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絶滅危機の動物と触れ合う!「WWF Together」が秘めた、アプリの新しい可能性とは

ホッキョクグマ、海ガメ、サイ、トラなどの野生動物は、動物園に行けば会えますし、プラネットアースでも簡単に見ることができますよね。しかし、実は絶滅の危機にある代表格の野生動物たち。決して身近な存在ではないのです。

そんな中、絶滅の危機にある野生動物を守る活動をしている「World Wildlife Fund (世界自然保護基金、以下WWF)」は、世界のかっこいい野生動物たちと触れ合う、新しい方法を提案しました!

iPad用の公式アプリ「WWF Together」が、絶滅の危機にある野生動物の真実を、特徴ある豊富なデザインを指でスワイプすることで、あなたを新しい”発見”へといざないます。

2011年にWWFがアプリを検討し始めた当初、アイデアはユーザーにWWFの保護活動について知ってもらう、というものでした。組織として的も得ており堅実ですが、そのままでは、今までのクリエイティブとあまり変わらなかったでしょう。

そこで、WWFデジタルエクスペリエンスディレクターのDiane Querey(ダイアン・クエリーさん)は、堅苦しいアプローチ方法を捨て、WWFのミッションの核に重点を置いたアプリにしようと考え直したそうです。核とはつまり、動物界の威厳ある絶滅の危機にさらされている野生動物たちのこと。そして、デジタルデザインで有名なAKQAと共同で、今回のプロジェクトに取り組みました。

「WWF Together」をダウンロードすると、ジャイアントパンダ、ユキヒョウ、海ガメなど、8つの生き物たちのセクションがあり、スタート画面を指でスワイプしていくと、その野生動物にまつわる未知の体験へと繋がっていきます。一見、最初のセクションでは基本的なデータの情報が提供されているだけに見えますが、ここにもデザイナーの細かい気配りやセンスがきらりと見え隠れします。

例えば、ジャガーの例を取ると、現在の個体数や生息地、体重などの情報はもちろん、美しいデザインや見やすい文字と共に、GPSを使ったユーザーとジャガーとの実際の距離までが計算され、スクリーンに表示されます。

ジャガーにまつわる事実そのものが、表現するデザインや文字によって、シンプルながらも、対話をしているようなインフォグラフィックとなっています。その巧みなプレゼンテーション技術と、考え抜かれたカスタマイズ機能は、本や映像とは違った、より深く、強く人を惹きこむインタラクティブな体験へと変わっていくのです。

worldwildlife.org some rights reserved.

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さらに感動的なものと言えば、トラの「低光量ビジョン」でしょうか。「トラは暗闇でも、人の6倍目がよく見えます」という青く大きな文字…実は、単に文字で表現するだけでなく、映像で表現しています。

同じスクリーン上にトラの目に見立てた円が2つあり、1つはトラが見ている世界、もう1つは人間が見ている世界です。その”目”を通して、”6倍目がよく見える”ということはどういうことか、暗闇の中でも、獲物の存在や、小動物が草むらに隠れている様子を体感できるような仕掛けです。さらにiPadのカメラを使えば、自分がまるでトラになった気分で探検し、トラが見ている世界そのものが直感的に感じ取れる、ユニークなデザインとなっています。

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WWF Togetherについて、WWFのコミュニケーション&マーケティングシニアバイスプレジデント、Terry Macko(テリー・マッコさん)は、若者の研ぎ澄まされた感覚を過小評価しているアプリが多いことから、子どもや大人を啓蒙できるものを作るため、コンテンツやプレゼンテーションの知的レベルを下げないよう気を遣ってきたと話します。

また、AKQAアソシエイトクリエイティブディレクター、Elizabeth Bieber(エリザベス・ビーバーさん)も語ります。

”体験をより発見に” ―ユーザー自身が少しずつ発見していけるようデザインしました。インタラクションというのは、つまり情報を明かしていくことです。我々はユーザーがのめり込み、楽しいと感じて欲しいと思っています。

しかしそれ以上に、”発見”することを通して、情報を心に留めたいと思って欲しいと、そう心から願っています。

アプリは今後も更新され、どんどん新しい野生動物たちが加わっていくそうです。指先でつまみ、ドラッグし、スワイプするというインタラクションが加わり、人々の感情を呼び起こし、絶滅が危ぶまれている野生動物たちへの関心をさらに高め、その先のアクションに繋がっていくのではないでしょうか。

(Text:鷲尾直美)

[via Fastcodesgin]