大企業に正攻法で声を届ける「株主提案」というソーシャルアクション [R水素アクションNOW]

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放っておけない社会のモンダイを見つけてしまったとき、微力な個人に一体何ができるのか?答えは百人百様ですが、そのひとつに、「そのモンダイを起こしている会社の株主になり、立場を変えて働きかける」というものがあります。

6月27日に開催された、東京電力株式会社の第88回定時株主総会。筆頭株主である東京都を代表する猪瀬直樹副知事の動向に注目が集まる中、原発問題をジブンゴトと考える個人のグループが、「株主提案」というアクションを起こしました。
※株主総会や採決の仕組みがわからない!という方は、文末をお読みください。

会場となった代々木第一体育館付近の路上

会場となった代々木第一体育館付近の路上

二項対立ではない対話を求めて株主に

エネルギーシフトを目指す有志の個人ネットワーク「脱原発・東電株主運動」は、1989年に福島第二原発3号機で起きた再循環ポンプ破損事故を契機に発足。東京電力が市民との対話を拒否したため、会社との対話を進める手段として、株主になって株主総会に参加することを選びました。

発足から2年後の1991年には、賛同者の持ち株数の合計が株主提案権獲得の条件である3万株に達し、以来、毎年議案を上程しています。株主提案者は、会場内の舞台近くに提案株主優先席に座り、そこから会場の参加者と出席役員に対して議案の趣旨説明を行います。

株主の一人である竹村氏は「原発推進か反対かの二項対立に拘泥している限りは解決できない。どこかで話し合い、理詰めで、理解し合いながら止めいこうとしてやってきた」と、アクションの本質を語ります。

27日の株主総会で可決された会社提案や東京都の提案はマスコミ報道でぜひチェックしてみてください。特に、会社提案で可決された役員人事で退任が決定した取締役の再就職先は要チェック!greenz.jpでは、「脱原発・東電株主運動」が上程した、エネルギーシフトのヒントが満載の5つの議案のサマリーを紹介します。(原文はこちら

エネルギーシフトのヒントが満載の5つの議案

送配電資産を売却して損害賠償を

我が社(注・東京電力のこと)は、膨大な額の損害賠償額を、電気料金の値上げや政府支援で賄おうとしています。ところが、我が社は損害賠償を行える資産にまだほとんど手をつけていません。具体的には、送電設備2兆円余、変電設備約8000億円、配電設備2兆円余など合計約5兆円です(平成23年度第3四半期報告書による)。

これらの資産を売却し、損害賠償にあてて、送配電設備を広く公共に解放することで、自ら独占状態を解消します。また、経営を悪化させるばかりに再処理をやめれば、1兆円近い使用済燃料再処理等積立金を賠償の支払いに活用することもできます。

被災者、作業員への責任を果たす

我が社は、地震による4号機燃料プール崩壊の不安や、二度と元へは戻れない絶望の中で暮らす被災者への賠償を速やかに行い、作業員の健康について生涯にわたる追跡調査を行い、被害が生じた場合は最大限の補償を行うべきです。

70km圏内の自治体と安全協定を

原発事故の影響は立地自治体だけではすみません。日本で原発防災重点区域30km圏内に住む人々は400万人以上ですが、放射線の影響は実際は30km圏内に留まりません。放射性物質は、広い範囲の陸地や海洋に飛び散っています。特に海洋汚染は今後どれだけ広がるのか予想もつきません。

柏崎刈羽に代替発電所を

新潟では、柏崎刈羽原発運転差止裁判が始まり、再稼働についての県民投票の請求運動が起きています。柏崎刈羽原発を廃炉にし、代替電源を提案します。

新たなビジネスチャンスを

原発事故の結果、多くの消費者が原発以外の電気を求めています。我が社以外の事業者から電気を購入する企業・自治体も増えています。再生可能エネルギーの全量買取制度がこの夏から始まり、太陽光、風力などによる電力販売に新規参入する企業も増えています。我が社も、経営危機を安易な電気料金の値上げに頼るのではなく、消費者が選択できる様々な電源メニューを用意して、新たなビジネスチャンスを広げるべきです。

4471人が参加。マスコミ各社も取材に詰めかけました

4471人が参加。マスコミ各社も取材に詰めかけました。

質問と議案で声を伝える

結果的には、5議案とも、東京都や個人株主の議案とともに否決されてしまいました。しかし、「脱原発・東電株主運動」代表の木村結さんは「私たちの議案や質問が多くの一般株主の耳に触れるし、こういうアクションの方法があると若い人たちに背中を見せられる」と、アドボカシー効果を見出しています。

事故の後、問い合わせや賛同者は激増しています。今年は、議案への賛同をお願いする書面の送付を10単位株(1000株)以上保有する方に限ったほど。

と木村さんが語るように、原子力発電と事実上の地域独占を軸とする電力会社の経営に社会的な疑問と関心が集まったことで、株主の意識にも変化が起きています。

東京電力株は、事故の前まで100株(1単位株)あたり6000円/年ほどの配当が受け取れる優良株だったため、親から子、子から孫へと相続され、気付いたら保有していたというケースも多いそう。また、驚くべきことに、「配当だけもらえれば満足」と考える株主が議決権を行使しなかった白票はすべて、会社提案は賛成でそれ以外には反対と、会社の都合のいいように処理されるのだとか。

最もシンプルかつ効果的に運動の実効性を高める方法。それは、一人でも多くの個人株主が権利に目覚め、地道に会社への影響力を行使していくことでしょう。株主の立場から意思表示を行おうとする個人が増えることもまた然り。ジブンゴトにしたい問題への「迫り方」が見つからないという方は、検討してみてはいかがでしょうか。

参考 : 株主総会と提案採決のしくみ

株主総会の3週間前、株主の元には、収支決算報告書と事業計画書とともに、大きなハガキサイズの「議決権行使書」が送られてきます。そこには、会社からの議案と株主からの議案の内容が書かれ、賛否を選択して返送するようになっています。インターネットでの採決も行われています。ここで表示された株主の意思により、議案の可否が決まるというしくみです。

今回は、14の議案のうち、会社が提案した4議案のみが可決。東京都の4議案、30000株を保有する個人株主の1議案、「脱原発・東電株主運動」の5議案は、すべて否決されました。議決権の10分の1以上の賛成があれば、次年度も提案を出すことができます。

総会後3ヶ月の間、集まった議決権行使書は株主に限り東京電力本店で見ることができます。「脱原発・東電株主運動」のメンバーは、何十万枚もある議決権行使書の中から、議案に賛同した人を3000人〜5000人ピックアップし、翌年の3月頃、取りまとめた議案書や共同提案者になることを依頼する手紙などを送付しています。この結果、今年は402名の共同提案というかたちで、5議案を上程していました。

議決権は持ち株数に応じて付与されます。東京電力の筆頭株主は東京都ですが、株の保有率は2.66%。続く2位が東京電力従業員持株会で保有率2.39%、上位10名のうち、3位以降の8名はすべて金融機関です。東京電力の株主についてはこちらからチェックしてみてくださいね。