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大人も子どもも平等の場所「asobi基地」が大好評!小笠原舞さんに聞く「こども未来プロデューサー」の仕事とは?

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特集「a Piece of Social Innovation」は、日本中の”ソーシャルイノベーションのカケラたち”をご紹介するNPO法人ミラツクとの共同企画です。

大人も子どもも同じ人間として平等でいられる場「asobi基地」。2012年7月に保育士で「こども未来プロデューサー」でもある小笠原舞さんが立ち上げたプロジェクトです。

「こども未来プロデューサー」とは、どんなお仕事なのでしょうか?小笠原さんが今取り組まれていること、そして子どもの未来についての思いを伺ってきました。

子どもが自由に表現できる場

「asobi基地」では、子どもは段ボールや新聞紙、空き缶など生活の中にある素材で自由に遊びます。親は我が子をちょっと離れたところで見てみたり、スタッフや他の親に悩みを気軽に相談できたり、また子どもと触れ合いたい大人なら誰でも加われて、子どもを知ることができます。

小笠原さんは保育士として日々働くなかで、「いまの日本社会では子育てそのもの、家庭の子育て力の支援、そして子育てを社会で行うための環境整備がおろそかになっている」と感じていました。そこでカナダの子育て支援をモデルに、asobi基地を立ち上げたのです。カナダでは、誰でも気軽にアクセスできて子育てへの自信を育てる施設「ファミリーリソースセンター」の存在や、親になる心得・子どもの発達などを記す教科書の無料配布等、親になることへの支援が整っているそう。

反響は大きく、いまや毎週末どこかで開催され、東京だけではなく5月末には静岡でも実施し、その他の地域から声がかかるほど。親子連れでいつもにぎわっています。小笠原さんのもとには「こういうイベントができませんか?」という案件がひっきりなしに舞い込んでくるそうです。

月8回の土日ってあっというまに埋まっちゃうんです。ご縁でいい企画がたくさん来ているいま、なるべく断りたくない。だから私がいなくてもできるようキャスト研修に力を入れはじめました。同時にいろいろなところでできれば、それだけ子どもに自由に表現できる場、新しい発見ができる場をつくっていけますから。

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小笠原舞さん

5月4・5日に代々木公園で行われたasobi基地は、研修に参加しているキャストがプログラムをつくりました。最初は凧づくりなど完成型の見える企画の提案が目立ったそうです。

「それでいいのかなあ」と小笠原さんが問いかけるうちに、子どもがそのときその場で感じていることを自由に表現できるようにするために紐や画用紙など、たくさんの素材とハサミやのり、テープ等の道具を用意しようという発想に変わっていきました。

やってみることで見えてくる

asobi基地と並行して、小笠原さんは「Child Future Session」(以下CFS)というイベントも行っています。asobi基地が子どもと子どもに近い大人のための場所なら、CFSは子どもに関わる商品やサービスの企画をする実験+会議室のようなもの。企業や法人だけでなく、個人事業主にひらかれています。

午前中は自分たちの商品や企画をasobi基地で遊んでいる複数の子ども達に試してもらったり、親御さんたちのお話を聞いたりしてもらう。午後はそれをもとにワークショップや対話をする。このようなCFSとasobi基地の棲み分けは、やっていくうちにはっきりしてきたそうです。

保育の現場はつねにトライ&エラー。そのときの場と子ども達の状況や心の動きを読んで、子ども達の前にちょうどいい種をまく。手を出しすぎずに、子どもの力の成長をサポートしてく。社会に対しても同じようにやってみたら、次がどんどん見えてきたんです。

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子どもの世界をひろげたいから

2013年のasobi基地は、日本プロバスケットボールリーグ(以下JBL)やライブハウスなど異色のコラボレーション企画が増えています。JBLの企画のはじまりはこうでした。

彼が試合のMCをやっていたのでバスケを見にいったら、子どもが走り回っていました。大人がバスケを楽しむ間に、あの子たちも楽しめる場を作りたいなと思って、制作会社にasobi基地の話を打診してみたらOKをもらったんです。

