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Hub Tokyoのつくりかた – 槌屋詩野さん、片口美保子さん(後編)[インタビュー]

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このインタビューシリーズは、「あなたの暮らしと世界を変えるグッドアイデア」を実現して、よりよい未来を自らの手でつくりだしている方々へのインタビューをお届けします。
特集「a Piece of Social Innovation」は、日本中の”ソーシャルイノベーションのカケラたち”をご紹介するNPO法人ミラツクとの共同企画です。

こんにちは、greenz.jp発行人鈴木菜央です。

インタビュー前編中編に続いて、今回も、新世代型コワーキング・スペースであり、グローバル・ネットワークである「the HUB」の東京版を設立中の槌屋詩野さんと片口美保子さんにお話をお伺いします。

チームで作り上げるHub

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鈴木菜央(以下鈴木) こうして今、槌屋さんと片口さんが中心になって進めているHub Tokyo設立の動きなんですが、ここ半年くらい、10人以上の人が「Hub Tokyoを設立する」って言っていたのを聞いたんですが、どんなつながりで作っているんですか?

槌屋詩野(以下槌屋) HubづくりはHubらしさを追求しますから、最初は緩やかな自由奔放なネットワーク型でプロジェクトを進めていくんですけど、その温度で動いていくには限界があるんですよね。特に資金集めや会社設立の時期が来ると、そこの部分でグワッと統制を取らないといけない瞬間が来ましたね。その時に、どう意思決定するか、ということだと思います。

ものすごいいろんな人がHub Tokyoやりたいって言っていたのは私も聞いていて。やっぱり多くがアプリケーション(申込書)を提出する段階に行く時に、チームが崩壊してしまったりするんですよ。自由なネットワーク型が、一時的に独裁型に移行しないといけない瞬間が来るからです。でも、それはまたその時期を過ぎると元の自由さに戻るんですけど、多くの人達は勘違いして離れていくんです。私たちはチームメンバー全員が自分の活動にHubが必要だったので、合理的に考え、くじけずに頑張れたんですね。

もともとHubグローバルの承認プロセス自体が、とにかく大変。「なぜ東京にHubが必要なのか?」とか、「東京にHubはどんな価値を提供できるか?」とか、やたら書かなきゃならなくて。このプロセスがものすごく面倒で、だいたいその途中でドロップアウトする。かつ、その途中にビデオを作るっていうのもあって。

鈴木 すごいね。なんのビデオ?

槌屋 承認そのものプロセスが、すでにチームビルディングなんですよ。それを乗り越えることができたチームだけが残る。

鈴木 なるほど。たとえば、誰かが思いついて、「よしHub Tokyoやろう!」って思ってもダメで、チームをまず作らなきゃいけない。そのチームを作ることを進めていかないと答えられない課題がいっぱい出てくる、ということ?

槌屋 そうそう。そうなんです。

鈴木 へー!面白い!

土橋 ビデオでチームを紹介するんですか?

槌屋 チームを紹介するんじゃなくて、ビデオでプレゼンテーションをするんです。Hub Tokyoをやりたいと思っているチームが、「東京にあるHubは世界に何を提供できるか?」っていうことを伝えなきゃいけない。

深いことも考えなきゃいけないし、東京のマーケットもわかってなきゃいけないし、世界のグローバルな状況も理解していないと作れない。ビデオを撮影して編集する人も必要。なにをどう語るかという、言葉を考える人、ビジネスモデルを考える人、実際にソーシャルビジネスを行なっている人などなど、クリエイティブとかイノベーターとか思想系の人とかとにかく全部必要なんですよ。

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全員で手作りしたHub Viennaのキッチンアイランド。この小屋の中にキッチン以外のファシリティが詰まっている。外壁の文字は入居したアーティストが開店前にインスピレーションで描いた。

