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無形文化を次の世代へ!エシカル・フェアトレードだけではない、新しい形での途上国とのかかわり方を探すブランド「EDAYA」

edayaのアクセサリー

この竹でできたアクセサリー、とってもユニークな形ですが、何をモチーフにしていると思いますか? 実は、フィリピンのコーディリエラ地方の伝統的な楽器で、厄よけの意味のあるバリンビンをモチーフにしています。そう聞くと「最近よく聞くフェアトレードのアクセサリーかな」とか「エシカルなアクセサリーかな」と思う方も多いかもしれません。

確かに、このアクセサリーのブランド「EDAYA」にも、エシカル・フェアトレードの視点があります。しかしEDAYAのアクセサリーは、さらに別のステキな発想に基づいてできています。EDAYA代表の山下彩香さんにお話を聞いてきました。

yamashita-ayaka
山下彩香さん

失われつつあるフィリピンの無形文化

現在、このアクセサリーのモチーフになっているバリンビンは、積極的に作ろうとしている人がたった3人。若者は「お金にならないから」と無形文化の継承に興味がなく、楽器作りの技術はおろか、儀式も行事もどんどんすたれてしまっています。

そして、無形文化を継承していきたいと思っている人たちにしても、お金がなく、自分たちが生きていくのに精一杯。その文化を次世代に伝える意思があっても、なかなかそれができない状況にあります。

けれど、現地の継承者の方と一緒に若者が関心を持てる形で、しかもお金も回るような仕組みを考えることさえできれば、無形文化の継承をともに盛り上げていくことも可能かもしれない、と思ったんです。

と山下さんは、言います。

ワークショップに参加した大学生たちと

ワークショップに参加した大学生たちと

山下さんがこういった思いを持ったのは、大学院時代に「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク」という環境NGOの、環境問題を演劇ワークショップを通して考えるという取組みに参加して、フィリピンのコーディリエラ地方に行き、エドガーさんと出会ったことがきっかけでした。

エドガーさんはそのNGOでボランティアをしている人として山下さんに紹介されたのですが、エドガーさんが「自分の働いている場所においで」と誘ってくれて行った場所で、山下さんは衝撃の現場を目にします。

鉱夫の人たちが鉱石をミルという粉砕機まで運びだしている様子の写真

鉱夫の人たちが鉱石をミルという粉砕機まで運びだしている様子の写真

エドガーさんは現地の民族楽器に造詣が深く、その製作や演奏を行う無形文化の担い手であるにも関わらず、働いている場所は山本作兵衛さんが描く炭鉱画とそっくりの金鉱山だったのです。その金鉱山は今、世界で非常に問題視されているような、法律で人間の権利が守られていないもの。

エドガーさんは人間が一人しか入れないような穴に入って金鉱を掘っていたんです。こんなに生活が厳しいのかと愕然としました。日本であれば、無形文化の継承者にはある程度の尊敬が払われ、ここまでの生活環境で生きることも少ないと思います。しかし、エドガーさんを取り巻く環境はそれとはまったく違うので驚きました。

と山下さんは語ります。また、コーディリエラは非常に美しい場所なのに、若者たちは自分たちの持っている文化や土地を価値のないものとして捉え、物質的な豊かさに憧れて外へ外へと出て行ってしまいます。もともと、無形文化に非常に興味を持っていた山下さんは、無形文化を守りたい人がいるのにそれができない状況を「現地の意志ある人と共に、なんとかしたい」と思ったといいます。

「無形文化」とは、暮らしとともに紡いできた財産

無形文化って、暮らしの知恵とかお祭りだとか、誰か偉い人が作っていくものではなくて、名も無きたくさんの人が作っていくものだと思うのです。長い間、普通の人々が生活の中で必要だったり、良いと思ったりして、暮らしとともに、つむいできたもの。何千年もの間にいろんな人がいろんな想いを感じながら研ぎすましてきた人間の財産が「無形文化」だと思うのです。

多くの民族楽器が「無形文化」ととらえられる理由は、それが暮らしの中になじんだ道具のようなものだからだと思います。単に製作技術を習得するだけでは無形文化を継承したとは言えません。その技術の後ろにある、長い歴史の中で人々がつむいできた思いや、その重み、感覚。そういった「無形」の部分をも継承してこそ、本当にその無形文化が継承されたと言えるのだろうと考えています。

今、グローバリゼーションがあちこちで叫ばれています。しかし、グローバリゼーションの結果、世界が全て単一の文化になってしまったらつまらないと私は思います。いろんな「無形文化」が大切に継承されて、お互いに違いを認め合い、混じり切らないマーブル模様になっていくのがおもしろいと思うのです。

