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東京だからこそ、できることを。東北の若手経営者を”勝手に”応援する「南三陸さぽーたーず」

写真提供:南三陸さぽーたーず 写真提供:南三陸さぽーたーず

東日本大震災で壊滅的な影響を受けた東北。多くの団体が復興の支援をしていますが、そのなかで一風変わった支援を行っている団体があります。その名は「南三陸さぽーたーず」。

通称「みなさぽ」は、南三陸が大好きな有志からなる団体です。合議制で活動を行い、メンバーもゆるやかに入れ替わりながら、まるで南三陸の人々が「お客様」であるかのような方法で支援しています。

「南三陸さぽーたーず」とは?

「みなさぽ」とは、南三陸の自律的チャレンジにちょっぴり貢献し続けるコミュニティ。3.11で壊滅的な影響を受けた宮城県南三陸を東京から支援しています。

メンバーは、南三陸に縁のある人から、まったく関係ないけれど支援をしたいと思っている人、会社員から大学院の講師までと、動機も職業も年齢もさまざま。メンバーの共通項は「東京からできる方法で南三陸を支援したい」ということのみ、といっても過言ではありません。

支援先は南三陸で頑張る若手経営者。現在メインで支援しているのは、以前にgreenz.jpでも紹介した「南三陸deお買い物」の伊藤孝浩さんと、わかめ漁師の高橋健一さんのお二人です。

「みなさぽ」はこのお二人が直面している課題を、インタビュー・ワークショップなどを通じて言葉にしてもらい、それに対応できるような支援策をメンバーの強みを生かして考え、長期的・継続的に支援をしていこうと活動をしています。

「勝手に支援をしている」という認識で、支援先をお誘いする

最大の特徴は、「みなさぽ」が支援先の伊藤さんと高橋さんを「勝手に支援している」とわきまえているところ。

ボランティア活動などの支援者は時として、「良いことをしている」という気持ちが先走り、支援先に対して「自分たちが引っ張らなくては」と力んでしまうことがあります。その気持ちが高まるあまり、支援者が理詰めで説得し、支援先の気持ちが向かないものを押し進めてしまうこともありえます。

そうなった場合、支援先も、支援者がよかれと思って進めてくれていることを無下に断ることができず、「支援の気持ちはありがたいけれど、正直に言えばちょっと苦しい」と思う状態に陥る可能性もあるでしょう。こういった状況を想定して「みなさぽ」メンバーのKさんが、「みなさぽは、“勝手に支援している”ということを忘れないようにしよう」と呼びかけたのです。

その結果、たとえば「南三陸deお買い物」に「みなさぽ」がある提案をしたときに、「提案は非常にありがたいが、それに対するアクションやレスポンスを常に期待されるのは苦しい」などと、伊藤さんが気兼ねなく気持ちを言いやすい環境が整い、支援先本意の支援ができるようになっています。
 
「東京クエスト」によって高橋さんのわかめを使うことになった居酒屋「駒八」さんのわかめの天ぷら「東京クエスト」によって高橋さんのわかめを使うことになった居酒屋「駒八」さんのわかめの天ぷら

「勝手に支援している」とわきまえているからこそ、南三陸の人が「費用を半額、自分で出してでもやりたい」と思ってもらえるように、「みなさぽ」は工夫をこらしています。

たとえば、「みなさぽ」が企画する「東京クエスト」。これは、南三陸在住の若手起業家を東京に招いて行う研修・企画・売り込みツアーです。

この「東京クエスト」に参加する支援先は、交通費・宿泊費などの費用を一部負担します。時間も資金も余裕のない支援先が、「費用を負担してでも参加したい」と思ってくれるような、支援先に求められるプログラムを考えるのも「みなさぽ」の役割。その方法は、まるで支援先がお客様で、お客様に対してビジネス研修ツアーを提案しているかのようです。
 
「東京クエスト」の一環でグリーンデイのイベントで「わかめ学」の講座を行う高橋健一さん「東京クエスト」の一環でグリーンデイのイベントで「わかめ学」の講座を行う高橋健一さん。「都会の人に喜んでもらえるネタはたくさんある。お酒の席だと話せるのに、知らない人の前で話すと緊張してしまう。」という課題を120%クリア!
「東京クエスト」の一環でグリーンデイのイベントで「わかめ学」の講座を行う高橋健一さん。「都会の人に喜んでもらえるネタはたくさんある。お酒の席だと話せるのに、知らない人の前で話すと緊張してしまう」という課題を120%クリア!

