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世界を旅してアイデアを広めていく社会起業家たち。「Unreasonable At Sea」が挑む世界の問題解決のためのアクション

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パソコンが多くの人たちに使われるようになり、スマートフォンやタブレットといった端末も浸透しつつあります。テクノロジーの進化に応じて、身の回りの生活が変化してきています。同時に、豊かな生活を送る人たちと途上国などにおいて貧困に苦しむ人や教育が受けられない人たちに対して、世界的に取り組むべき問題として多くの人たちがテクノロジーを使って解決を図るようになりました。

起業などのスタートアップがここ数年盛り上がりを見せている中、ソーシャルアントレプレナーとして、社会問題に対してビジネスを通じて解決を図ろうとしている人たちは、日本だけでなく世界でも大きな潮流となってきています。

こうした教育問題や貧困、医療や水問題などのあらゆる課題解決のために、100日以上に渡り世界中を航海し14ヶ国の国に渡航してその土地にある様々な問題をリサーチしたり政府や行政関連の人たちに自分たちの事業をプレゼンする、壮大なプログラムが実施されていることをご存知ですか?

Unseasonable At Sea」というプログラムを通じて、11ヶ国から集まった熱い思いをもった社会起業家たちが、世界一周をおこないメンターらと一緒にビジネスについてブラッシュアップしていき世界の問題解決を図ろうとしています。このUnreasonable At Seaの人たちが問題解決の航海に旅立ち、航海後に初めて到着した日本で、彼らの思いをプレゼンするイベント「Unreasonabe Tokyo」が開催されました。

今回はUnreasonable Tokyoで話された熱い世界の社会起業家たちのイベントの様子をまとめました。

世界を旅して社会問題解決の事業をつくりだしていく

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まずはじめに、Unreasonable At Sea創立者兼CEOのダニエル・アプスタインさんから、挨拶とUnreasonable At Seaに対する思いが語られました。

世界には、10億人以上もの人たちが1ドル以下で生活しています。この貧困の問題を2020年までに半分にしたいと考えました。問題を解決するためには、知恵と変化を起こそうとするアクションが必要です。そのためには、いまのビジネスのあり方を考えていなかければいけません。

プレゼンの中で、グラミン銀行のムハマド・ユヌスさんを例にあげ、マイクロファイナンスをおこしたときは27ドルからスタートし、銀行からも支援されませんでした。しかし、2007年には180の国々で使われるようなものにスケールした経緯を説明し、こうしたユヌスさんの起業家精神のように、起業精神をもって問題解決に立ち向かうために「Unreasonable Institute」を始めた、とダニエルさんは話します。

100日間船に乗って14ヶ国を航海し、自分たちの五感を通じてその土地の様子を感じ、現地のリーダーや起業家とディスカッションをすることで、大きな刺激とアイディアの交換が生まれます。またその土地特有の問題を調査・分析することで、より問題解決のヒントを見つけることができます。あわせて、メンターの人たちとの日々のコミュニケーションを通じて、よりよい事業のアイデアが磨かれていきます。

世界を旅し、世界のあらゆる人と出会いながら様々な問題と向き合う。そんな思いがUnreasonable At Seaにはこめられています。

Unreasonable@Sea 2 Minute Video! from Unreasonable Media on Vimeo.

これからの時代をつくるアイディアとソーシャルデザイン

ダニエルさんの挨拶のあとは、Keynoteプレゼンとして元Google 副社長の村上憲郎さん、greenz.jp発行人の鈴木菜央さんがプレゼンをおこないました。

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村上さんは、ICTに関して世界の最先端で何が行われているのかについて説明しました。様々なものがインターネットと接続されたスマートグリッドの時代によって、コミュニケーションのあり方そのものが変わってくると話しました。

PCからタブレットに進化し、スマートデバイスが普及することでスマートグリッド、つまりIOT(Internet of Thing)がおこなわれるようになります。インターネットによって、あらゆるものが接続されることでそれぞれの機能が拡張されていきます。インターネットによって、人と人との間のコミュニケーションだけでなく、人とモノ、モノとモノなどの間にも使われることで、新しいビジネスやアイデアが創発されていくのではないだろうか。

インターネットが当たり前になる世界は、私たちの生活や環境を大きく変えていきます。デジタルによってデータの分析からも様々な傾向や改善策を導き出すことができます。これらを使い、より効率的で新しいビジネスチャンスが生まれてくることから、これからの時代をつくっていくのだと感じます。

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鈴木菜央さんはgreenz.jpを立ち上げた経緯について。阪神大震災のときに多くの人がボランティアに集まり多くの人たちが自分たちでアイデアをだし、行動し、問題解決を図ろうとしている姿を体験。自分たちで目の前の課題を解決していく動きがもっと普段でも起こせないか、ということがgreenz.jpの始まりだと話しました。

