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“フェアな木”でつくられた家具を選ぼう!身の回りにある木を考えるきっかけをつくる「フェアウッド・パートナーズ」

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どこに住み、どんな暮らしをつくるのか。本当に必要なものは何か。「暮らしのものさし」は、株式会社SuMiKaと共同で、自分らしい住まいや好きな暮らし方を見つけるためのヒントを提供するインタビュー企画です。

例えば、みなさんが使っているテーブル。それはどこの森から来て、どこで作られたものでしょうか。その問いに答えることができる人は、なかなか少ないかもしれません。

実は世界の森では、違法な伐採が後を絶たず、そのことが地球温暖化を促すだけでなく、豊かな森に寄り添って生きる人や生き物を脅かしています。壊されてしまった森は、そう簡単に修復することはできませんが、せめて残った森をこれ以上壊さないために今できること…。そのヒントとなるのが、「フェアウッド」という概念です。

「フェアウッド」とは?

みなさんの身の回りにあるテーブルや椅子、机、お皿…その木がどのように伐採され、加工されたものか、産地はもちろん、木の種類さえもよく知らないことに気づくかもしれません。食のトレーサビリティは定着しつつありますが、木材についてはまだまだというのが現状です。

北上山地に育つアカマツやトチなどを素材に、木目の美しさを生かしながら時間をかけてつくられた器

北上山地に育つアカマツやトチなどを素材に、木目の美しさを生かしながら時間をかけてつくられた器(岩手・大野木工)

そこで登場したのが、「フェアウッド」です。ひとことで言えば、伐採地の森林環境や地域社会に配慮した木材や木材製品のこと。この概念を広く呼びかける旗振り役として、国際環境NGO「FoE Japan」と「地球・人間環境フォーラム」が共同で設立した「フェアウッド・パートナーズ」という団体があります。

フェアウッド、6つの指標

登米市津山町の木工職人が矢羽加工などの技法を生かして黙々と木の優しさを伝えてくれる。写真は矢羽杉のコースター
矢羽杉のコースター(宮城・もくもくハウス)。登米市津山町の木工職人が矢羽加工などの技法を生かして黙々と木の優しさを伝えてくれる。

フェアウッド・パートナーズが定めているのが、6つの指標です。これらの情報を環境リスクが小さい木材の調達を考えている企業に提供するなどのコンサルティングも行っています。

1. リペア・リユース・リデュース
例えば、家具や家を修理・再生して長く使う、印刷を減らす、裏紙を使う

2. リサイクル
例えば、古材や廃材を使って新たな家具などをつくる、古紙を使う

3. 合法木材
新しい木材を使うときは、最低限、違法伐採でない木材を選ぶ

4. 地産地消・地域材
できるだけ近くの森から来た木材を選ぶ

5. フェアトレード・産直木材・顔の見える木材
誰がどんなふうに管理をしているのか明らかな木材を選ぶ

6. 森林認証材
森林が適切に管理されていることを、信頼できる第三者が確認した木材を選ぶ

このように、木材の流通についてその透明性を示すことで、持続可能な木材調達の流れをつくるのが「フェアウッド」の目的なのです。

森を守るということ

この活動の背景にあるのが、「森林を守る」ということです。人が育てたものではない、原生林の森は、8,000年前に比べると2割くらいしか残っていないという事実があります。これらの失われた森を100%原生林に戻すということは、今の人口を考えると難しいとも言われています。

生物多様性という意味では再現が難しい今、残り少ない原生林をそのままにしながら、循環できる森をうまくつくることが必要なのです。

木材には独特の「節目」があるが、とりわけ大量生産の商品では嫌われてしまう

木材には独特の「節目」があるが、とりわけ大量生産の商品では嫌われてしまう

また、日本国内のことを考えてみると、日本の国土の7割くらいが森林で覆われているにも関わらず、実は海外から8割近くの木材資源を調達しています。数字だけを見れば国内でまかなえるはずの資源ですが、これほど海外から輸入されているのはなぜでしょうか?

その理由は、木材というグローバルな資材は、海外からの調達のほうが価格が安いから。昭和30年代には90%以上だった木材の自給率は、いまや圧倒的に海外の森への依存度が高くなり、結果として日本の林業も衰退の一途をたどっている、というわけです。

“東北の木”と暮らそう

ブナ、ケヤキ、トチといった山を彩る木の風合いが楽しい。写真は国産広葉樹のビーンズトレイ
国産広葉樹のビーンズトレイ(福島・きこりの店)。ブナ、ケヤキ、トチといった山を彩る木の風合いが楽しい

こうした背景から、「フェアウッド・パートナーズ」では、日本各地からフェアウッドな商品を集め、案内しています。ウェブサイトでは商品が購入できるだけでなく、産地の森をめぐる話や商品にこめられたつくり手の思いを知ることができます。

これらの活動のなかで、東北支援の一環として「東北の木と暮らそう」というプロジェクトが始まりました。

東北は従来から広葉樹の資源が豊富で、それらを加工する人たちがたくさんいたはずですが、前述のとおり、海外との競争でかなりダメージを受けていて、技術を持っている人がかなり減っているのだそうです。

岩手 大野木工

木のぬくもりや優しさを感じることができる、岩手の木の小鉢セット

木のぬくもりや優しさを感じることができる、岩手の木の小鉢セット

宮城 もくもくハウス

三陸海岸や北上川からもたらされる霧が豊かな森を育てている。写真は津山の木の色いろくるま

三陸海岸や北上川からもたらされる霧が豊かな森を育てている。写真は津山の木の色いろくるま

福島 きこりの店

磐梯山の南西、雪深い山間の南会津町。四季折々の山の姿は厳しくも美しくもあり、表情豊か。写真は国産広葉樹のベーグルコースター

磐梯山の南西、雪深い山間の南会津町。四季折々の山の姿は厳しくも美しくもあり、表情豊か。写真は国産広葉樹のベーグルコースター

現在は、岩手県、宮城県、福島県からそれぞれ、ひとつの木工所というラインナップですが、今後は取り扱いを増やしていく可能性もあるそうです。

身近な木のルーツを考える

木製の商品は、どこにでもあります。農産物であれば、味覚の違いがあるかもしれませんが、商品を見ただけでは、フェアウッドかどうかを見極めるのはなかなか大変です。

でも、例えば100円で手に入る木材製品があるとしたら、「100円で手に入るということはどういうことなのか」について、考えてみることはできるでしょう。もしかすると、そうした安い木材製品は、不当に安いということもあるかもしれません。

ウェブサイトでは、可愛らしいイラストとともにフェアウッドについて詳しく知ることができる

ウェブサイトでは、可愛らしいイラストとともにフェアウッドについて詳しく知ることができる

森から乱暴に木が伐採され、切りっぱなしで森に循環していかないような、環境破壊につながる生い立ちの木材製品でないかどうか…。ものを選ぶときに、イメージだけでなく、きちんとした取り組みをしている企業の製品に賛同して、購入する。食材と同じくらい身近な存在である木材も、その生い立ちから選ぶ時代がやったといえるでしょう。

2013年2月には、この東北支援シリーズの展示販売とワークショップ「東北の木と暮らそう」が開催されます。ぜひ実際に、”フェアな木”に触れてみてはいかがでしょうか。