「サステナビリティ学」の授業の様子
自分が子どものころ、こんな授業を学校で受けられたら…思わずそう思ってしまう学びの場が、千葉県柏市にあります。
そこは、学習塾と学童保育を運営する「ネクスファ」。柏市内で2つの教室を展開しており、授業では通常の教科科目のほか、小学生、中学生がサステナビリティ(持続可能性)について学ぶ「サス学」を実施しています。
例えば、ふだん食べている食材がどんな場所で生産されているかを考えるプログラムや、2014年度のテーマである「オリンピック」から、過去の開催地をマッピングしてその特徴を知るプログラムなど、ワークショップ形式の授業を通じて、環境問題や社会課題ついて体験的に学びます。
講師の話を聞くだけではなく、子どもたち自身が自分たちで考えながら、手を動かしてワークを進めていくのが「サス学」の特徴です。
食べ物が世界各国から来ていることを学ぶプログラムの様子。教室を世界地図に見立て、食材の生産地と日本をヒモで結び、輸入の流れを可視化する。
オリンピック開催地を振り返るプログラムの様子。「過去の開催地はヨーロッパが多い」など、特徴を地図から読み取る。
インフォグラフィックスのプログラムの様子。「富士山」について、日本語が読めない人にどう説明するか?を考え、図などで伝える。
サステナビリティ=つながり
「サス学」では難しい言葉を使わずに、”サステナビリティ=つながり”と伝えています。子どもたちは、学校の授業とは違った角度から環境問題、社会問題、経済について考えながら、「つながることでみんながハッピーになる」ということを、さまざまな社会課題を通じて学ぶことができるのです。
例えば「食と農」、「エネルギー」、「ライフデザイン」、「未来の仕事づくり」などといった社会課題に関するテーマが与えられ、それについて情報をインプットしていきます。そして子どもたち自身で調べたり、考えたりしながら、最終的に、パワーポイントのプレゼン資料や、紙芝居などにまとめて発表し、アウトプットを出します。
クラスは小3&4年生、小5&6年生、中1&2年生と3つに分かれていますが、基本的に学ぶテーマはみんな同じ。低学年には易しい言葉で説明するなど、学年に応じた方法を工夫することで、それぞれが参加しやすいプログラムになっています。
サステナビリティの考え方を身につけることは、「未来を創る力」を育てることだと思っています。人間力、コミュニケーション能力、社会課題を発見して解決する力。ものごとを本質からとらえ、主体的に考えられるようになることも、サス学のねらいのひとつです。
と話すのは、「ネクスファ」副代表の辻義和さん。
例えば、おとなしい性格の子が、サス学を通じて表現力やプレゼン力があがって、堂々と発表するようになったり、自由にやることに対して抵抗のあった子が、自分のやりたいことをきちんと大人に伝えて形にしていくことができるようになるなど、子どもたちの成長にもつながっています。
サス学では、手を動かしながら体験的に学ぶことも大切にしている。
サステナビリティについて振り返る授業では「サステナビリティ(つながり)とは?」という問いに対して、様々な意見が。
環境・社会・経済をバランスよく学べる場を
現在「ネクスファ」の代表を務める杉浦正吾さんは、学習塾を経営後、広告会社で国や企業の環境コミュニケーションの企画をプロデュースしてきたという経歴の持ち主。
仕事で出会った「100万人のキャンドルナイト」呼びかけ人のマエキタミヤコさんや、環境コミュニケーション分野を牽引する川延昌弘さんらとともに、「サス学」の構想を練っていきました。
ネクスファのサス学スタッフたち。左から、根本和宣さん、杉浦正吾さん、辻義和さん、岸和幸さん
杉浦さん 環境問題も大切ですが「持続可能」という意味では、経済を学ぶことも大切です。子ども達にとって、環境・社会・経済の3つをバランスよく学べる場をつくりたかったんです。
サス学の授業では、子どもたちが発言しやすい雰囲気づくりを心がけ、出た意見に対して基本的には否定をしないようにしています。同じ一つの問題に対しても見方や立場によって意見が異なってくるからです。
例えば、「地球温暖化に対して人間ができることは何か」という問いに対しては、省エネや省資源のアイディアも出ますが、一方で「省エネ製品を作るためには工場が必要。でも、新しい工場を作るとCO2排出量は増えてしまう」といったジレンマの声も。このような違った角度からの意見も受け止め、問題に対して多面的な見方ができるようにしています。
これからの将来を担う子どもたちに、ぜひ身につけて欲しい”サステナビリティ”の考え方を培うサス学。今年のテーマは「進化」、「オリンピック」、「インフォグラフィックス」の3つのテーマを予定しているとのことで、どんな成果が生まれるのか楽しみですね。
未来志向の新しい学びの場、ぜひみなさんも周りでつくってみませんか?