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「ブラストビート」松浦さん&「サンタのよめ」が大切にしてきた本とは?本を想いとともに引き継ぐ「Pass The Book―本の卒業式―」 [イベントレポート]

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みなさんは、大好きな物や思い入れのある物、長く連れ添ってきたものと別れるときに、“卒業する”という言葉を使った覚えはありませんか。それは手放すことへの寂しさよりも、新しい自分を受け入れる準備ができたというとても前向きな言葉ですよね。

今回の主役は“本”。もう読むことはないとわかっていても、大切にしていたものは捨てたり古本屋に持っていくのはとても偲びないもの。それを込められた想いとともに、顔の見える誰かに渡すことができたら…。

そんなアイデアからうまれたのが「Pass The Book−本の卒業式」です。“読者と新しいコミュニケーションをつくりたい”と考えていた英治出版と、greenz.jp編集長YOSHさんとの共同企画。毎回、素敵な活動をしているゲストを招き、その方が大切な一冊への想いを語ったあと、その本を参加者にお渡しして卒業するというイベントです。その第一回目の様子をお伝えします。

初回のゲストに招かれたのは、「ブラストビート」代表の松浦貴昌さんと、「サンタのよめ」代表のMakiさん、モデレーターはgreenz.jp編集長のYOSHさんです。日頃から親しい間柄の3人。まるで普段のおしゃべりをのぞいているようで、終始和やかなムードでイベントは進みます。

最初に本を紹介してくれたのは松浦さん。卒業するのは、Amazonでも販売していないという貴重な一冊でした。続くまきさんの本は、ベストセラーにもなったあの魔法の本です。

松浦貴昌さんと『セアロ108の言葉』

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松浦さん 僕は16歳からバンドマンをやっていました。ところが26歳のときに父の事業が失敗。長男の僕がビジネススクールに行き、27歳のときにマーケティングの会社を立ち上げます。2009年にはNPOブラストビートを立ち上げるのですが、その間にNGOのボランティアとしてカンボジアに行ったりもしました。そのきっかけになった本であり人が、セアロです。

セアロはミャンマーのお坊さんなんですが、もともとは日本人。ビジネススクールに通っているときにたまたま講話会に参加して、そこであるイベントに誘われたんです。カンボジアとミャンマーとスリランカの孤児院の子どもたちを日本に呼び、金沢で1週間寝泊りしてゼロからイベントを作るというものでした。

そこで僕は、子どもたちの純粋な心や笑顔に完全にあらわれてしまったんです。僕は人を信じられないところがあって、それまであまり人に心を開いてこなかった。でも、子どもたちと言葉が通じないながらも心を通わせようとしているうちに、心がほどけていったんです。自分の心を自分で感じられた瞬間というのが見つかった、衝撃的な経験でした。

この経験がなければカンボジアに行くこともNPOを作ることもなかったし、今こうやって皆さんの前で話をすることもなかったと思っています。

本の内容はセアロがよく言っていたことを108個書いてあるというシンプルなものです。実は、僕が話す言葉はここに書いてあることが多いので読まれたら恥ずかしい本でもあります。昔から何度も読んでいるので今では暗記をしていますが、つどつど開いてきました。でも、今回こういう機会をいただいたので、いよいよ他の方にお渡しする時期かなと思って持ってきました。

まきさんと『人生がときめく片付けの魔法』

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まきさん 買ったのは去年の6月くらいで、引越しをする前だったんですね。知人にすすめられて、手に取りました。

最初は適当に読んでいたんです。でも読むごとに「これ片付けの本じゃない!」と思えて。すごく人生にとって大切なこと、日本の禅的な精神を片付けというアウトプットで表現しているんです。自分が思い込んでいたものなどをはずすというプロセスを片づけを通してやる。本当にどんどんそぎ落としていくというような精神に、読みながら号泣したんですよ(笑)

私はモノを捨てられない方で、大切にしたいという気持ちでなんでも取っておいていました。でも、そうやって貯められていたものが目にも留めない部屋の片隅に置かれるというのを考えたときに「それって本当に大切にしているの?」と。そう考えると私って本当に気にもかけないものがいっぱいあるなって。なんて申し訳ないことをしているんだろうって。

泣きながら片づけをしました。本当に自分との対話なんですよ。自分が何でこれを残したいのかとか、そういう自分を見つめる作業が片付けの中にあるという魔法が紹介されています。自分の中ではだいぶ染み込んでいて、思い出せる、そのつど自分で振り返れるから。どなたかにお渡ししてぜひ実践していただきたいと思っています。

本は言葉やスピリットを受け継ぐもの

2人の本の紹介をふまえてのトークは、YOSHさんからの「自分が今まで本を受け取ってきたというような経験ってありますか?」との問いから、本を受け継ぐことの本質に。

まきさん 今自分が話している言葉や書いている言葉って、全部誰かの集まりでできていると思ったことがあって。家族や友達から教わったりとかして、私は今こういう風に話せる。それって実はすごい贈り物を受け取ってるなと。私が書いたり話したりすることは、自分が受け取ってきた物語とか言葉を、次の人に渡していくという行為なんだろうなとすごい思っています。

松浦さん まさしくそれが本だと思っていて。セアロが言った言葉もセアロ自身が生み出した言葉ではなくて、人間の心理や本質的なことを言っている。もっとさかのぼればブッダが言って、それを弟子が経典にしていたという話かもしれない。受け取って次に渡していく作業って、本の中にすごい含まれているなと。

お二人の話を受けて、英治出版の原田さんも。

言葉って本当にずっと過去から伝わってきたんだなっていうのは、まさに本当だなと。英治出版としても、著者のスピリットを伝えられたらいいなと思っていて。スピリットとかって目に見えないじゃないですか。だから目に見える形にしなくちゃいけないと思っていて。言葉でね。そういう風でしか伝わっていかないのかなと。

ここで前半が終了。この後は休憩を挟んで、いよいよ卒業式です。参加者は開始前に配られていた紙に、どちらの本が欲しいのかと、その本が欲しい理由を書いてかごに入れます。ゲストの二人には休憩中にそのメッセージを読んで、誰に受け継いでもらいたいかを決めていただきました。

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本を贈ることは本当に大切にしているからできること

コメントを読んで選ぶのは難しかったと二人。読んでいると「みんなに買ってあげます!」って言いたくなるのだとか。それでもなんとか選び、お二人から一人ずつに手渡されます。本と引き換えに感謝の言葉を受け取り、卒業を終えた今、どんなお気持ちなのでしょう。

松浦さん 清々しい!大切にしていた本をまたこうやって顔の見える方に贈られていくというのがこんな気持ちいいんだって。もっと名残惜しいのかなと思ってたんですけど、もらってもらってうれしいって感覚です。

まきさん 「卒業させていただきます」って声にしたことが気持ちよかった。「わたし、本当に卒業できる!」って思えたし、それを受け取ってくれる人がいるってうれしい。片付けをしながら「これで捨てちゃうんだな」というよりも、すごく気持ちいいし、さわやかな気持ちになりました。ぜひみんなにもやってもらいたいです。

“本当に本を大切にする”ということは、その受け取ったものを社会や誰かに受け渡していくことで、本当に大切なものだからこそ本棚で眠らせたままにするのではなく、誰かに読んでもらったほうが本も自分も嬉しいもの。そんな想いをみんなで共有したひとときでした。

次回の「Pass The Book」では誰がどんな本を卒業するのでしょう。ぜひみなさんにとっての”卒業できそうな本”も教えて下さい!

(Text: 杉本真奈美)