プロのバスケットボールを見たことがないけれど、asobi基地があるから来てみたという人もいます。見てみたら、自分も子どももバスケットボールが好きかもしれないと言ってくれて。親の世界を気楽な感じでひろげてあげられたら、付随して子どもの世界もひろがっていくのだと思っています。

asobi基地にアクセスすれば自然と知らなかった世界にも触れることができる。そういう社会勉強の場でありたい。願いを根底で支えるのは、自身の経験から得た気づきでした。

大学を出て会社員になって、全然教えてもらってないことばかりの現実に戸惑いました。もう少し社会がこういうものだということを、いいも悪いも社会に出る前に知っておかないと大変だと感じたんです。

小笠原さん自身、いろいろな分野のイベントに足を運ぶようにしています。「子どもの感覚をひろげるためには自分の感覚も広げないと。私の価値観のなかで、企画が生まれてきます」。

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いま注目しているのは科学館。恐竜や宇宙を好きという子どもは多いからこそ、なぜ好きなのかを体験して理解できたらと考えます。そもそも注目した理由は、トロントに視察で訪れた際に行ったサイエンスセンター。光、重力、宇宙、風、など世界を構成する原理や素材が集まっていて、小笠原さん自身がとても楽しく、世界が広がったそうです。それを受けて、パパやママたちと日本の科学館に行ったり、夏にはアメリカの科学館にも行ってくるとのこと。

つながることで、ちがいが生きる

asobi基地やCFSは、子どもにしかない力や子どもにしか変えられないものがあることに大人が気づく場です。家庭・企業・学校という社会を構成する3つの場をつなげたくて行っているものでもあります。

いまはその3つが結びついていませんよね。だからこそうまくコーディネートしていきたい。企画を立て、どうしたらいろんな人が注目してくれるか考えるのが私の役目です。そこに商品開発ができる人や広めてくれる人など、いろんな人たちが集まって、得意分野を生かして動く。大人の多様性ってそういうことだと思うんですよ。

子どもは大人をよく見ています。もしかしたら、いまのままでは自分のことしか考えなくていいのだと勘違いしてしまうかもしれません。いろいろな大人が集まって、新しいなにかを生み出す。その姿を見せることで、大人になることや社会を変えることを楽しそうだとワクワクさせられるのではないでしょうか。

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「教育と社会の壁をとりはらうロールモデルになりたい」とも話す小笠原さん。先生は親よりもたくさんの子どもの個性を知っている。社会にその知を役立てていくことができれば、もっと子どものことを真剣に考える社会に変わっていくと直観しています。

大切な人たちへの感謝をかたちに

保育園での毎日は仕事というより、いろんな発見をしにいっているようなものなんです。子ども達って本当にすごいなーって。今日も子どもからたくさんの大事なことを学びました。だからそれを恩返したいんです。そんな気持ちでいつも保育やasobi基地、新しい企画をやっています。

まっすぐぶつかってくれる子どもや私のことを支えてくれる人たちが喜ぶことをお返しする。asobi基地やCFSを続ける中、そういう循環を生きていきたい自分を見つけました。

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3年後にasobi基地カフェを開きたいという夢をもっています。定位置があれば平日もできる、企業にどういうことをやっているか伝えやすくなるなどのよさがあるからです。今秋10月には、二日間限定でasobi基地カフェを行うためにメンバーたちと動き出しています。

自分の思っていることをちょっとだけでもチャレンジしてかたちにすれば、拾ってくれる人が現れます。大人の役割は行動してかたちにすることだと思っているので、私はそれをちゃんとやっていきたいですね。

皆さんのなかには、普段子どもと接する機会がほとんどない、という人も多いでしょう。子どもと大人は別々の世界に分断されがちですが、同じ社会で一緒に生きています。子どもがいる人も、いない人も、ぜひasobi基地の活動に参加してみませんか?