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毎週末がフェスのような盛り上がり!ここでしか味わえない美味しさに出会える「青山ファーマーズマーケット」

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特集「野良的生活のススメ」は、“野良”な生活、“野良”な働き方を探求する連載企画です。自由気ままに人間らしく、自然のリズムと共に生きる人々の知恵やアイデアを掘り下げ、野良的な感性をみなさんの元へ届けます。

「今朝の採れたてだよ!ひとつかじっていって!」
「わ、おいしい!これは有機ですか?」
色とりどりの新鮮野菜とみずみずしいフレッシュフルーツを挟んで、農家さんとお客さんとの間で活発な会話が交わされる青山・国連大学前ファーマーズマーケット(Farmer’s Market @ UNU )

東京都内で開催されるファーマーズマーケットとしては最も有名なもののひとつなので、行ったことがある人や、一度行ってみたいと思っていた人も多いのではないでしょうか。

マーケットに出店しているのは、一日約60もの農家さんやその協力者たち。関東近隣はもちろん、遠いところでは東北から来ている方もいるというから驚き。おいしい食べ物と出店者との交流を求めて、週末ごとに通う常連さんも数多くいます。

“食品を買う、売る”だけならスーパーを通じてもできますが、まるでフェスのように賑わう青山ファーマーズマーケットが、たくさんの人を惹きつけるのはなぜなのでしょうか。

野菜を通じて笑顔がこぼれる!
フルーツの食べ比べ放題イベントも!

まさに都会のオアシス!陽射しと風が気持ちいい!

まさに都会のオアシス!陽射しと風が気持ちいい!

テントの隙間から射す陽の光、心地よく吹き抜けてゆく風。大人、子ども、家族連れが思い思いに楽しむ買い物やランチ。青山国連大学前ファーマーズマーケットは開放感と笑顔にあふれていて、ふらっと立ち寄ってお店を見て回るだけでも心がうれしくなってしまう空間です。

マーケットでは、農家さんのお話を聞かせてもらった上で旬のフルーツの時間内食べ比べ放題も出来る「フルーツパーラー」などのイベントも開催され、賑わいに花を添えています。お気に入りの果物とお気に入りの果物農家さんを見つけるだけでも楽しいのに、仲良くなると、フルーツをおまけしてくれることも!

「農家と都市生活者の接点を作りたい」

男子野菜部の“キャプテン”田中佑資さん

男子野菜部の“キャプテン”田中佑資さん

土日の2日間で、多いときには3万人もの人が足を運び、今では国連大学前の名物としてすっかり馴染んでいるこのマーケットですが、実は今年で4年目。けっして突然できたものではありません。その目的を、運営をおこなう男子野菜部の田中佑資さんは言います。

農家と都市生活者の接点をファーマーズマーケットをやることで、作りたいと思ったんです。

田中さんが、こうした想いに持つようになったのは一人暮らしをしていた二十歳の頃。農家をしていた田中さんの祖父母から送られてくる野菜を見て、ある時「この野菜はどうやって作られているんだろう」と思ったことだったそう。

野菜のことをなんにも知らないなと感じたら興味が出てきて、まず祖父母のところに行ったんですが作業を手伝ったら面白くて。それからいろんな農家さんのところを周るようになりました。

そこで感じたことを原点としてなにかしたいと考えていた時、僕自身が農家になるという選択肢もあったんですが、都市の人が農に触れられるような、次の生活の形、モデルを東京で作りたいと考えたんです。

作る人と食べる人の対話から生まれる“美味しさ”

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ファーマーズマーケットは、安心安全で誰が作ったのかがわかり、新鮮で、もちろんおいしくて…。と、食に対してある面で欲張りなニーズのある都市生活者と、我が子のように手塩にかけて育てた自慢の野菜や果物を食べてもらいたい、もっと知って欲しいという農家さんが直接出会い、話し、お互いに気持ちよく食べ物のやりとりが出来る場所。

しかし、それだけではありません。

運びやすさや売りやすさの観点で、一般的に流通される青果の形や大きさなどは、決められてしまっていますが、ファーマーズマーケットなら一般に店頭に並べられない曲がった大根でも売ることが出来るし、お客さんも形よりも、鮮度や味の方を優先する。これはお互いにとっていいことですよね。

農家さんも「味が良くても規格外品は市場に持っていっても二束三文にしかならないけど、ここならお客さんがおいしいと食べてくれる。それが凄くうれしい」と言ってくれたりするんです。

ファーマーズマーケットが無ければ捨てられてしまっていたかもしれない規格外品が、ここでなら農家さんの収入の一部にもなり、お客さんもおいしいものが手軽な値段で手に入りと、いいことづくめ。さらに、“作る人”と“食べる人”との対話は、農家さんの栽培方法を変えることもあるそうです。

「ぶどうは種ありの方がおいしいけど、今の消費者ニーズでは食べやすい種なしの方が売れる」と農家さんが話していたら、お客さんたちは「ぜひおいしい種ありを作ってほしい」と。

農家さんは売れるかどうか不安でおいしいはずの種ありを作れなかったけど、お客さんの声を受けて来年はチャレンジすると言っていました。

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食べてくれる人がいないと農家は作り続けることはできず、作ってくれる人がいないと私たちも食べられません。ファーマーズマーケットでは、作る人と食べる人のつながりと、理想的に循環する関係性が生まれています。

「美味しい」って言葉を漢字にするときに「味」が「美しい」って書きますよね。美しいって舌で感じる感覚じゃないじゃないのに。つまり、食べ物の美味しさは舌で感じる味だけじゃないんですよね。

