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美しさに動物実験の犠牲はいらない!杉本彩さん、生駒芳子さんが語る「本当の美しさ」 [イベントレポート]

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2013年3月11日。この日は東日本大震災から満2年を迎えた日であるとともに、欧州連合(EU)において化粧品の動物実験が完全禁止された記念すべき日でした。この日を見越して国内でも2月28日、資生堂が化粧品・医薬部外品における動物実験を廃止すると発表。

こういった状況の中、3月10日に日本での化粧品の動物実験を考える「美しさに犠牲はいらない」シンポジウムが行なわれました。

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「美しさに犠牲はいらない」特設サイト http://www.crueltyfreebeauty.jp/

皆さんは、化粧品の動物実験がどのように行なわれているかご存知でしょうか。日本で2月に株式会社ラッシュジャパンが行なった調査によると、化粧品開発のための動物実験の問題について、「知っている」と答えた人はわずか3割。実験が行なわれていること自体も知らない人も多いのではないでしょうか。

日本でも、すべての化粧品に動物実験が義務づけられているわけではありません。しかし、配合するにあたって一部規制がある成分を使う場合や、薬用化粧品(医薬部外品)に新規成分を配合する場合などには、動物実験が義務づけられています。また、企業が独自に行なう研究開発で動物実験が行なわれることもあります。

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動物実験の様子がスライドで紹介されました。(写真提供:美しさに犠牲はいらないキャンペーン実行委員会)

化粧品のための動物実験にはいろいろな種類があります。例えば、皮膚への刺激を確認するためにウサギなどの背中の毛を剃り、そこへ試験薬を3日~2週間塗り続けて、化学物質が皮膚にもたらす影響(炎症や損傷状態)を調べたり、誤飲などの際の毒性を調べるために絶食させたマウスなどに試験物質を強制的に投与して中毒症状を確認したり。すべての実験動物は、実験後に生きていても解剖され、廃棄物として処理されます。

こういった情報が資料として配布され、スライドで紹介される中、「美しさに犠牲はいらない」シンポジウムは始まりました。シンポジウムのメインは対談とパネルディスカッション。対談には女優でライフワークとして動物愛護活動に取り組んでいる杉本彩さんと、ファッションジャーナリストで、モードな社会派ファッション雑誌「マリ・クレール日本版」の編集長を務めた経験を持つ生駒芳子さんが登壇。「本当の美しさとは何か」について話し合われました。

本当の美しさとは?

対談では、まず杉本彩さんと生駒芳子さんが登壇に当たっての想いを表明。

芸能人がやりたかったわけではない。芸能人として何ができるか、を考えて実行するところに意味があるんだと思います。動物愛護活動をしていくことが私の役割ではないかと思うし、そうすることで自分の人生に意義を感じることができるようになりました。(杉本さん)

何かを支援すると、逆にパワーをもらうことは非常に多いと思うのです。震災を経て、日本人は「何かを変えたい」「本当の幸せって何だろう」と考え始めました。まずはいろいろなことに気付くこと、知ることが大事ですね。(生駒さん)

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杉本彩さん

続いてコーディネーターの柳井麻希さんが「本当の美しさとはどんなものか」と水を向けると、

若い時に重視しがちな外面的な美は一時的なもの。ある程度の年齢になると、目に見えないものへの感受性、内面の美しさがにじみ出てきます。(杉本さん)

ファッションの世界では、まだまだトレーサビリティ(追跡可能性。物品の流通経路を生産段階から最終消費段階あるいは廃棄段階まで追跡が可能な状態)が遅れています。でも、これからの美しい人は、“目に見えない内側まで美しい”ということを意識すべきなのではないでしょうか。(生駒さん)

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コーディネーターの柳井さん

しかし、そう思っても「芸能人として動物実験に反対するなどの行動を起こすのは覚悟が必要だった」と杉本さんは言います。動物実験を行なっている企業がスポンサーになっている仕事も芸能界には多いため、仕事がなくなる可能性があるからです。

