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子育てには正解なんてない!自分の家族オリジナルの子育てを考える「素敵な幼児共育コレクションin 関西」[イベントレポート]

素敵な幼児共育コレクション  in 関西

「子どもにはこういう教育が必要だ」「子どものしつけはこうするべきだ」。

世の中には、子育てに関する“正論”や“正解”があふれています。でも、子どもも大人も同じ人はひとりもいないのに、たったひとつの“正論”や“正解”なんて本当にあるのでしょうか?

「素敵な幼児共育コレクション(以下、幼コレ)」は、子どもに関わる人たちの視野を広げ、同じ悩みや課題を抱える人たちをつなぐために、「オトナノセナカ」が昨年はじめた場づくりです。

二回目となる「幼コレ関西」は2013年7月14日(日)に京都で開催。子どもをキーワードにして場づくりをしたいと考えていた京都の“場づくり集団”「場とつながりラボ home’s vi」と「オトナノセナカ」が意気投合して実現しました。home’s viが主催、オトナノセナカが監修、そして大学生から子育て中の大人までさまざまなスタッフたちが準備から当日までの運営を支えました。

「幼コレ関西」は、前半はモンテッソーリ教育、シュタイナー教育、デモクラティックスクールなど、さまざまな教育の場に携わるゲストの話を聞く時間、後半はゲストを交えて参加者同士が対話する時間という二部構成。今まさに子育てをしている人だけでなく、人と関わることに関心のある人にも響くところの多かったこの日の内容を、レポート形式で共有したいと思います。

子供に関わる人たちの視野を広げ、横のつながりを作るために

「幼コレ関西」会場の様子。0歳児も一緒に参加!「幼コレ関西」会場の様子。0歳児も一緒に参加!

「幼コレ」は、オトナノセナカが「これは素敵!」と思う教育アプローチを実践する選りすぐりの先生たちをゲストに迎え、「これからの時代に必要なこども観や視点」を聴く場としてスタート。昨年8月に東京で第一回を開催し、300名の参加者が集まりました。二回目となる「幼コレ関西」には180名が参加。新たに対話の時間「子どものための井戸端会議」が設けられました。

会場1階には託児できる部屋、ステージ前方には1歳未満の乳幼児が参加できるスペース、後方には授乳やおむつ替えができるスペースも用意されていました。親だけが参加するのではなく、子どもと一緒に場を共有できる工夫があることが、場の安心感を作る大切な要素になっていたと思います。

当日は、「キッズいわき ぱふ」代表の岩城敏之さんによるオープニングトークからスタート。3人のゲストによる事例紹介、2つの取材園の紹介、そして主婦で「マクロビアン」主催の橋本ちあきさんによるクロージングトークまで、子どもたちの持つ可能性を大切に育む人たちの実践例のエッセンスが示されました。

子どもは“空っぽのバケツ?” 自ら育つ可能性を秘めた“球根”?

事例紹介のパートでは、国際モンテッソーリ協会公認教師の深津高子さん、「みのおシュタイナーこども園」の山西眞理子さん、「デモクラティックスクールまっくろくろすけ」の黒田喜美さんが登壇。それぞれに、短い時間のなかで現在の教育アプローチとの出会いや現場のお話を聴かせてくれました。

「幼コレ関西」モンテッソーリ教育国際モンテッソーリ協会公認教師の深津高子さん

深津さんがモンテッソーリ教育と出会ったのはタイ・カンボジアの難民キャンプでのこと。物資援助が「依存する人を生んでいるのではないか」という疑問を持ち、「難民を生まない方法」を模索するなかで出会ったのがモンテッソーリ教育を取り入れた保育園でした。悩みをぶつける深津さんに、園長先生はこんな言葉をかけたそうです。

