんていう言葉が出て来たわけです。

現代社会はどれだけ、みんなに消費者になってもらうかが大事で、その方がGDPが大きくなるんですよね。そういう社会は、一人ひとりは忙しくて他の人を手助けしている暇がないように分断されています。それでご飯も消費する、暮らしも消費する、安全も消費するようになっていく。

そして個人は、リスクを分散するために大きな仕組みに依存していかないといけなくなる。水道も電気もそうやってどんどん主権を明け渡していくということになってきました。それは確かに便利だからよかったんだけど、311のときに「そうじゃないよね」ということが白日の下にさらされたわけですね。

そこで分断されていたけど、もう一回手をつなぎ直すことが大事じゃないかと気づく人がでてきました。自分でつくれるものはつくるとか、一度グリッドから離れて良いつながりをもう一度つくるという話なのかなと思うんです。まさに佐藤さんたちがしている、こういう暮らしが未来なんですね。

自分が生きているシステムが見えない

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家庭菜園

菜央 オフグリッドをやり始めると、世界の見方が変わってきますよね? こんなにありがたいものがこの世にあるのかということが感じられる。そして電気だけじゃなくて、他のいろんな仕組みも考えるようになるんです。

例えば水道の話があります。浄水場ではものすごい仕組みができていて、たくさん薬を使って、とてつもなく複雑な設備を通して僕たちの家庭に運ばれてくる。

もうひとつ下水という仕組みがあって、下水はいろいろ混ざっているんでそれを分離する仕組みがいる。分離して出た汚泥を、ガスを使って燃やして捨てていたりするんです。

そのためにとてつもない税金と、とてつもない環境負荷がかかっています。確かに水道は便利なものだけど、これは本当はどういうものなのかということを、考えて選んでいかないといけないなと思うんです。

自分の暮らしの一部でもいいから、循環する仕組みを取り戻してみると、自分の暮らしを取り巻く全体のシステムが気になってきて、自分がどういう仕組みで生きているかが見えてくるんですね。

オフグリッドというのは電力自給して終わりということじゃなくて、自分の生きている仕組みを考えるきっかけだと思うんです。

千佳さん そうですね。確かに今の社会は、いろんな所がブラックボックスになっているということが、よくわかってきました。トイレひとつ流すにも、その後どういうふうになっているかわかりませんでしたから。そこを見直すことって大切ですよね。  

菜央 自分たちの食べる物が自分たちの下水とつながっているとしたら、合成洗剤とか使わなくなりますよ。だってそれ食べたくないですから。

「別にそんなのいいじゃん」という気持ちもあると思うんですけど、自分の周りの環境でその循環が見えれば、みんなそれを気にして行動が変わって来るんだと思います。でもそれが見えないから、僕も含めてですけど無責任になっちゃうんですよね…

千佳さん 本当にそうですね。

電気の次は、ガスと水のオフグリッドを

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家庭菜園で収穫した野菜でつくった食事

菜央 では、ここからは、会場から質問を受けてみましょう。

質問者 千佳さんがオフグリッド生活をしようと言ったときの、隆哉さんの受け止め方はどうだったのでしょうか? また、実際に暮らしてみて、どんな苦労がありましたか?

隆哉さん オフグリッドにすることは、まったく違和感がなかったですね。私は家電メーカーにつとめているので、ものづくりをしている人間として言わしていただくと、原発というのは、そこから出る廃棄物を処理できないような製品ですよね?

それをつくり続け、売り続けたということに対してすごく違和感がありました。だからオフグリッドについては夫婦が同じベクトルに向いていると思っています。

暮らしてみていろいろ苦労話ができるといいんですけど、あんまりなくて(笑) 自転車こいで発電したとかいうエピソードがあった方がいいのかなとも思うんですが、何せうまくいっているので。

質問者 オフグリッドで、ここまでたどりつきたいというビジョンがあれば教えてください。

隆哉さん 一般家庭の方にはこういう生活がスタンダードになるようにしたいと思っています。マーケティング業界では世間の16%くらい普及すれば、一般的になるよという線があるというので、そこまで広がればいいですね。

千佳さん ひとつオフグリッドにすると、いろんなものを自立したくなるんですよね。ガスはもうちょっとオフグリッドにしたくて、太陽熱温水器は今年中に入れたいと思っています。

キッチンで使うお湯やお風呂も、太陽の熱で沸かしたいですね。雨水利用もしたいんですが、まだ放射能の影響があるようなのでいったん中止しています。

でもあきらめたくないので、良い方法がないか考えているところです。いずれは電気に加えてガスとお水をオフグリッドしたいですね。

菜央 そうなれば最強ですね。みんなはできなくても、4軒に1軒くらいがそうなったら、災害が起きても地域として対応できますよね。

本日は佐藤さん夫妻のお話が聞けて、僕も楽しかったです。これからも共有しながら次の社会を暮らしをつくっていけたらいいなと思いました。

今日はたくさん気になった言葉があったんですけれども、特に「お金は命を助けるために使うものだ」という言葉に感銘を受けました。お金を使うときは命に活かされるかどうかを気にしていきたいと思います。

そして、オフグリッドな暮らしももっと深めていきたいなという思いを新たにしました。みなさんは、どんなことを感じて、学んだでしょうか? 本日はどうもありがとうございました。

(対談ここまで)

 
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佐藤さんご夫婦と鈴木菜央さんの対談はいかがでしたか?

3人は、電気を自給するというチャレンジを通して、大きなものに依存していた暮らしそのものを問い直そうとしています。そして電気だけでなく、熱エネルギーや水道、食べ物などへと、どんどんその気づきが広がっていくというのが素晴らしいと思いました。

もしもこれが、単に電力を自給して「うちはきれいなエネルギーを使っているんだ」と考えるだけなら、自己満足で終わってしまうかもしれません。でも、そうした体験をきっかけに、自分たちが寄って立つ社会システムの課題に気づき、オルタナティブを投げかけるということは本当に大切なことではないでしょうか?

ぼくは全国をめぐってエネルギーについてのさまざまな新しいチャレンジを取材しています。だから「オフグリッドだけが正解」だと言うつもりはまったくありません。社会の問い直しの一環として、いろいろな人によるさまざまな取り組みが必要とされているように思っています。

それでも、今回の話を伺って、グリッドにつながっていることが当たり前になっている暮らしを、このような形で見直してみることは、絶対に価値があるはずです。しかも、佐藤さんご夫妻は、無理せず、肩の力を抜いて自然体で取り組んでいる姿が素敵だなと思いました。

みなさんも佐藤さんご夫妻までとはいかずとも、小さな太陽光充電システムをつくるなど、小さな事ならできることはたくさんあります。できることから始めてみませんか?

(Text: 高橋真樹) 
 
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高橋真樹(たかはし・まさき)
ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師。世界70カ国をめぐり、持続可能な社会をめざして取材を続けている。このごろは地域で取り組む自然エネルギーをテーマに全国各地を取材。雑誌やWEBサイトのほか、全国ご当地電力リポート(主催・エネ経会議)でも執筆を続けている。著書に『観光コースでないハワイ〜楽園のもうひとつの姿』(高文研)、『自然エネルギー革命をはじめよう〜地域でつくるみんなの電力』、『親子でつくる自然エネルギー工作(4巻シリーズ)』(以上、大月書店)、『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)など多数。
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