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「ソーシャルアパートメント」から考える、集合して暮らすことの未来とは

socialapartment

2010年ごろから、都内を中心にシェアハウスの数が増加し、雑誌などメディアで取り上げられることも多くなりました。20代の人を中心に、モノ、スペース、そして時間を共有し、ともに暮らすというライフスタイルが広まりつつあります。

ソーシャルアパートメント(以下、SA)」は、入居者同士の交流を促進させるコンセプトのマンション。以前greenz.jpでも取材させていただきましたが、ソーシャルアパートメントはシェアハウスともまた少し違い、より多くの人がそこに暮らす場所。

今回はSAを運営するグローバルエージェンツ代表の山崎剛さんにインタビューを行いました。山崎さんのお話とSAの現在から、集合して住むことの未来について考えていきたいと思います。

socialapartment sitetop

 以前、greenz.jpが取材したときと比較して、SAの数もかなり多くなりました。

山崎さん 2009年と比べるとかなり物件も増えましたね。最近また宮前平や和光といった場所にも新しくオープンし、SAという暮らしに触れる方は増えてきています。

 今度オープンしたスペースにはこれまでの個室やラウンジスペースに加え、新しいスペースも備わっているそうですね。

山崎さん 新しくオープンした物件での新しい試みとしてライブラリという施設があり、そこで本などからの知識を共有したり、また仕事や勉強などにも使えるスペースとしてご活用頂けたらと思っています。

新しくオープンする物件は居入居者数も多く、SAとしても初めて100人を超える規模となっています。規模が大きいと、それだけ共有するスペースを広く持つことができ、その分ファシリティを充実させることができますから。

ソーシャルアパートメント山崎さん

グローバルエージェンツ代表の山崎さん

 そういったスケールメリットがあるかどうかというところに、シェアハウスとSAの違いがあるような気がします。実際にはどうなのでしょうか。

山崎さん そうですね。SAの長所にはスケールメリットをきかせられることがあります。このスケールメリットをきかせるということは私たちが事業を行なっていく際の基本の考え方のひとつとなっています。

ほかには、シェアハウスが広まってきたとはいえ、まだいろいろな事情があって、シェアするライフスタイルが実行できないという方は多いと思います。それは大家さんとの関係がうまくいかないことが多いことや、いきなり他人と住む上でプライベート空間は必須ということもあるためです。

SAはより多くの人にシェアするスタイルを体験していただくことも目的のひとつに置いて、事業を行なっています。

lounges

 SAの入居者がコミュニティを作っていけるように何か工夫されていることはあるのでしょうか。

山崎さん とても興味深いことなのですが、ある程度人数が集合して住むと、誰かがリーダー的な役割を担うようになり、コミュニティを盛り上げようとする人が現れます。彼ら、彼女らがSAを良い場所にしようと活動するようになります。

コミュニティには相対論のようなものがあって、自分が属しているグループ、もしくはコミュニティの中で自然と役割ができてくるのだと思います。ですので、私たちはコミュニケーションボードや居住者専用SNSなど、インフラ整備にとどめています。

 お話を伺っていると、SAに住む人たちが自治しようという意識が生まれているように思います。シェアハウスのように、すべてを自分たちで行う環境であれば、自治意識も芽生えやすいと思うのですが、SAのように、清掃やゴミ捨てを業者がやってくれる環境でもそういった意識が生まれるというのが意外でした。

山崎さん 規模が大きいスペースですので、清掃は外注にしています。ある程度のルールをこちらでつくり、トラブルの原因になりやすいものはなくし、コミュニティの障害にならないようにしています。

 運営側の行なっていることは、小さな行政のような印象を受けますね。

山崎さん 私たちの考え方の基本のひとつであるスケールメリットをきかせることで、こうしたことが可能になります。家賃に上乗せされている管理費が税金のようなものとなり、行政サービスのように清掃などのサービスを受けられるようになります。

 そういった仕組みが可視化されたら、行政への理解なども進みそうです。

山崎さん そうかもしれませんね。SAはシェアハウスと小さな行政との間にあるような位置づけだと思います。シェアハウスなどよりも、自治という範囲は低くなるかもしれませんが、共有空間に対する意識は高くなるので、みんなが使う場所というだから汚さないようにしよう、といった意識を持ちやすくなると思っています。

コミュニティのネットワーク

CommunityPhoto5

 色々なSAがありますが、それらの横のつながりなどはあるのでしょうか。

山崎さん 各SAを回るバスツアーを企画して行ったりもしていて、横のつながりも少しずつできています。今年も暖かい季節になってきましたので、来月は田園都市線の物件合同でバーベキューイベントを行うという話も聞いています。

それぞれのSAに個性を持ったコミュニティが生まれており、オフラインの場だけではなく、ウェブ上にもSAのコミュニティが生まれてきています。これは住を基点とした村のようになっていて、次の段階ではこれをつなげていきたいなと思っています。

この村たちが、さらにそれぞれ繋がっていくことによって、どこかの村に住めば、ほかの村の入居者とも交流ができるというこれまでとは少しことなった新しいネットワークをつくっていきたいというのが、基本的なSAの考え方になります。

 コミュニティが生まれ、そのコミュニティがそれぞれを認め合い、交流を生んでいくことで、コミュニティの多様性を受け入れていく文化ができていくといいですね。

集合して住むことの未来

SA room

 普通のマンションでは、「交流してもいい」という空気がつくられていないですよね。その点、SAはそこに住んでいる人が「交流していい」という前提で入居しているため、コミュニティが生まれやすくなっているのでしょうね。

山崎さん 交流を生みだし、コミュニティとなっていくうえで、完全に家の中でもないけれど、外というわけでもない、そういったセミパブリックな感覚がこれから大切になってくると思います。

 そうしたセミパブリックな空間があることで、どういった人が同じ建物内に住んでいるのかがわかり、安心感も生まれそうですね。SAが考える未来の集合住宅のあり方のビジョンなどはあるのでしょうか。

山崎さん 私は戦前の長屋に住んでいた時代という暮らし方が好きだったりします。戦後、共同住宅のあり方などを経て、今ではワンルームなどが中心になってしまっています。

今は隣に暮らしている人がだれかもわからなくなってしまっていて、セキュリティに過剰依存してしまっています。近隣に対しても不安を煽るようなことを供給サイドもしてしまっており、近隣同士であるのに、お互いに気まずい状態になってしまっています。

住居は一日のうちの半分を過ごす場所です。せっかくならそこでの暮らしをもっと豊かなものにしたい。そのために、いろいろな人と交流でき、様々な話を聞くことができるような環境を提供したいと思って、SAを運営しています。

若い世代の人が住んでいるところが、SAを建てる対象になっていくので、東京など都市だけでなく、様々な場所にSAを広めていきたいと考えています。地理的なものだけでなく、世代の広がりもつくっていきたいと思っています。ここの垣根を崩していくことが持続可能な社会を作っていくためには必要なことだと思いますから。

今後も若者の「住」を基点としたコミュニティを増やしていきたいと思います。

(インタビュー終わり)


2012年4月にオープンしたばかりのソーシャルアパートメント宮前平では現在内覧会を開催中だそうです。麻布十番にも新しくオープンし、次々と新しい物件をオープンしているSA。21世紀の集合住宅のスタイルを提案していってもらいたいと思います。

ソーシャルアパートメントについて調べてみよう。