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病で髪を失った子どもの笑顔をウィッグで取り戻す「Japan Hair Donation & Charity」

Locks of Love 2  Creative Commons: Some Rights Reserved. Photo by Klahani.

Creative Commons: Some Rights Reserved. Photo by Klahani.

少しずつ春の兆しが見え始めてきて「イメージチェンジに髪を切ろうかな」と思っている皆さん。ヘアサロンで長い髪をバッサリ切ってもらって、床に落ちた髪を見て「もったいない……」と思ったことはありませんか? 生えている間はきちんとケアをしていたのに、切ってしまったらタダのゴミ。

その「もったいない気持ち」を生かして、小児がんなどで髪の毛を失った子どもたちの笑顔を取り戻すことができる仕組みがあります。その仕組みを作っている「Japan Hair Donation & Charity」(以下、JHDAC=ジャーダック)の渡辺貴一さんにお話をうかがいました。

髪の毛の寄付を受け付けて、子どもの医療用ウィッグを作る

JHDACホームページ

JHDACホームページ

JHDACは、全国から31センチメートル以上の長さの髪の毛の寄付と寄付金を受け付け、フルオーダーで小児用の医療ウィッグを作り、サポートを必要としている子ども達に無償提供しているNPO団体です。

全国には、小児がんや白血病、先天性の無毛症、不慮の事故などにより髪の毛に悩みを抱える子ども達がいます。例えば小児がん。命を救うための治療がガンの再発防止には不可欠だということがわかっていても、その治療のせいで髪の毛を失うのはやはりつらいもの。そんなときに、似合う医療用ウィッグがあれば、子どもたちの日々の生活の質は確実に上がります。

しかし、一般的に医療用ウィッグは数十万円と高額です。小さな子どもであれば成長に合わせて買い替える必要もありますし、そもそも人毛ウィッグの寿命はだいたい2年。ただでさえ治療費がかかっている家計に、その経済的な負担は小さくありません。

子どもたちは実は親の様子をよく見ているものだ、と渡辺さんは言います。

治療費がずいぶんかかっていることや、親が一生懸命に自分のことで頑張っているのを、子どもはよく見ているのです。そういった様子を見ると、髪の毛の悩みを言い出せないこともあるでしょう。

親御さんの方でも、髪がなくなっていく我が子を見て、イジメられたりからかわれたりするのではないか、と心配したり、頭を撫でただけで髪の毛が抜ける様子を見て心をいためたりしています。そんな状況を改善するために、JHDACでは無償で何度でも医療用ウィッグの提供を受けられる取り組みを始めました。

髪の毛にまつわることで世界に恩返しをしたい

JHDACに寄付された髪の毛。賛同美容室を通じても寄付できる。

JHDACに寄付された髪の毛。賛同美容室を通じても寄付できる。

渡辺さんの本業は美容師。JHDACの活動は渡辺さんと2人の美容関係者が立ち上げました。この活動を始めたときの想いを、渡辺さんに聞きました。

美容室もきちんと利益を上げ、雇用している人たちに給与を支払わなくてはなりません。そのため、美容室によっては強いプレッシャーで営業利益を追っているところもあります。でも、自分たちはお金のことばかり追求していくことに疑問を持ちました。営利だけ追ってしまうと、どんどん心が渇いてくる気がしたのです。

また、3人とも「髪の毛」を扱うことで仕事をしています。仕事が好きで、この仕事で生きていけることに「恩」のようなものを感じています。その「恩」を、「髪の毛」にまつわる何かを行なって、世界に恩返ししたいと思ったのです。

そんな想いでいたちょうどその頃、ニューヨークに在住しているパートナーの1人が、アメリカで行なわれている「髪の毛を寄付できる活動」を発見。この活動を日本に取り入れようと3人はNPO法人を立ち上げることにしたのです。

「自分の笑顔を久しぶりに見た」

ウィッグをつけて、顔に合うように髪を切ってもらう様子。

ウィッグをつけて、顔に合うように髪を切ってもらう様子。

医療用ウィッグの提供を受けた人たちはどんな反応をしていたのでしょうか。白血病で髪の毛を失ったある女子高生は、病気になって以来一度も行ってなかった美容室で、ウィッグではあるけれど久しぶりに髪を自分に合わせて切ってもらい、「自分の笑顔を久しぶりに見た」と話してくれたそうです。話を聞くと、病気になってからは自分の顔を鏡で見ることがいやになってしまい、ほとんど見なくなっていたということ。

その他にも

このウィッグのおかげで、堂々と外に出られます。

わたなべさんへ
病院に来てくれたり、ウィッグを作ってくれてありがとうございました。
髪がなくなった時は学校に行けないと思ってかなしかったけど、ウィッグができて、かわいく切ってもらって、ほんとうにうれしいです。
ありがとうございました!

と言った声が、多数寄せられているそうです。

幼い子どもにも寄付をしています。

幼い子どもにも寄付をしています。

最終的に求めているのは、髪の毛があってもなくても関係のない世界

髪の毛がない人を笑ったり、哀れんだりするような風潮って、おかしいと思うのです。特に美容室は、髪の毛がある人が対象のサービス。でも、髪の毛がなくても、その人はその人。髪の毛がなければ別のサービスをすればいい。こういうことを業界に対して問題提起したい気持ちもあります。

と渡辺さんは言います。

美容業界だけではなく、「髪の毛がない人を奇異な目で見ることのない世界」を求めて、JHDACでは学校への講演活動にも今後力を入れていきたいと渡辺さんは話してくれました。

髪の毛の寄付だけではない支援の形

髪の毛とともに寄せられた手紙。子どもからの髪の毛の寄付も多い。

髪の毛とともに寄せられた手紙。子どもからの髪の毛の寄付も多い。

JHDACでは髪の毛だけではなく、不要となった医療用及びファッションウィッグの寄付も受け付けています。こちらは、きれいに洗浄して必要な人(主に成人女性)に提供しているとのこと。

また、医療ウィッグを作るのに髪の毛の寄付も必要ですが、髪の毛がウィッグになるまでにはさまざまな処理工程が必要です。例えば、毛髪の状態を統一するためにトリートメントを施したり、提供を受ける方の頭のサイズを測定してウィッグ制作を行なったり。JHDACでは、そのために必要な資金に対する寄付金も受け付けています。

髪の毛がなくても、その人の魅力は変わらない。でも、捨ててしまう髪の毛を喜んでくれる人がいるならお譲りする。そんな髪の毛から始まる暖かい仕組みに、皆さんも参加してみませんか?