深津さん、平和は子どもからはじまります。

結果的にこの言葉がきっかけで、深津さんは、“平和の担い手”である子どもたちを育む仕事に着手します。

子どもを“空っぽのバケツ”と見て情報を詰め込むことを教育と呼ぶのか、中に成長のプログラムを宿した“球根”と見るのかで、子どもへの関わり方が変わってきます。

球根のなかにあるプログラムは操作できません。「大人にできることは球根がよく育つ環境を整えることくらい」だと深津さんは言います。子どもの成長の段階に合わせて必要なものをそっと差し出すことが、世界の平和を作ることにつながるというお話は、子どもという存在を捉えなおす視点を与えてくれるものでした。

遊びは“真剣な子どもの仕事です”とシュタイナーは言う

みのおシュタイナーこども園の山西眞理子さんみのおシュタイナーこども園の山西眞理子さん

中学校で13年間英語を教えた後、「もっと早い段階から子供に関わりたい」という思いからシュタイナー教育に手がかりを感じてイギリスで3年間学んだという山西さん。17年前に、定員10名の小さな幼稚園を立ち上げて運営しています。

シュタイナー幼稚園は、小さな子どもたちの「命を形成する“リズム”を大切にする」そうです。子どもたちだけではなく、私たちは月の満ち欠けや日の出日の入りなど「それが起きなければ混乱する」リズムの世界に生きています。子どもは特に、毎日のリズムが変わると安心して生活できないと感じてしまうからです。

小さい子供は吐く時間が大切です。自由に遊んでいるときは息を吐きながら夢見るような時間。90分よく遊んで15分学ぶくらいがちょうど合っています。小学生になると45分が吸う、15分が吐くになります。外のリズムを調えることで、子どもの内なるリズムが整えられるんです。

シュタイナーは「遊びは真剣な子どもの仕事です」と言ったそうです。「ごっこ」「見たて」の遊びはクリエイティブな仕事にもつながるからです。「子どもの健やかな成長に寄り添いたい」という山西さんの言葉は、高津さんの「子どもを球根として見て環境を整える」というお話にも通じるように思われました。

校舎は古民家! 「子どもが自分で学び、成長できる」学校

デモクラティックスクールまっくろくろすけの黒田喜美さんデモクラティックスクールまっくろくろすけの黒田喜美さん

11年前にデモクラティックスクールまっくろくろすけを正式に開校した黒田さんは、「無認可のいろんな特色ある幼稚園や保育、教育のかたちがあることを知ってほしい」とはじめに前置きをして話しはじめました。

デモクラティックスクールの教育理念は「子どもたちは自分で学び、成長することができる」というもの。現在の生徒数は25人、学ぶ内容も、その日に何をするかも決めるのは子どもたち自身です。スタッフは「スクールコミュニティの良き仲間」であり、子どもからリクエストされたことを教えたり手伝ったりして、スクールを支える仕事に徹するそうです。

この一風変わったスクールで学び、育つことによって子どもたちはどんな風に成長していくのでしょうか?

OB・OGたちは自分のことをよく知っていて、協調性と社会性に富んでいます。自分の力で人生を切り開く力を持っているので「この会社がイヤだけど辞めたらどうなるんだろう?」と思ったりはしません。

学校といえば「規則に従い、先生に教えられる場所」だという先入観を持っていると、デモクラティックスクールはまったく理解の及ばない教育の場です。でも、そこで育つ子どもたちはまさに「自分で学び、成長する」ことをしているのです。

三人のゲストによる事例紹介を聞くうちに、「学ばなければいけないことを一定の期間に学んで“進学”していく」という自分の学校観が揺らいでいくのを感じずにはいられませんでした。

子どもを育てるのは「未来をつくる」こと

主婦でマクロビアン主催の橋本ちあきさん主婦でマクロビアン主催の橋本ちあきさん

スタッフによる取材園「たかつかさ保育園」「森のようちえんそとっこ」の紹介の後、クロージングトークに主婦でマクロビアン主催の橋本ちあきさんが登壇されました。30年前に、子どもが生まれたときに「世界中のオルタナティブな教育を調べて全部忘れて、自分のオリジナルな子育てを終えた」という橋本さんは、「親としていちばんこころがけたことはふつうの人間に育てる」ことだったと話しました。