今までに行った「東京クエスト」は2回。支援先に巨大市場である“東京”を肌で感じてもらおうと、見学の日程が組まれたり、飲食店経営者や料理人、食に携わる方達に地元の食材をアピールする会を設けたり。新たな商品企画を一緒に考えたり、商談の場を設定したり。

またグロービス大学院の講師で「みなさぽ」リーダーである山中礼二さんのプライシングの勉強会も行われたり、「みなさぽ」メンバーの株式会社フューチャーセッションズの筧大日朗さんがファシリテーターとなって対話を通した振り返りが行われたり…と豪華な盛りだくさん。

こうしたツアー内容によって支援先に「参加したい」と思ってもらい、支援先自身が気づきを得て、次の具体的なアクションにつなげるようにしています。
 
「東京クエスト」の振り返りで話し合いを行う、山中礼二さん(左)、「南三陸deお買い物」店長の伊藤孝浩さん(左から2人目)、筧大日朗さん(右から2人目)、藤本直樹さん(右) 「東京クエスト」の振り返りで話し合いを行う、山中礼二さん(左)、「南三陸deお買い物」店長の伊藤孝浩さん(左から2人目)、筧大日朗さん(右から2人目)、藤本直樹さん(右)

支援は「楽しいからやっている」

南三陸に縁がない人も参加している「みなさぽ」。メンバーはどんなことをモチベーションに活動を続けているのでしょうか。何人かのメンバーに伺いました。

前述のグロービス大学院講師の山中礼二さんは次のように話します。

当初は、震災に直面して「こういうときに、少しでも役に立てる自分でなければならない」という切迫感が自分を動かしていたように思います。でも、最近は、切迫感というよりは、「気の合う東京の仲間と一緒に、好きな南三陸の仲間を応援するのが楽しい!」という思いの方が、強くなってきたように思います。一言で言えば、コミュニティ意識ですね。

また、山中さんと同様に「みなさぽ」の初期の段階から参加しているKさんも、

ささやかながらも、南三陸の復興に貢献できている実感があります。仕事ができるだけでなく、心も温かい、様々な強みを持つ人達と出会え、一緒に仕事できるのが楽しいです。また、コミュニティ運営、貢献のあり方、人材育成など、実践を通じた様々な考察が得られ、学べるところもモチベーションになっています。

と話します。
 
ミーティング中の腹ごしらえも南三陸産の食材で。 ミーティング中の腹ごしらえも南三陸産の食材で。

ただ、活動は楽しいから続けているものの、単に楽しさを求めている人だけが集まっているわけではなく、軌道修正を試みるメンバーがいるところも、「みなさぽ」がうまくいっている理由かもしれません。

メンバーの一人で、活動場所を提供している、渋谷の「電源カフェbeez」の鈴木勝之さんは次のように話します。

活動を続ける上で、メンバー間でなぁなぁにならないことには気をつけています。単にコミュニティとして楽しい、ということだけを求めるなら、自分は応援する気にはならないかもしれません。

でも「みなさぽ」には、本気で自分たちができる支援をやろう、という意識の人たちが集まっています。ですから、目的をストイックに追求することには固執しています。そのため、たまに厳しいことを言うようにしています。

南三陸を好きになる活動

「みなさぽ」では「南三陸『行こう!』ツアー」などを行って、東京のメンバーが南三陸を訪れることも行っています。

もちろん南三陸の支援策を考えることが第一の目的ではありますが、メンバーが南三陸をもっと大好きになることもツアーの目的の一つ。南三陸でおいしいものを食べ、南三陸に宿泊することも、支援になっています。
 
第2回「南三陸『行こう!』ツアーの様子 第2回「南三陸『行こう!』ツアーの様子

また、南三陸の海の幸を使って多摩川の河原でBBQも開催したり、ミーティングの際の腹ごしらえを南三陸の食材を使ったりしているため、活動を通じて自然と南三陸に愛着を持ってしまうのも「みなさぽ」らしい取り組みです。
 
minasapo8

こうやって南三陸を楽しみながらも、

「東京だから”こそ”できること」はぶらさずに、インパクトを最大化していくためにはどうしたら良いだろうか、という発想でありたいと思っています。また、実行に移す段階では、南三陸の人はどう思うだろうか、という視点とバランスをとることを意識しています。(筧さん)

現地の方にほんとに貢献している活動なのか、ニーズなのかを気にしながら活動をしています。あくまでも、主役は南三陸町の在住者で、自分たちではないので。(安野さん)

と、あくまで支援先の気持ちを大切に考えていくようです。

楽しみながら、寄り添いながら活動を続けるあり方に、「南三陸さぽーたーず」のサポーターになりたくなりました。みなさんも自分だからこそできることを見つけてみませんか?