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代々木公園に泊まって、本気の震災訓練! 東京都公園協会×シブヤ大学「SHIBUYA CAMP 2013」

※画像はイメージです。
「シブヤキャンプ」のイメージ

昨年もgreenz.jpで取り上げられた、代々木公園に泊まりがけで行う本気の震災訓練シブヤキャンプ。前回はNHK前のケヤキ並木で開催しましたが、今年は代々木公園の真ん中・噴水前に場所を移して、11月16日(土)~17日(日)に開催します。

通常はテント泊NGな代々木公園でこうした取り組みができるのは、公園を管理している公益財団法人東京都公園協会が防災の啓発イベント「防災ライフ・フェスタ」を行うにあたって、連携先としてシブヤ大学を選んだから。

前回のシブヤキャンプをきっかけに結成した「Project72」チームで、昨年に引き続き、危機管理のプロフェッショナルで自衛隊・海外派遣部隊のミッショントレーナーの浅野竜一さんを講師・監修に、博報堂ケトル、新しく加わった太陽と星空LLPなどといったメンバーと一緒に、楽しく学べる本気の震災訓練を企画しています。

今回は、このシブヤキャンプと防災ライフ・フェスタの取り組みについて、東京都公園協会・防災担当課長の山口浩平さんと、シブヤキャンプの講師を担当する浅野竜一さんにお話を伺ってきました。進行役はシブヤ大学・学長の左京泰明が務めます。

左から、シブヤ大学 左京、東京都公園協会 山口浩平さん、シブヤキャンプ講師 浅野竜一さん。
左から、シブヤ大学 左京、東京都公園協会 山口浩平さん、シブヤキャンプ講師 浅野竜一さん。

代々木公園は防災公園

左京 代々木公園のことを知っていても、東京都公園協会さんの存在はご存知でない方も多いかと思いますので、まずは山口さんから東京都公園協会について教わってもいいですか。

山口 はい、私たち公益財団法人東京都公園協会は東京都からの指定管理者として、都立公園や文化財庭園、都立霊園の管理をしています。代々木公園も我々が管理を請け負っています。

左京 代々木公園は「防災公園」という役割もあるとのことですが、それ一体どういうことなんでしょうか?

山口 災害時の「避難場所」となったり、救出救助活動のため自衛隊・警察・消防の「活動拠点」となる公園のことを、そう呼んでいます。環状七号線に沿ったエリアに多くあり、それぞれの防災公園には様々な防災施設を設置しています。

かまどベンチ。災害時には座る部分をはずすと"かまど"になり、炊き出しができます。
かまどベンチ。災害時には座る部分をはずすと”かまど”になり、炊き出しができます。

防災パーゴラ。屋根に布をかけて、簡易救護所や災害対策本部として活用します。
防災パーゴラ。屋根にシートをかけて、簡易救護所や災害対策本部として活用します。

災害対応トイレ。給水や電気などのインフラが寸断された場合でも利用できます。
災害対応トイレ。給水や電気などのインフラが寸断された場合でも利用できます。

山口 また、避難場所について、東京都は防災計画上、関東大震災の経験を踏まえて、火災からいかに身を守るかということに力点を置いています。なので避難場所は、地震などによる火災が発生し、地域全体が危険になったときに避難する場所で、火災がおさまるまで一時的に待つ場所となります。そのため基本的には避難場所に食料などの備蓄はありません。

左京 3.11の時に避難されに来た方もいらっしゃいましたか?

山口 火災は発生しなかったのですが、災害時は公園に避難しようという心理はあるようで、今回の会場近くの中央広場に1,000人位の方が避難しにいらっしゃいました。

ただ、寒い日でしたし、公園には大きな建物がないため長期の滞在は難しかったので、止まっていた交通機関の運行情報だったり、代々木公園の周辺のどこに避難所が開設されるかの情報を集めてお知らせするなどの対応をしました。

どうしてNPOと連携を?

左京 やはり、3.11が、改めて防災の啓発活動を行っていこうと思うきっかけになったのでしょうか?

山口 そうですね。これはよく言われていますが、災害時は3日間・72時間は「公助」と呼ばれる公的な救助活動は行いづらいので、その間は自分で生き抜く「自助」そして、みんなで協力しあう「共助」という形で生き残らなければなりません。

そんな中で、公園という場は我々としては提供できますし、もちろん皆さま方が避難したときのサポートを私どもで出来る限りさせていただきます。ですが、避難される皆さまを一斉にサポートするのはなかなか難しい。だからこそ、災害時の「自助」「共助」を地域の皆さんにしっかり身につけていただきたい。そういった想いから、「防災ライフ・フェスタ」を開催させていただくにいたりました。

防災ライフ・フェスタ、昨年の様子。
防災ライフ・フェスタ、昨年の様子。

左京 なるほど。「防災ライフ・フェスタ」について、詳しく教えてください。

山口 一番の目的は、公園というのが災害時どういった役割を持っているかを知っていただくことです。
例えば、避難場所というイメージは皆さんお持ちだと思いますが、災害救助時の自衛隊のベースキャンプになることは知られていないかと思います。

また、過去の災害でもトイレに困ったお話が出ていますが、案外、公園の中に災害対応型のトイレがあるって知らない方も多いのではないかと。モノはあるのに活用されないというのが一番やるせないと思いますので、こうした設備を災害時に使っていただくために、公園のどこにどういうものがあって、使い方とあわせて知っていただくことが大きな目的としてあります。

左京 例えばどんなコンテンツがありますか?