作る人の想いまでまるごと感じながら食べる。「あの人の作ったホウレンソウ、ああ美味しいなあ」って。 そんな美味しさを感じてもらえるような関係づくり、場づくりをしていきたいですね。

野菜を知って、おいしく食べるための2冊の本

男子野菜部が出版した『畑レシピ』と『これからの野菜の食べ方』

男子野菜部が出版した『畑レシピ』と『これからの野菜の食べ方』

そんなファーマーズマーケットで、お客さんから農家さんに対して最も多いという質問が2つあるそうです。

一つは「この野菜って無農薬ですか?」というもの。そこで無農薬とは、有機栽培とは、ということから、おいしい野菜の見分け方など基本的な疑問に対する答えを読みやすくまとめた書籍これからの野菜の食べ方を出版。なんとなく知っているつもりだったこともしっかりと知れ、自分なりの野菜選びの基準を作ることができます。

そしてもう一つの質問「この野菜どうやって食べるとおいしいですか?」に対する本畑レシピは、自分でその野菜を育てている農家さん自らが食べているレシピのうち、厳選した100個を紹介。

カリフラワーをスライスしてかける「カリフラワーのペペロンチーノ」などの変り種から、手軽にできる「蒸しなすのしょうがポン酢」など、野菜を知り尽くした農家さんならではのバリエーション豊かなアイデアが満載で、いつもと違う一品がすぐに作れそうです。

もちろん、掲載されている農家さんはファーマーズマーケットに出店している方ばかりなので、わからないことを聞きにいったり、作ってみた感想を伝えに行くのも楽しみのひとつになりそうです。

「農家さんと一緒に作った自信の本が出せてうれしい!」

「農家さんと一緒に作った自信の本が出せてうれしい!」

震災の翌日にも開催、行けばやっているという安心感

「とにかくやり続けることを心掛けている」と田中さんが話すように、青山国連大学前ファーマーズマーケットは、毎週末欠かさずにマーケットを開催し、多少の雨や風では中止になることはありません。

なんと震災のあった311の翌日の土曜日にも開催。食のインフラとしての機能も果たして安心感を与えるなど、男子野菜部の名の通りの男らしい一面も。

やっているのかどうかわからない場所にはなかなか足を向けにくいもの。いつだってそこに行けばマーケットがあるという安心感も、たくさんの人が常連になってしまう魅力のひとつです。

「農家さんの役に立ちたい」

「農家さんの役に立ちたい」

農家さんは野菜やフルーツを前日から収穫して袋詰めしたりして、それを翌日に売って帰る。都内への往復時間も含めると大体1日半とかかかるんですよね。それって割に合ってるのかなあ、本当に農家さんの役に立てているのかなあ。そういうプレッシャーはいつも感じています。

という葛藤もあると言いますが、農家さんたちからはこんな声も。

リンゴとぶどう農家「豆の樹の家」岡田道夫さんとのぞみさん

リンゴとぶどう農家「豆の樹の家」岡田道夫さんとのぞみさん

輸送中に傷ついたリンゴをわけあり品にして安くしたり、同じニンニクでも小分けに袋詰めをすると買ってもらえたり。そんな風にお客さんと直接やりとりできるのが勉強になるし面白いですね。

常連さんとの出会いや、お店同士の物々交換も楽しんでます。山梨からあえて交通費をかけてでも来る意味がありますね。東京でも売れるんだっていう自信にもなっています。(リンゴとぶどう農家「豆の樹の家」岡田道夫さん)

栗農家「市ノ澤栗園ショコロンファーム」市ノ澤創さん

栗農家「市ノ澤栗園ショコロンファーム」市ノ澤創さん

無農薬で氷温保存。自信を持っている栗だからこそ、お客さんに説明したいんですよね。よそで売ってお金だけ入ってくるよりも、お客さんと接して、納得して買ってもらえたら自分も嬉しいですし。青山ファーマーズマーケットみたいな場所が他にももっとできるとうれしい。(栗農家「市ノ澤栗園ショコロンファーム」市ノ澤創さん)

「マーケットを“100年続く町の文化”に」

足を運ぶお客さんと農家さん、その両方が楽しくてわくわくしてしまう青山ファーマーズマーケット。年齢層も様々でとても魅力的な空間になっていますが、これからの展望はどのようなものなのでしょう。

まずは今の場所をより良いマーケットにすることに集中したいと思っています。そして、100年続く町の文化のようなものにしたいですね。基本に立ち返ると、農家さんと出会って話して直接買える場なので、そのためにはどういう場だったらもっといいのか?ということをマーケットでも表現していくつもりです。

自分の食べるものをこの人が作っているという安心感。青山ファーマーズマーケットの賑わいの中にいると、本来、人は食べ物に満腹感だけを求めているのではないように感じます。

作った人と食べる人が出会うことは、生産地から離れた都市部ではなかなかないこと。だからこそ、意識するしないに関わらず、お客さんはマーケットの引力に吸い寄せられるのかもしれません。

記憶は食べ物のおいしさとセットで、より鮮明になることを思うと、お母さんに連れられてきた小さい子どもがマーケットで覚えた野菜の旬や選び方はきっと忘れないでしょう。そしてその子が大きくなったときには、青山ファーマーズマーケットは文化としてその場所にしっかりと根付いているはずです。

毎週土曜、日曜に開催!マーケットに行ってみよう!