そう山下さんは言います。もちろん、かつての日本がそうだったように、物質的な豊かさに憧れを持って、都会に出て行くこと、外国に出て行くことを、山下さんは止めようとしているわけではありません。でも、かつての日本が置かれていた状況と、今、コーディリエラ地方で無形文化が失われつつある状況には大きな違いがあると、山下さんは指摘します。

コーディリエラ地方カリンガにあるサラグパット村の様子

コーディリエラ地方カリンガにあるサラグパット村の様子

今は、インターネットなどを通じて、情報が広がるスピードが早いのです。そのため、長い間大切にされていた無形文化が消滅してしまうスピードも非常に早いと思います。もう少し情報が広がるスピードが遅ければ、それが消滅しつつある段階で、誰かがその大切さに気付けたかもしれません。しかし、今は大切さに気付くよりも前にあっという間に無形文化が消滅してしまうのです。

エドガーさん(左)と山下彩香さん(右)の打ち合わせの様子

エドガーさん(左)と山下彩香さん(右)の打ち合わせの様子

文化も生き物ですから、淘汰されていく無形文化があるのも当たり前です。しかし、誰かがその無形文化を大切にしていて、それを継承したいと思っているならば、残す手伝いをしたいと思うのです。

もちろん、私はその無形文化を継承する立場にいる人ではないので、それを先導して残していくわけにはいきませんが、現地の人の意思ありきで、その上で何らかの形でお手伝いをするのであれば、それは自然の流れを壊すことにはならないと思います。私が自然の流れを壊さず、かつ現地の人が単なる職人技を伝承するのではなく、文化の根底にある考え方や、文化の魂も伝承される方法でやっていきたいのです。

フェアトレードやエシカルとの違い

このように考えているため、EDAYAの商品開発はフェアトレードやエシカルを目的とした発想とは少し違う発想で行なっていると山下さんは言います。一番の違いは、「何を売るか」についての考え方。


バリンビンを演奏するエドガーさん

フェアトレードやエシカルな商品は、「先進国で売れるか」を判断基準にして、現地の素材や技術を使って商品を作っています。一方、EDAYAが商品開発を行うときに大切に考えているのは、無形文化の担い手である現地の人自身がやりたいと思う内容であること。それから技術を習い、それを使って商品を作る過程が、結果的に無形文化を継承することにつながること。そして、商品開発をする過程で、作り手が無形文化の継承に意識を向けられるもの。

もちろん、まったく売れないものを作っていたのでは、そもそも無形文化の継承者が生活できなくなって金鉱山に戻ってしまうので、調整は必要です。しかし、あくまでも主眼は「無形文化の継承」に置いた商品作りなのです。

無形文化を継承する時に動機になるものとしては、2つあると思います。1つは自分たちの内面から沸き起こる「自文化への誇り」のようなもの。そしてもう1つは外国などの「外からの評価」。

たとえば歌舞伎も、外国人が良いと言ってくれるから見直されたという側面は少なからずあると思います。「外からの評価」は、「自文化への誇り」に相乗効果をもたらして、文化を継承する動機になるのです。

EDAYAは現地の若者が「EDAYAで働いて無形文化に関わっていることがかっこいい」と思えるためにも、EDAYAが日本など海外の人からも理解されてかっこいと思われるようにしたいのです。

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たとえば、こちらのEDAYAのこの商品。竹の周りをぐるっと取り囲んでいるロープ状の模様は、実際にコーディリエラの伝統的なコーヒー採取によく使われている道具がモチーフで、楽器のモチーフにはサッガイプという平和の象徴の楽器が用いられています。

どちらも暮らしになじんだ道具であり、その暮らしの背景についてお客様にきちんと伝えようとしていくことは、制作する側にとっては自身の無形文化を深く知っていくことにつながります。と同時に、制作を通して竹という暮らしに根付いた材料の扱いを学んでいくこと自体が、その過程で無形文化を学ぶことにつながります。つまり、EDAYAでは、仕事が無形文化を継承につながる仕組みを考えているのです。

また山下さんは、現地で法人を設立することにもこだわっています。それは、いずれ山下さんなしで無形文化を継承し続けられるように、現地の人が主体的に行動できる環境を作っておきたいという想いから来ています。

フィリピン・コーディリエラのEDAYAを成功させた暁には、別の場所の無形文化の継承を助けていったり、ゆくゆくは世界中の無形文化に関わる人々をつなぐプラットフォームを作りたい。

と山下さんの夢は広がります。

EDAYAのアクセサリーは、厄除けのモチーフが使われていたり、幸運を運ぶサインとして親しまれているデザインが使われてたりと、メッセージ性があるものばかり。ニスを使って丁寧に仕上げ、金属部分も14金ゴールドフィルドを使用しているため錆びにくく、長く使えるそうです。皆さんも、EDAYAのアクセサリーを身に着けて、フィリピン・コーディリエラの無形文化継承をそっと手伝ってみませんか?

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