生駒さんもメディアの仕事の経験から、杉本さんの言葉に共感。

企業やメディアは変わることをおびえているかもしれないけれど、消費者は何が良いことであるかをわかっています。消費者は、正しいことをする企業を必ず応援するはずです。

資生堂で買い物をした時に「動物実験を廃止したんですね。すばらしいですね」などと販売員に伝えれば、それは必ず経営陣にも届きます。良いものを応援するというポジティブな姿勢で、個人単位で意識が変わってきていることを企業に示すことが大事ではないでしょうか。(生駒さん)

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生駒芳子さん

楽しくラグジュアリーに美しく、良いことをしていこう

生駒さんは、さらに日本では50、60代の人が遊ばないし、40代女性が自分で美しくあることをやめてしまう風潮があることを指摘。ヨーロッパでは、60代になっても夫婦で美しく着飾ってディナーをしにいったりするのが日常的であり、そういった中でチャリティを行なったりしていることを紹介しました。そして

大人が美しくなっていくことが必要です。チャリティや社会的に良いことを、地味で質素に行なうだけではなく、楽しくラグジュアリーに美しくやっていく機会を増やしたらどうでしょうか。

と提案。杉本さんも「人生を楽しみながら、活動し続けることが大事ですね」と同意して、会場からの大きな賛同の拍手とともに対談が終了しました。

企業が変われば、社会が変わる

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パネルディスカッションの様子(写真提供:美しさに犠牲はいらないキャンペーン実行委員会)

続いてのパネルディスカッションには、コーディネーターとして柳井麻希さん、パネリストとしては生駒芳子さんに加え、フェアトレード・ラベル・ジャパンの中島佳織さん、ソーシャルクリエイティブエージェンシー「サステナ」のマエキタミヤコさん、イベントの主催者であるNPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)の亀倉弘美さんとNPO法人アニマルライツセンター(ARC)の岡田千尋さんが登壇。消費者への訴え方や消費者ができる方法が議論されました。

パネルディスカッションの中で、JAVA亀倉さんからは、資生堂に対して4年間働きかけ続けたことが報告されました。

運動の初期のころは消費者に対して、「動物実験していないこんなコスメがあるよ」というアプローチをしていました。共感をしてくれる人は増えたのですが、企業は変わってくれませんでした。

そこで、「ウサギを救え!化粧品の動物実験反対!」という強いタイトルを掲げ、アグレッシブな活動を開始しました。渋谷や銀座をデモ行進したり、2009年末には4万人の署名を集めて資生堂に提出したりして、動物実験廃止を訴えてきました。

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真ん中が亀倉弘美さん

このJAVAの資生堂への4年間の働きかけについて、生駒さんは「業界の雄である資生堂を動かしたのはすごい。」と賞賛。今後、もっと多くの人を巻き込んでいくためには、伝え方を変えるといいと提案がありました。

また、マエキタさんは、市民活動が
1.内輪受け黎明期
2.外受け発信期
3.バッシング反動期
という段階を経ることを説明。4番目の段階として「好循環成長期」を向かえるか「悪循環衰退期」を向かえるかは、3番目の段階で周囲に「詳しくはわからないが、たてつく人たちは胡散臭い」「お金がもらえるから反対しているに違いない」「なんでもっと早く言わないの。自分が否定されているみたい」といった気持ちを持たれないようにすることが大切だと解説しました。

そのうえでマエキタさんはそういった気持ちをもたれないためにも、

髪を振り乱して訴えなければならないような深刻な内容だからこそ、エレガントに伝えるエレガンス・アクティビズムが大事です。

と話し、発信する際には否定形・命令形・疑問系より肯定系で伝えることの大切さを訴えました。

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消費者の「買う力」にかかっている!

フェアトレード・ラベル・ジャパンの中島さんは、化粧品の動物実験の認知度と、フェアトレードの認知度にそれほど差がないと指摘。次のように話して、満場一致のうちにイベントは幕を閉じました。

消費者が、フェアトレード商品や動物実験を行なっていない企業の作る化粧品を積極的に買う「バイコット」を行なうことが大事なのではないでしょうか。良いことをしている企業にお金が集まるようになれば、その企業は発展し、他のところは衰退していきます。すべて消費者にかかっています。

私たち一人ひとりが、商品の裏側にまで思いをはせる感受性を持ち、楽しみながら良いと思う企業の商品をこつこつと買い続けていく。そんなバイコットに、皆さんも参加しませんか。