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箸を使うことを諦めてほしくない。手の不自由な方でも、自分の個性を愛せるような箸をつくる福井の工芸家・宮保克行さん

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自分の足に合わなくて靴擦れしてしまったり、枕の形が気になって寝つけないといった経験はありませんか?

自分の“個性”と“モノ”との相性は、暮らしの中では無視できないこと。手が不自由な方たちにとっては、毎日の食事で使う箸ひとつにしても、もしかしたらやさしい形とはいえないのかもしれません。

そこで、「箸を使うことを諦めてほしくない」と立ち上がったのが、福井県在住の工芸家である宮保克行さんです。
 
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見た目にも美しいこちらの箸が生まれたのは、手に障害がありうまく箸が使えない、ある一人の男性との出会いでした。その男性の手には、宮保さんお手製の箸すべてがなじまず、うまく使いこなせなかったのです。

このとき初めて、箸が使えずに苦労している人がいるという現実を目の当たりにし、「この人のための箸をつくってあげたい」、そして「箸で困っている全ての人のために箸をつくる」という思いのもと、オリジナルの箸を制作し販売する「箸factory 宮bow」をオープンしました。

とはいえ、障害のある方でも使いやすい箸をつくることは簡単ではありません。力を必要とせずともバネの要素が用いられていて、なおかつ最小限の動きをして食事ができるものをつくりあげるまでに、何度も試行錯誤を繰り返しました。今でも依頼を受けると、そのお客さんと直接面会し、作成にとりかかっています。

すべて、国産材料と天然塗料のみを使用しているため、安全安心で機能的。かつ見た目も美しい、思いやりの心がつくる、まさに世界に誇れる日本の箸ですね。
 
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自分だけのオリジナルの箸を使うことで、食べることのストレスから解放され、食事を楽しんでいる人がたくさん増えています。

百人いれば、百通りの個性がある。その個性を愛して、相手の個性も愛してほしい。だからこそ、人を想い、人のために心を込めて、一つ一つ、つくっていきたい。そして、それがあなたの人生を幸せにする道具となりますように。

と宮保さん。

個性のせいで何かを諦めてしまうのではなく、その個性にあったものを選ぶことで、個性を大切にしていく。まだまだその可能性はたくさん広がりそうですね。

[via:FASTCOMPANY, Spoon&Tamago, 福井新聞ONLINE, BUNGALOWmagazine]
(Text:中山智晶)