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日本でも広がる人身取引の実態とは?搾取の市場から自由を取り戻す「ポラリスプロジェクト」 ー 藤原志帆子さんインタビュー

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街を歩いていても、電車の中吊り広告にさえも少女が性を売られている…。「人身取引は文化の中に隠れている」と「ポラリスプロジェクトジャパン」代表の藤原志帆子さんは語ります。

北極星を意味する「ポラリス」は、19世紀には黒人が奴隷制度から自由に向かうための目印でもありました。ポラリスプロジェクトは、2004年設立以来、人身取引をなくすことを目的に活動している団体です。今年のTEDxTokyoにも登壇されていたので、耳にした方もいるかもしれません。

被害者の8割が女性、半分が子どもともいわれる、”社会的弱者”を性的搾取する市場から、どのように人身取引を撲滅できるのか。藤原さんにそのための道筋について伺いました。

人身取引対策の後進国としての日本

ポラリスプロジェクト代表、藤原志帆子さん
ポラリスプロジェクト代表、藤原志帆子さん

アメリカで大学時代を過ごしていた藤原さんは日本に一時帰国するたびに「おかしい!」と思っていたそうです。それは今でも変わらない感覚だそう

人身取引のケースではないとはいえ、例えばAKB48のミュージックビデオはメディア露出も多いが、肌の露出も多い。中には14歳から15歳の女の子が下着姿で映っています。日本でこれに慣れている私たちにとっては当たり前に見えるかもしれませんが、海外で目にすることはありません。「性を売ること」がいかに潜在的に浸透しているかがわかります。

そのためか、日本人が実際に人身取引の被害者になっていることへの認知度は低いまま。最近の意識調査によると、人身取引の認知度は90%強でしたが、日本で実際に人身取引が発生していることへの認知度は18.7%にとどまっているのです。「日本の人身取引対策はまだ火が点いていない状況です」と藤原さんは言います。

図1: ポラリスプロジェクトジャパン 人身取引に関する意識調査2012より

図1: ポラリスプロジェクトジャパン 人身取引に関する意識調査2012より

60年前に成立した「売春防止法」は今や実質的な効果を発揮していないのだそう。内閣府は2009年に人身取引対策行動計画を策定し、人身取引の根絶を目指していますが、まだまだ日本における人身取引対策は課題が多く残されているのです。証拠が抹消されていることが多く、被害者が語る暴力や脅迫の体験は証拠にはならないため、立件することさえも困難な状況。実態がなかなか浮かんで来ないのも頷けます。

特に外国出身の方は仕事をえるために来日している場合が多く、助け出すことで仕事をなくします。それは一時的に生活の手段がなくなるという意味であり、また同じことを繰り返すの可能性もあります。

私たちはそれでも「やるしかない」。できるなら逃げ出したいと思っている人にはありったけの情報を提供して守るしかないんです。例えばデリヘルに送り込まれた16歳の女の子を助けられたら、まだまだ人生を変えていくことができる。できるだけすぐに手を差し伸べるほうがいいのです。

ポラリスプロジェクトの支援活動

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ポラリスプロジェクトは現在、「聞き取る」「被害者の支援をする」「取り戻す」の3つの柱で活動しています。

「聞き取る」では、ホットライン(相談電話)を用意。当初は韓国、フィリピン、タイ出身の方が多かったのですが、2007年頃からは日本人からも増えているのだとか。すべてが人身取引の相談ではありませんが、累計相談電話件数は2,500件にのぼっています。

「被害者の支援をする」では、搾取の現場から救出して病院や警察に連れて行くことから始まります。こちらもここ最近増えているのが日本人の女の子と男の子だそう。そして「取り戻す」では、からだとメンタルのケアを行い、社会復帰ができるよう他機関につなぎ、衣食住なども含めて支援を行います。

ホットライン(相談電話)は被害者と繋がる重要な窓口

ホットライン(相談電話)は被害者と繋がる重要な窓口

あなたも活動に参加しよう!

とはいえ根が深い人身取引問題は、長期的で包括的なアプローチが必要。例えば新しく人身取引被害者保護法のような法律をつくらなければ、根本的な解決にはなりません。

それでも「少しづつ意識変化は生まれている」と藤原さんは語ります。実際ポラリスプロジェクトには、知るから参加する、投資するまで、さまざまな参加のレイヤーが用意されているのです。まずは、インターネットを通して人身取引の統計数字などを調べて現状を「知る+伝える」こと。

つづいて、ワークショップやインターンとして「参加すること」。そして、ホットライン、救出の交通費、病院の費用などに「投資する」こと。ポラリスプロジェクトでは現在、「Akari Project」という暗闇の中で被害者を照らす「灯り(明かり)」になるファンドレイズキャンペーンを実施したり、The Body Shopとコラボレーションしたリップクリームも販売されています。


Akari Project


チャリティリップバター

どこか遠くの国のことじゃない、足元にある人身取引の問題。みなさんも、自分にできることから参加してみませんか?


1. 2002年アメリカで設立された本部とはミッションは一致しているが、日本で日本の問題を扱う団体としてポラリスプロジェクトジャパンは独立している。
2. 子ども:18歳未満の者を示す(内閣府外務省より)
3. 人身取引( human trafficking) の定義:
搾取の目的で、暴力や脅迫を用いて強制的に弱い立場にいる者を支配下に置き、人を獲得し、輸送し、引き渡し又は収受することをいう。いずれの手段が用いられた場合には搾取に同意している否かは問わない。搾取には性的搾取、強制的な労働、奴隷化又はこれに類する行為、臓器の摘出を含める。(内閣府外務省より)

人身取引撲滅キャンペーンに参加しているアーティストの活動を見よう!