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従業員は全員オーナー?!カンボジア発、働きながらリーダーシップを学べる「ソリアモリア・ブティックホテル」

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観光地として注目されるシュリムアップの中心地に建つ「ソリアモリア・ブティックホテル」

カンボジアの世界遺産、アンコールワット。この近くのシュリムアップという街に、「ソリアモリア・ブティックホテル」はあります。

全38室と小さな宿泊施設ですが、従業員に嬉しい、あるオドロキの取り組みがおこなわれています。なんと、ここで一年以上働くと、誰でもこのホテルのオーナーになれるのです!

お部屋のインテリアも地元のNGO製品を積極的に使用。お部屋のインテリアも地元のNGO製品を積極的に使用。

一年以上働いた従業員は、全員ホテルのオーナー!

オーナーになれる権利は、つまりホテルの売り上げを従業員で分けるシステムです。従業員みんなが持つ株式の割合は51%。勤務年数が増えれば、その割合は多くなります。このオーナーシップ収入は毎月のお給料に追加されます。

勤務年数によって所有するオーナーシップの割合が増えるのは、誰でもが簡単にマネージメントレベルまでのぼりつめることができないという現実と高い離職率が問題になっているカンボジアで、一つの会社に長く勤めることの価値を見出してもらいたいからだそうです。

オーナーシップ制度は、収入を増やすだけでなく、従業員が自ら取締役や経営者のポジションに立つことによって、社員全員が責任感とリーダーシップスキルを自発的に身に着けることができるシステムを自然につくり出しています。

「ソリアモリア・ブティックホテル」のスタッフ達。 「ソリアモリア・ブティックホテル」のスタッフたち

ホスピタリティー産業へのプロを目指すチャンスもスタッフ全員に!

20世紀後半に長期に渡って続いた内戦が終わり、カンボジアに平和が戻ったのは1998年のこと。現在、急速な経済成長を遂げる国の一つでありながら、貧困や医療、教育システムの不足に悩まされています。

このホテルでは、働きやすい快適な職場作りに力を入れるだけでなく、カンボジアの国作りに貢献するリーダーシップが取れる人材を育成する目的を掲げ「ソリアモリア教育開発プログラム」を実施しています。

希望者は、大学や専門学科での高度教育を受けられるチャンスがある他、ホテル内で実施される語学レッスン、ホスピタリティー、マネージメント研修などさまざまな教育を受講できます。

リーダーシップスキルを身につけるために導入したオーナーシップ制度も、このプログラムの一つです。

来月からは2人のスタッフが、ノルウェーの首都・オスロにあるハイスタンダートホテルで1年間働き、代わりにノルウェーから2人のスタッフが「ソリアモリア・ブティックホテル」に勤務するエクスチェンジプログラムも始まります。今のところ、3~6年にわたって断続的に進めていく予定だそうです。

マネージメントコースを修了したスタッフ達。 マネージメントコースを修了したスタッフたち

これらのユニークなアイデアを取り入れたのは、長年さまざまなNGOで働いてきたケンさんとクリスティンさんのノルウェー人カップル。クリスティンさんはホスピタリティー分野に、ケンさんは社会起業家として、それぞれ異なるバックグランドを持ち、実践的な形でリーダーシップを養いながらスタッフ教育を行い、地元に貢献できる誰もが利益を得られるシステムではないかと考え「ソリアモリア・ブティックホテル」をオープンしました。

ファンダーのクリスティンさんとスタッフのマリデットさん。ファンダーのクリスティンさんと、スタッフのマリデットさん

オープンから6年、この活気的なアイデアはビジネス、人材育成とも成功をおさめました。現地スタッフに通常業務を任せられると判断したケンさんとクリスティンさんは、今年の夏、10年ほど住んでいたカンボジアに別れを告げ、自国ノルウェーに帰途。クリスティンさんは福祉事務所で外国人の女性のための就職分野で活動し、ケンさんはコンサルタントとして働く傍ら、カンボジアの水事業のコーディネートも行っています。ビジネス的な成功だけではなく、カンボジアの多くの若者や地元のNGOともこの成功を分かち合えたことが何事にも代えられない喜びだそうです。

お金をただもらうだけのために働くのではなく、学びながら社員全員のやる気とリーダーシップを「実践」で引き出すユニークなアイデア、企業にかかわる人々が「Win-Win」の関係を作り出すシステムは、業種の異なるさまざまな企業でもお手本にできるのではないでしょうか?