そんな人たちを揃えられているか?っていうことを、アプリケーションを提出する前からずーっと言われ続けました。「君はいいチーム持ってる?」「君はライト(適切な)チームがいる?」って。「これライトチームかどうかわかんないんだよねー」って相談すると、「いや、君はまだ足りない」って言われて。「もっとこういう人をチームに入れなさい」って。ずっとそのやり取り。そうしないと、面白いイノベーションが生まれる場所には絶対ならない。

そういう意味で私たちはものすごく初期から、戦略的にチームを組んで来ました。基本的に、イギリスに住んでいた私にはネットワークがなかったから、IT系のスタートアップの分野でやっている土屋尚史さんとか、江口晋太郎さんたちと一緒にやって来た。

でも二人には、ソーシャルアントレプレナーの老練の人たちとのネットワークが無かったりする。ここ30年くらいやっているような人達や、世界の市民社会の流れとか、草の根のNGOだったりとか、そういういろんな人たちとのネットワークは、一人だと絶対カバーできない。だけど、チームになれば出来る。

今までは、ソーシャルベンチャーのネットワークのなかには、あんまりシリコンバレー系のスタートアップのカルチャーとか、リーン・スタートアップ(小さく始め、すばやく修正する起業手法)のカルチャー、投資を受け入れるカルチャーは無かったと思うけど、でもそれらを繋げると、「なんだうまく行くじゃん」みたいのが見えてくる。それが、世界的に見て、Hubで起こっていること。

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Hub Madridのロッカースペース。ワインの箱で手作りされたスペース。メンバー達の心が詰まっている。

あとは東京では特に、アントレプレナー(起業家)とイントラプレナー(社内起業家)両方が必要。東京にはイントラプレナーたちが多いとわたしたちは思っていて、今回のHubのチームも、全部アントレプレナーとかフリーランスの人たちじゃなくて、イントラプレナーが多く関わっています。「自分たちの会社がなんでHubに協力しないのかよくわからない」って言いながら(笑)。

彼らは今、関わることに大きな価値を感じて、プロボノ的に関わってくれています。しかも、「プロボノを超える価値がある」ということを理解していて、それは「プロセスを理解する」ということ。その経験が、絶対会社でも役に立つ。

あといろんなメンターですね。そういったピースが揃わないと、前に進めないようになっている。

木村 設立前から、たくさんの人が関わってるんですね。

槌屋 そうですね。私たちが設立に向けた活動を始めたときに、Hubメルボルンの人から「君たちは今までの人生で会ったより、もっと多い人間に、この3〜4か月の間に会うよ」って言われた。実際その通りになりました。でもそうしないと、多分エコシステムって出来ない。そこにどれだけ投資できるかっていうのが、私たちには求められていました。

Hubをつくるプロセスは登山と似ている

鈴木 今までの話を聞いていて思ったことは、2つのことが重要なんだな、ということ。ひとつは、真ん中に、覚悟を決める数人がいてリスクを取る。既存の形で言う「起業する」に近い。その周りに、コミュニティとかネットワークがあって、ゆるくつながっている人たちの輪っていうのもすごく必要。それが両方揃わないと、物事が進まない。

Hubグローバルの視点で言うと、そういった構造が、各地のHUBの立ち上げに必要なんだっていうことを、経験的に学んでいって、それを体型だてて、アプリケーションのプロセスに落とし込んでいったんだろうね。

槌屋 そこまで美しいかわからないですけど(笑)、そうですね。

鈴木 いや、これはすごいことだなと思って。

槌屋 面白いですよ。Hubグローバルのチームが作り出したプロセスを見ながら、「すごく考えられてるな」って思いますね。

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Hub Viennaに入居するメンバー達。FacebookのLike!に近いものをアナログでやれるボード。顔の見えるつながりが大事。

鈴木 各地のHubファウンダーは、はじめに「やろう」と思って、みんなに話して、チームをつくり、みんなで意味を深く考えるところまでくぐり抜けてきたからこそ、Hubとして多くの人に場を提供して、多くの人がコミュニティをつくったり、自分を深めていくことに対して手助けができるってことだろうね。