一人ひとりが人生の主役になれる社会づくりを目指したい。そして、たくさんの人と出会いながら人生を豊かにしていくために「あなたの暮らしと世界を変えるグッドアイデアのウェブマガジン」をコンセプトにgreenz.jpを立ち上げました。ソーシャルデザインという発想によって、社会的な問題を解決させると同時に、新しい価値を生み出そうとしていくことが大切なのです。

ソーシャルデザインのためには、創造的、デザイン思考、アメーバ型の活動形態、コモディティ化、ネットワーク化という5つの要素が大事であり、これらを加速させることが、社会の問題解決につながるものだと話しました。

ソーシャルデザインの事例として、ボランティアの現場で自信のスキルを可視化する「できますゼッケン」や大阪のホームレスと都市交通の問題を解決する「Hub Chari」、ワンコイン検診の「ケアプロ」、化粧品を活用した途上国の貧困層支援の「コフレ・プロジェクト」などの活動を紹介し、身近な視点をもとに問題を発見することの大事さで話を終わりました。身近な問題から社会へとつながるアクションへとつなげる、そうしたことから少しづつ何かが変わっていくのだと思います。

世界で活躍する多種多様な社会起業家によるプレゼン

Keynoteプレゼンのあとは、Unreasonable At Seaに参加している企業のうちの8社のプレゼンテーションです。どの起業家も、世界の様々な問題に対して調査や開発をおこない、問題に対してビジネスの手法から解決を図ろうとしている人たちです。以下に、プレゼンについてまとめました。

太陽光調理機が世界を救う「One Earth Design」

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One Earth Designは、世界でも最もパフォーマンスが良い調理機を開発し、エネルギーを創りだす製品をつくりだしています。世界には30億人近い人たちがエネルギー問題に直面しており、そうした人たちに対して、第三者機関に認められたパラボリック太陽光調理器を通じて問題解決を図っています。二酸化炭素を削減し、途上国の女性たちの家事労働の時間を効率化し、家庭の消費を抑えることで貧困から抜けだせるようにしています。

世界初の温度調節が可能な太陽光調理機として、中国の農村で発売2ヶ月で800台は売れたそうです。中国初のB Corp認定企業として、社会的活動と営利活動とがマッチした企業として、中国トップの社会起業を目指し活動しています。

植物で水問題を解決する「Aquaphytex」

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スペインのAquaphytexは、水問題に悩むヨーロッパの課題解決からスタートした企業です。従来の排水処理に代わる新たな自然処理方法として、植物を使った処理をおこなうことで、化学物質やエネルギーを一切利用しない排水処理技術開発に成功しました。これによって、わずかなお金とエネルギーによって、十分な利益をあげながら数万もの生物の命を救っています。

ある一つの村の処理システムでは、約8000人もの人にキレイな水を提供でき、1年間で乳幼児の死亡率を75%以上も下げた実績もあるそうです。現在では30万もの人々に設備を提供しており、世界88箇所の処理場を展開しています。将来的には、10億人の人たちに届けていくためのグローバルネットワークをつくっていきたい、と語ります。

Entrepreneur Spotlight: Pedro Tomas Delgado – AQUAPHYTEX from Unreasonable Media on Vimeo.

アイディアとテクノロジーで誰でも医療をうけれる環境を−「Evotech」

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途上国では、何百万もの人たちに対して呼吸器や婦人科、消化器などに関連した治療ができない現状があります。その多くは、内視鏡などを使った設備を整えることに多くのコストがかかることが原因だそうです。

そこで、イボルビングテクノロジーは問題解決のために最新のデザインとアイディア、MITのエンジニアなどによってUSBで作動する医療用ライトを開発しました。EvoCamと呼ばれるライトは、軽くて携帯可能な内視鏡システムを開発しています。ラップトップとつなぐことで電源を供給し、コストをこれまでの20分の1にまで削減することができるのです。単純な装置を使うだけで最先端の技術を提供する。安い内視鏡を提供することは問題解決にはならず、現状ある先端技術としての内視鏡そのものをいかに工夫して提供するかを常に彼らは考えています。

煙がでないコンロで森林問題と女性の家事問題を解決する「prakti Designs」

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WHO(世界保険機関)によると、調理の火からの煙によって毎年160万人以上もの人々が命を落としています。農村地域では、女性は薪集めのために毎週平均20時間以上の時間を費やし、収入の最大40%を燃料費として使っています。praktiはこれらの燃料問題を、家事の効率化と森林の伐採問題の両方を解決するためのコンロを開発しました。

これまでの伝統的な調理法やレシピに対応しつつ、燃料使用量を半減しつつ煙を70%削減したコンロは、すでに4週間で8万人もの人たちから注文がはいりました。

煙がでなくなることは、女性にとって匂いがつきにくいということにもつながります。それによって、女性が自信をもつことができるのも、この技術によって解決することができると話してくれました。森林伐採問題、そして途上国における燃料と調理問題を解決を大きく展開するきっかけにしていきたいと語ってくれました。

Entrepreneur Spotlight: Mouhsine Serrar – Prakti Stove from Unreasonable Media on Vimeo.