山口 例えば、災害時に水を供給するための応急給水槽が代々木公園にありますので、その中に入ってどんなものか知ってもらい、実際に給水の方法を見ていただいたりと、防災上の施設・設備を体験していただきます。あとはお子さまも楽しみながら「自助」「共助」を学べるようなワークショップを用意しています。

応急給水槽。1,500トンもの水が常に新鮮な状態で保たれているそう。
応急給水槽。1,500トンもの水が常に新鮮な状態で保たれているそう。

左京 防災ライフ・フェスタは今年で2回目とのことですが、昨年やられてみて、何か課題はありますか?

山口 他の公園で防災のイベントをやったりすると、親子連れの方とご高齢の方が興味をもって参加されることが多いんですが、代々木公園っていうのは非常に特徴的で、若い方が非常に多い。防災イベントというと、ふらっと公園に来た若い方にはとっつきにくいと思うんですが、その人たちに興味を持ってもらうことが課題です。災害時、若い方々の力っていうのは、非常に貴重な戦力になってくると思うので。

左京 なるほど。今回、防災ライフ・フェスタの一コンテンツである「シブヤキャンプ」をはじめ、特にその辺りのお手伝いを私たちが担えたらと取り組んでいるのですが、このように民間のNPOと連携することで期待されていることは何ですか?

山口 ひとつは、若者層への発信力です。ここは日頃から彼らと接点を持っているシブヤ大学と連携してやったらいいと思いました。我々が企画を考えると、どうしても対象を広く考えてしまうので、若い方々など特定の層により響く企画とか、なかなか我々だけでは考えるのが難しいところを、NPOさんと一緒に考えていけたらいいなと。

それと、いろんな民間企業さんの協力を取り付けてイベントの中に取り入れたりということがうれしいです。

シブヤキャンプとは?

左京 シブヤキャンプについて、改めて講師の浅野さんから伺ってもいいですか?

浅野 通常の避難訓練や防災訓練が”ある施設内”に限ったことなのに対して、”市街地”での都市型防災を認識できるところが、シブヤキャンプの最大の魅力だと思います。

もし実際に被災したら、車両事故があったり、倒壊まで行かないにせよビルが破損したり、混乱する人々の動きがあったりと、さまざまな状況が生まれます。昼・夜・早朝と時間帯を変えて、生じるであろう状況を正しく想定し、実際の渋谷の街のあちらこちらから広域避難場所である代々木公園までの避難シミュレーションを行います。

その他、72時間に必要な避難キットや非常食の考え方、いざという時の簡易シェルターのつくり方などを学び、必要以上にモノを増やすことなく、いかに生き延びるかを身につけていただきます。

シブヤキャンプ、昨年の様子。
シブヤキャンプ、昨年の様子。

山口 どうしても我々の概念で考えていきますと、公園の”中”でいかにやるかということに偏りがちなのですが、災害時は公園だけで完結するわけではないので、公園の”外”までを視野に入れた防災の体験が出来るのは非常に意義のあることだと思っています。

浅野 渋谷の街は、街にいる方々の人種も様々で年齢層も幅広い。小さな建物が密集しているエリアもあれば、大きなビルが立ち並ぶ場所もある。こういった混在する中で、実際にどこが安全な場所で、そこに移動するためにどんな経路を通るべきなのかを実地で学ぶことは、例え渋谷周辺にお住まいではなくとも、非常に汎用性の高い情報としてお伝え出来ると思います。

左京 シブヤキャンプは特に、災害発生後72時間の「自助」について学ぶ場ですね。

浅野 はい、レスキューの原則は、まず自分自身が生き残る術を持ち、その上で人を助けることです。”助ける人”になるために、”助かる人”になる。ここを楽しく、徹底的に学びます。

左京 キャンプの夜はどのように過ごすのでしょうか?

浅野 寝づらい場所で、他人と一緒に過ごさなければならないという、避難所の状況を代々木公園につくります。就寝時は、グループごとに見張りを一人立てて順番に休みます。この順番決めも各グループで決めてもらいます。

災害時に自己を犠牲にするという考えは、できる限り払拭していきたい。ただ、どうしても不確実な事態に対応する時に不平等さは出てしまうんですね。この不平等さをグループで共有していきます。

どうしても「自助」教育をしていくと、ややもすれば「自分が助かればいいんだ」という発想にもなってしまう。ここを「人のために何かをする」という考え方に転換していただくためにも、就寝時、順番に1人ずつ起きていただく。見張り役になる順番によっては、睡眠が分断されてしまってまったく眠れないなど、さまざまな問題が生じると思います。これをどう解決していくか。これは「共助」の訓練にもなります。

また、この一晩で起こる問題は、実際には1ヶ月~もっと長い間起きえるということを体感していただきます。

昨年はNHK前のケヤキ並木で開催。今年は、代々木公園の真ん中、噴水前の芝生にテントを張ります。
昨年はNHK前のケヤキ並木で開催。今年は、代々木公園の真ん中、噴水前の芝生にテントを張ります。

山口 防災を考える時、発生状況によってあらゆる状況の想定が必要になってきますが、すべてを想定した対策っていうのは難しい。そんな中で、根幹となる基本的な考え方だったり、最低限の技術を身に付けて、それらを実際に応用できるのが理想かなと思います。これは我々の力だけでは出来ないことだと思いますので、同じ想いを持った方々と相談し議論し、一緒に考えながら、防災の取り組みを考えていければうれしいです。

(インタビューここまで)

大規模災害を生き残るための知識と技術を身に付ける「SHIBUYA CAMP 2013 ~代々木公園に泊まって、本気の震災訓練をしよう~」は、11/16(土)13:30〜17(日)7:00の開催となります。興味のある方はぜひ、ご参加ください。

 

※その他の11月開催の授業も、現在シブヤ大学ウェブサイト にて抽選申込受付中です。授業の申込には、無料の学生登録が必要になります。詳しくは、シブヤ大学サイト内の学生登録情報をご覧ください。

(Text:榎本善晃)