槌屋 そうです。それに自信も付きますよね。

鈴木 自信があるから、良い場が作れる。

槌屋 平等なチームって無いんですよね。誰かがイニシアチブをとって、やりはじめないといけない臨界点に達するんですよね。その時、誰もが周りを見て、「うーんどうしようかな」って(笑)。全員がそうだと、どこにも進めない。それで、私たちが手を挙げたわけです。

鈴木 そうか。登山みたいなもんか。途中、ベースキャンプまではみんなわいわいして「楽しいよね〜」って行くんだけど、急に険しい状況が始まる。「ちょっと待ってこれ誰最初行く?」って言ってるうちに、「じゃ私行く」みたいな。

槌屋 そうそう!「すごい険しいよ~(笑)」とか言いながら登る。

鈴木 そうすると2番目に付いてくる奴がいて、「よし、みんな登ろうぜ!」みたいな。

槌屋 いやほんとそう。

鈴木 これは面白いね。よくできてるね本当に。

槌屋 でも、すごくクリティカル(危機的)だと思うのは、今日本の多くのソーシャルベンチャーって臨界点に達しているのに、リスクを取らないで周りを見ている人が多いから、次のステージに行けない、ということが多い。そこから先に広がっている、かなりシビアなビジネスの状況とかを超えると、もっといい製品やサービスになっているかもしれないのに、「ふわ〜」で終わってしまってる。すごくもったいない。

鈴木 ほんとにそうですね。

覚悟が決まったきっかけ

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Hubチューリッヒ(スイス)のもう一つの空間、イベントスペースとなっているメザニン階段。100人を収容し、深く思考するイベントも多数主催する。

槌屋 実は肝が座ったのは、今年2月に香港で行われたHubアジアサミットに参加してからなんです。3日間の、ものすごく集中的なワークショップで、片口と2人で行ったんですが、「あ、これはやばいな」と。Hubの立ち上げは、片手間ではできない。そこで会ったコファウンダーたちに苦労がにじみ出ている。でも、「その苦労の先にある、彼ら/彼女らが見えているだろう、穏やかさを見てみたい」と思ったんです。そこから物事がよく見えるようになりましたよね。

片口美保子(以下片口) すごく責任もあり、かつ可能性もあるというのがよく見えてきました。改めて気持ちがすごく楽になったところもあります。「私たちはこうあればいいんだ」っていうのが見えてきた。

槌屋 2人ともそうなんですけど、Hubをやりたかったわけじゃなくて。「Hubみたいなもの」をすでに考えていた。でもそれが、Hubの仕組みと本当にフィットするからHubに来たみたいな感じなんですね。

Hubグローバルの人たちに、私が過去10年間くらい、この東京の「ソーシャル」界隈の中にいながら感じていたことの蓄積を話、その積み上げとして「Hub」的なものの必要性を考え、実際にいくつか小さな実験をしたことを話すと、「あ、そんなに経験も考えもあるんだったらわかってるね」みたいな感じで、すっと理解してくれた。私たちが迷った道のりも、その行き着いた先がHubであることもすんなり理解してくれました。というのも、彼ら自身が各国で同じ道を辿ってきたからなんです。

鈴木 香港以外にはどんなところが集まったんですか?

槌屋 香港、バンコク、北京、台北、シンガポールですね。あとソウルがオープン準備中。ソウルは一年くらい前から物件を探している。物件探しに苦労するのが、ソウル、東京、シンガポールって言われています。アジアはやっぱり物価も高いし、物件の価値が伸びている。だからヨーロッパより、オープンが遅れがち。シンガポールとソウルのファウンダーは、どっちもだいたい20代前半くらいから30前後の若い子ですね。

鈴木 とにかく、アジアサミットで、覚悟が決まった!と。

槌屋 はい。そうです。

鈴木 決まっちゃえば、逆にやることもはっきりしてるし、あとは突っ走る、っていうこと?