教育問題をテクノロジーで効率化する「Vita Beans」

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世界のあらゆる問題の根底には、教育問題を抜きに語ることはできません。けれども、教育問題を考えてみたときには、まだまだ900万人近い教師が世界中で不足しています。「優秀な教師」を作るためにどうすればいいか。

Vita Beansは、ゲーミフィケーションを利用した教育現場におけるモチベーションの維持や活用方法を模索しています。他にも教師自身も楽しみながら成長していく仕組みや、生徒の活動をリアルタイムで把握できるツールを提供していこうとしています。教育事業を展開する会社の製品開発の支援をおこなったりと、教育に対する新しい解決策を図ろうとしており、すでにインドでは10の州で商用採用がされており、3000を超える学校で250万人以上もの学生に利用されています。

太陽光でいつでもどこでも補聴器が使える世の中に−「Solar Ear」

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世界には約6億人近い耳の不自由な人たちがおり、そのうち70%近くが途上国で暮らしています。しかし、多くの補聴器はバッテリーの問題やコストの面などでなかなか一般の人たちにまで届いていません。

そこで、Solar Earは太陽光を使ったソーラー補聴器を開発し、途上国の人たちでも簡単で長い時間補聴器が使える環境を提供しています。耳が聞こえるということはそれによって言語学習をすることができ、貧困からも抜け出すことができます。耳の不自由さを解決するだけでなく、教育問題解決も図るものだと話してくれました。現在、世界40ヶ国で販売をしており、収益は100万ドル以上をあげています。世界的に展開をおこない、聴力障害の人たちに対してあらゆる支援をしていく挑戦をしていきたいと語りました。

二酸化炭素で製品をつくる新しいテクノロジー「Damascus Fortune」

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二酸化炭素が大気中に放出されるごとに、地球の温度は上昇していき、温暖化や大気汚染に大きく影響を与えています。

Damascus Fortuneは、こうした問題に対して産業廃棄ガスや自動車廃ガスの中に含まれる炭素をとりこみ、カーボンナノチューブと呼ばれる製品へ変換する技術を開発しました。二酸化炭素などの排ガスを浄化し、自動車やボーイング787などの飛行機などのカーボンに利用することができることで、これまで再利用ができないと考えれていたものが再利用できる新しいエコシステムをつくりあげていきたと話してくれました。

エコフレンドでローコストなものと同時に、宇宙船など様々な用途にも使うことができます。新しい再利用の形を創りだす新技術として、注目が浴びています。

オープンソースで海洋問題を解決する「Protei Global」

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私たちの地球の7割は、海でできています。しかし、その海ではプラスチックや原油の流出、放射能汚染などによる海洋汚染問題が起きてきています。そうした海の問題に対して、Proteiは自然の力である「風力」で問題解決を図ろうとしています。風力を使ったエネルギーを動力源とし、流出した原油やプラスチックを回収するロボットを開発しました。アンドロイドで機械を操作することができ、ロボットのデータをオープンソースとして公開することにより、より効率的なロボット開発を世界中の研究者や開発者たちと一緒にやっていこうと試みています。

こうした、データをオープンにしてあらゆる人たちと社会問題解決を図るための研究リサーチをおこなうソーシャルR&Dと名付けられてた活動として注目が浴びています。研究と社会問題解決のマッチングによるソーシャルR&Dの動きは、世界中でいま大きく盛り上がりをみせています。

Unreasonableなことから、世界は変わる

以上が、Unreasonable Tokyoでプレゼンをおこなった8社の内容です。社会問題に対して、様々な挑戦や新しい技術を使って解決を図ろうとするソーシャルビジネスの分野は、今後国単位だけでなく国境を超えて様々な人たちと協働しながら課題解決を図っていなければいけません。

リーズナブルなことだけでは世界は変えられない。“Unreasonable”なことで世界を変えていこう。

冒頭の挨拶でダニエルさんがプレゼンをした内容です。常識や先入観などを取り除き、新しい発想やアイデア、研究から問題解決をはかり、そしてそれを広く多くの人たちと共有し協働することから、世界は少しづつ変わっていくと思います。

Unreasonable At Seaの船旅は、まだまだ始まったばかり。世界を舞台に大きな社会問題解決を図ろうと挑戦する11社の社会起業家たち。ぜひ、旅の様子を見続けていくと同時に、日本からも少しでも多くの社会起業家が生まれていくといいですね。