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世界のどこかで誰かが布ナプキンを買うと、インドの少女が笑顔になる「Pad for Pad」

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生理用布ナプキンを知っていますか?蒸れにくくて使い心地は快適そのもの、下着と同じように洗って繰り返し数年は使えるのでゴミも出ないし、生理の日の憂鬱を吹き飛ばしてくれそうな楽しいデザインのものもたくさん。さらに、布ナプキンを買うことで、インドの少女たちの生活を快適にすることができるとしたら?

Eco Femme(エコ・ファム)」の布ナプキンは、インド南部の環境実験都市・Auroville(オーロヴィル)でつくられています。エコ・ファムは、女性であることに喜びを感じ、体をいたわりながら、経済的でエコ・ポジティブな月経環境を整えていくためのエンパワーメントプロジェクトとして2009年、農村支援のNGOである「Auroville Village Action Group(以下AVAG)」のメンバーによって立ち上げられました。

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エコ・ファムの海外向け布ナプキン。左からパンティライナー、昼用、夜用。©Eco Femme

エコ・ファムの布ナプキンには、海外向けとインド農村向けの二つのラインがあり、インド国外で海外向け布ナプキンを1枚購入すると、農村向け布ナプキン1枚分に相当する80ルピー(約130円)が農村の少女に届けられる「Pad for Pad」という社会貢献プログラムが行われています。greenz.jpではおなじみのOne for Oneのアプローチを活用した取り組みです。

エコ・ファムの中心メンバーであるKathy Walkling(以下キャシーさん)にお話をお伺いしました。オーストラリアからオーロヴィルに移住したキャシーさんは、毎月、地面に穴を掘って使用済みナプキンを埋めるのが煩わしく、自分で布ナプキンをつくりはじめ、それが次第に周りの女性たちに広まっていったそうです。

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エコ・ファムの主要メンバーたち。左から二人目がキャシーさん。©Eco Femme

布ナプキン開発のきっかけは二つありました。まず、いたるところに捨てられ山積みになっているゴミの問題。使い捨て生理用紙ナプキンもその一つで、インドでも急速に使用量が増えていますが、多量のプラスチックが使われ、分解には何百年もかかることを知り、代わりになるものをつくらなくてはと駆り立てられました。

もう一つは、AVAGの取り組みと重なるのですが、インドの女性が直面している問題の解決です。社会的束縛の中で不自由な思いをしている彼女たちの現状を変えたい、例えば、毎月の経血処理をどのようにしているのだろうと気になりました。

生理の日には学校を休んでしまう少女たち

エコ・ファムの拠点であるオーロヴィルは、のどかな農漁村に囲まれ、村で暮らす女性たちは色とりどりの民族衣装サリーに身を包み、明るい笑顔は南国の太陽そのもの。布ナプキンの縫製を行っているのもこうした女性たちです。

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エコ・ファムは農村に雇用もつくりだしています。©Eco Femme

しかし、その笑顔の裏で、彼女たちは毎月憂鬱な日々を孤独に過ごしていました。生理について話すことはタブーであり、生理中の女性は不浄な存在として扱われ、料理さえ許さないこともあるのです。思春期の少女たちは設備の整っていない学校で生理日を過ごしたくなくて欠席してしまうことも。理由を先生に話す勇気もありません。

キャシーさんたちが行った調査の結果、農村部での生理時の衛生管理は十分でなく、生理について自由に話せないことが生活の障害になっていることがわかりました。

私たちは、セミナーやフォーカスグループを催して、生理について自由に話すことができる場を提供し、それが多くの女性を力づけ、ポジティブな影響を与えることを実感しました。その後、パイロットテストを行いながら、農村向け布ナプキンの試作をはじめたのです。

インドでは昔から、古いサリーを小さく折りたたんでナプキン代わりに使う習慣がありました。そこで、昔ながらの布ナプキンの形を取り入れるなどして農村向けに3モデルをデザインし、2年間のパイロットプロジェクトを実施。好評だった「折りたたみ式」モデルと、海外向けと同じデザインの「オールインワン」モデルを採用することに決定し、現在はデザインにさらなる改良を加えているそうです。

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インドで昔から使われている布ナプキンの形に近いインド農村向けの「折りたたみ式」モデル。©Eco Femme

世界に広げよう“エコ・シスターズの輪”

パイロットプロジェクトで好意的なフィードバックを受け、もう一歩踏み込む形で2012年からスタートしたのがOne for Oneを取り入れた「Pad for Pad」プログラムです。

インドの女性と世界をつなぐ “Eco Sisterhood(エコ・シスターズの輪)”を築きたいと思いました。また、エコ・ファムの製品の卸価格はどの国でも一律にしていますので、価格が安すぎて取引先の国で他の製品を脅かす存在になりかねません。寄付を組みこめば、国際市場において適切な価格設定ができると考えました。

インド国外で購入された布ナプキンの代金の一部は、政府の援助が届かない村の学校での月経教育に役立てられています。生理について自由に話をしてもらい、月経のしくみを説明し、さまざまなタイプの生理用品を紹介しながら、少女一人ひとりに4枚の農村向け布ナプキンを配布します。少女たちの受け入れ度は高く、みんな楽しんで参加しているようです。

ecofemme_padsession©Eco Femme

車社会にあえて「自転車はいかが?」的な取り組み

キャシーさんの今後の目標の一つは、「Pad for Pad」プログラムをインドの他の地域にも広げていくことです。現在、インド政府は農村の少女たちに使い捨て紙ナプキンを無料配布する施策を進めており、農村部でも使い捨て生理用ナプキンの使用者は加速的に増えているそうです。エコ・フェムは、その施策の対象となっていない地域の学校で活動を進めています。

エコ・ファムの取り組みはまるで、自転車を捨てて車の生活に移行した地域に「素晴らしいギアとベルを備えた自転車はいかが?」と売り込むようなものかもしれません。ですが、布ナプキンを選択することが文化、健康、経済、環境に良い影響を与え、さらにセルフケアの一つでもあるということを一人でも多くの少女に伝えていきたいのです。

「Pad for Pad」はイギリスをはじめ8カ国で展開中です。日本には販売店がないので今のところ直接参加はできないのですが(布ナプキンの購入のみAuroville Online Sotreで可能)、個別の寄付は可能とのこと。一人でも多くの少女が生理中も快適に過ごせるように願いを込めて、日本にも「エコ・シスターズの輪」を広げませんか?