槌屋 まあ、「素直にやればいいんだな〜」という感じ。最初に考えていたのと一緒だからいい勉強になりました。

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Hubチューリッヒは古い線路下の再開発地域にある。お洒落と倉庫街の入り交じったアーティストな地域。

鈴木 日本だと、みんな誰かが先に行くのを待ってる状況が生まれやすいよね。突然ものすごいリスクを取る人が現れると、みんなそこにどわーって付いて行くところがあると思う。もっと一人ひとりがリスクを取って面白いことを初めていくようになるといいね。

槌屋 海外を見ると、負けてらんないって思います。グローバルとか見ても、若いシンガポールの女の子がHubを始めていて。「あんなに若いのに!あの子これからどうすんだろ?」みたいな(笑)。負けてらんないですよね。私なんか「お前はHubファウンダーになるには遅すぎる」とか言われて。「くっそー!!」とか思うわけですよ(笑)。

日本だけで見ると、リスクを取る人が少なく見えるかもしれないけど、ちょっと垣根の向こうには、リスクを取っている人がいて。その人たちのやり方、失敗と成功を真似すれば、リスクはだいぶ軽減されるはずだから。きちんと情報さえ集めればいいだけ。

鈴木 単独でやろうとするから危険度が大きい。そうじゃなくて、自分の周りにどれだけ強いコミュニティを作るか。エコシステムを作った上で、やれば、成功確率はぐっと上がりますよね。

槌屋 ほんとそうですね。前に、Hub Tokyoのビジネスモデルを銀行に勤めた経験がある人に見せたときに「これはもう変動要因、変動素数が多すぎて僕にはもうお手上げ」って言われました。コミュニティがどこかも誰かも、コミュニティの数もその意味もよくわからない(笑)。

その変動要因を担保してくれてるのがチーム。自分一人だけじゃ絶対わからない領域があるけど、それを担保してくれる。ユニットで仕事していない人は、多分私たちの感覚はわからなくて、投資する気にもならないでしょうね。

鈴木 ならないですね(笑)。

槌屋 でも、多分、次の時代のビジネスは全部そうなんですよ。

鈴木 この不確実性がすごく高い社会で対処していくには、今までみたいな硬直したモデルなんて、作った瞬間に古くなるしね。アメーバみたいに、常に状況見ながら、変わっていく。どっちかっていうとアリ的なビジネスモデルが必要なのかも。今地球上で最も個体数が多い生き物はアリらしいんだけど、ある見方では、人間より種として成功しているとも言える。

槌屋 直線でピボットして行くんじゃなくって、どっちかっていうと「ぐわ~~~」って群衆のようにピボットしていくと、いつかどこかで収斂するでしょう、みたいな(笑)。

大切にしていることは「本能」と「感謝」

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槌屋さん

鈴木 このテーマは、非常に興味深いです。別の機会に、深めて話し合いたいですね。話を変えますが、仕事の上で大切にしていることは、なんですか?

槌屋 わたしは、「本能」ですね。本質をどう見極めるか。結構スタートアップの世界は、本質を瞬時に見極めないと失敗すると思うので。

鈴木 片口さんは?

片口 うーん、ありきたりかもしれないけど、「感謝の気持ち」かな。「すべてつながっているな」と思うんです。自然にHubに向かって行ってたのもそうで、紆余曲折して、今ここに来ているので、それはすべて感謝し続けています。「ご縁だなあ」って。

槌屋 完全に他力本願ですよね。「本能と感謝」(笑)。

片口 自分たちで全てをやろうとしてないです(笑)。

鈴木 「これからのビジネスの真髄は他力本願」。でもそうなんだよね。グリーンズでも、関わってくれた人たちが、どれだけ自分から動きたくなる状況を作るか、が極めて重要だと思っています。