標準的ではなく、ひとりの人間としてちゃんとまともな心と身体と、この世に生きるのにふさわしい人間になってくれたらいいなと思っていました。必要なのはシンプルなこと。同じプロセスを歩むけれど全部違ってきます。違うからこそおもしろい、だからこそ楽しい。大切なのは「違いがあることをどう肯定的に受けとめるのか」ということです。

はじめての経験に満ちた子育ての日々のなか、不安な気持ちからどうしても他の何かと自分の子育てを比べてしまいます。橋本さんは「ひとつだけ子育てのなかで大切なことを言うなら四苦八苦する部分をやりきってください」と会場に呼びかけ、「子どもを育てることは未来を作ること。良い未来を作って行きましょう」と話を締めくくりました。

「子どもは未来を担う存在になる」という感覚で向き合うと、「自分の子どもだから」という気持ち以上の大きな愛情や敬意を持つことができそうです。

ここから始まる新しい子育ての場づくり「こそだて寺子屋」

左:「オトナノセナカ」小竹めぐみさん、右:「home's vi」篠原幸子さん左:「オトナノセナカ」小竹めぐみさん、右:「home’s vi」篠原幸子さん

「幼コレ関西」を監修したオトナノセナカの小竹めぐみさんに、「なぜこの場を作っているのか」について改めて聞いてみました。

子育てって正解がないもので、恋愛にも似ているなあと思います。親の性格や育ってきた環境も違えば、子どもの特性もそれぞれに違うのに、正解や正論があふれすぎていると思うんです。

「幼コレ」では、いい実践を紹介するけれどもひとつだけを押すことはせず、「いろんな視点がありますよ」とラフに紹介しています。

小竹さんは、どの事例もフェアに紹介することを大切にしています。参加者には「答えを探すため」ではなく「いろんな情報に出会うなかで視野を広げて自分らしくオーダーメイドな子育てを作ってほしい」という思いがあるからです。

「幼コレ関西」子どものための井戸端会議「幼コレ関西」子どものための井戸端会議のようす

「幼コレ関西」では、後半に「子どものための井戸端会議」という対話の場を新たに設けました。参加者のなかにゲストも交じって、立場を越えて本音で語り合いとてもいい空気が生まれていました。

こういう場を作って、つなげていくことが大事だねとみんなで話していました。きっかけがあるとつながっていくものがすごく多いなあと思います。

「幼コレ関西」を主催した「home’s vi」で中心となって動いてきた篠原幸子さんは、6歳の男の子のお母さん。子どもとともにさまざまな場づくりに参加した経験から「子どもの頃から場づくりに触れて育ったらきっといい世の中になる」という思うようになったと話してくれました。

お母さん・プレママは話したいこととか聞いてみたいことがすごくいっぱいあって。シュタイナー教育やモンテッソーリ教育など、子どもを持つと興味を持つけれども、いざ知ろうとすると周囲に知っている人が少なくて意外とハードルが高いと思うんです。

「幼コレ」の良いところは、さまざまな教育をインプットすると同時に対話の場というてアウトプットがあること。また、こういう場を、たくさんのスタッフを巻き込みながら一緒に作れたことがとても良かったと思います。

2013年8月18日からは、今回のゲストが特別講師として各回を担当する「こそだて寺子屋」がスタートしました。場所は、近ごろ注目が集まっている「HUB Kyoto」。“「子」と「個」を育てる学びの場”というコンセプトのもとで、home’s viとオトナノセナカがともに場を作ります。

greenz.jpでもたびたび紹介してきたソーシャルデザイナーたちが「“持続可能な、しあわせ家族”を増やすお手伝いをしたい」という想いを合わせて生みだす場です。子どもという未来について考えてみたい人はぜひ「こそだて寺子屋」にご参加を!