槌屋 うん、そうじゃないと絶対スケールアウトしない。

鈴木 そう、スケールアウトしないんですよ。うちも株式会社だったんだけど、「こんなことやりたい、何千万必要です、投資してください」みたいな話はもう通用しない。だって無理なんだもん。お金を投資して、ちゃんとリターンを返していくみたいな話だと、巨大化していくしか出口がない。

それはもう考え方としてやめて、いかに濃密なエコシステムを作っていくか。その中でいろんなものがぐるぐる回る。信頼とか、友情とか、共感、学びとかね。そしてそれが、新しい社会の動きとか考え方とか次の社会の本質というカタチで外に出ていく。その中でお金のやり取りも発生するから、なんだかある程度の収入を得られる人があちこちにいる、みたいな。それがうちは理想的なカタチですね。

槌屋 うん。うちもそうかもしれない。

どんなHubにしたいか

土橋 Hub Tokyoがオープンした暁には、どういう人に来て欲しいですか?

槌屋 ソーシャルベンチャーだけで限定するつもりはまったくないです。これからサステナブルな事業、もしくは次世代を作り出す事業に足を踏み出そうとしている人、志と意味のある事業に足を踏み出そうとしている人全部なんですよね。

デザイナーとかクリエイター、アントレプレナー、学生で起業した人もそうだし、研究者とか、企業内のイントラプレナーにも来てほしいですね。

土橋 セレクトやスクリーニングはお二人が行うんですか?

槌屋 他にHubを切り盛りする人達(ホストと呼ばれる)が7,8人いて、そのチームと一緒にどういう基準でスクリーニングしていくかも決めます。2月に、フューチャーセンターの野村恭彦さんに手伝っていただいて、コミュニティ全体でコ・クリエーションのファシリテーションを行なってワークショップをしました。その時に「どういうHubにしたいか」みたいな話し合いをしたんですね。そのときのアウトプットも含めてどういう基準にするか、決定していきます。

鈴木 なるほど。

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片口さん

鈴木 あと、最後の質問なんですけど、「じゃあ二人はどうやって食ってくの」というか、大丈夫なの?(笑)

槌屋 それは私たちも心配してるんですけど(笑)。

片口 大丈夫かな~。

鈴木 いつごろまでは大丈夫、とか?

槌屋 それをここで言うと、それ以降誰かが養ってくれるのでしょうか…?(笑)正直、この間までは物件が決まらないと運営できないので、収入もないなあと焦っていましたね。

でも、次第にマーケティングもコミュニティとの対話も蓄積できてきて、だんだん事業性も見えてきた。行ける、という状態になってきましたね。捨てる神あれば、拾う神有りで、色んな人が助けてくださって、「不可能だよ」レベルから「これ、結構いけるんじゃない」レベルになってきました。ほんとに、「本能と感謝」です(笑)。

鈴木 「うちのじいちゃんの物件があってさあ」みたいな?

槌屋 ほんとそうだと思います。実は、現在交渉している物件も、オーナーさんがCSR等にも詳しい方で、Hubに理解を示してくださっているんです。そういうこともあって、実現可能性がどんどん高まってきてます。10月にはせめて始めたいと思っています。みんなの、協力次第です(笑)。

片口 お願いしまーす!!

強いソーシャルベンチャーを作りたい

槌屋 最後にもうひとつだけ。私たちが最終的にしたいことって、強いソーシャルベンチャーを作ることなんですね。それだけはっきりお伝えしたいなと思っています。「ソーシャルベンチャー」って単語も定義が曖昧なのですが、定義の議論をせず、ここでは敢えて曖昧なまま使いますけど。

たとえば世の中にある、自分がたまたま手にとった商品とかサービスが、実はソーシャルエンタープライズが作ったものだったとか、そういうことがあたりまえの世の中になってほしいと思っています。そのためには、ソーシャルエンタープライズに競争力が必要。投資もちゃんと必要だし、ビジネスモデルに対してナイーブじゃないアントレプレナーがちゃんと育たなきゃならない。

今そういう状態に日本はないので、そういう強いソーシャルベンチャーを育てるためには何が必要かなと考えていて、そのためのエコシステムをつくる・整えるっていうのが、私たちの一番やりたいことですね。

投資家たちが揃うこと、投資家たちがデューデリジェンス(投資適格かどうかを、法務、財務、ビジネス、人事、環境など観点から調査すること)をするときの知識が揃うっていうのもそうだし。

投資される側が、「なぜ投資をされないといけないか?」ということや、スケールアウトするモデルや、ビジネスモデルをどんなふうに強くしていく必要があるのか、どうやってリーン・スタートアップしてかないといけないかとか、全部わかっている状態になっている、言わば「インベストメントレディ(投資の受け入れ準備OK)」なソーシャルベンチャーが増えるというのが私たちのターゲットです。

第一歩は「ポップアップHub」の開催

鈴木 さて、今後の予定を聞かせてもらえますか?

槌屋 今、この事業を協働で行おうとしているパートナー会社と事業計画や物件については調整中で、その目処が7月中には見えると思っています。ハードインフラが整ってくるのが7〜8月ですね。

一方で、私たちが7月からやっていこうと思っているのが、ソフトインフラというか、人やコミュニティの側面で、ホスティングチームが中心になっていろんなところで開催する「ポップアップHub」を企画しています。場所は決定してないですけど、週1日、そこに来るとHubに会える。Hubを体験できる。

そのポップアップHubの思想バージョンみたいなものもやります。テーマのあるアントレプレナーが集まったり、情報共有したり、ちょっとしたセッションやったり。ちょっと深めのやつ。ものすごく抽象的なものもあれば、法人形態についてとかも。それは多分ソーシャルベンチャーたちがいろいろ悩んでることだと思うんですけど、そういう悩みも含めて、みんながちょっと話せてダイアログできるようなイベントですね。

もちろん、クラブイベントやアート、クリエイティブに寄ったイベントもやる予定です。今は映画祭の企画もしています。

Hubに興味がある方々で、何か自分でも貢献できると思う人は、ぜひポップアップHubに来てもらえるとうれしいですね。実際に顔が見えると「あ、やめよう」「あ、やろう」とかもあるかもしれないし(笑)。

鈴木 これは、Hub Tokyoのウェブサイト見ればいい?

槌屋 はい、告知すると思います。あとFacebookのHub Tokyoページで「いいね!」してもらえれば、多分FBでも告知していきます。

鈴木 グリーンズでも、Hub Tokyoの今後を追っかけていきたいと思っています。ぜひ、またお話を聞かせてください。ありがとうございました!

槌屋・片口 ありがとうございました!

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(左)槌屋詩野(つちや・しの)
社会イノベーター達が集う場「Hub Tokyo」のファウンディングチームのイニシエーターとして活動。株式会社Hub Tokyo代表。学生時代以降、日本とグローバルな市民社会の連携の場で活動。また、コンサルタントとして日系企業のソーシャル領域での新規事業開発や組織変革プロジェクトを数多く手がける。専門は途上国の社会起業事情(BOPビジネス)とソーシャルな事業をビジネス化すること。執筆は「MS.BOPの新興国ソーシャルビジネス最前線」「世界を変えるデザイン〜ものづくりには夢がある〜」(英治出版、監訳)など。

(右)片口美保子(かたぐち・みほこ)
「Hub Tokyo」のファウンディングチームにてオペレーションを担当。株式会社Hub Tokyo取締役。前職では外資系金融会社にて秘書職に従事。かたわらソーシャルベンチャーパートナーズ東京に所属、社会的な課題の解決に取り組む革新的な事業家や団体の支援に携わる。社会的事業や関わる現場の人と既存制度の乖離、企業の在り方に疑問を持ち、それらを繋ぐエコシステムやソーシャルファイナンスの育成を目指し活動中。