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自分が幸せなことが世界を幸せにする!運命のネクタイで幸せの輪を結ぶ「Tie For Change」[マイプロSHOWCASE]

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元ホームレス野武士の抱夢FULL』というブログがあります。この方は元路上生活者として「THE BIG ISSUE」で冊子を売って生計を立てていましたが、今では夢があるそう。

それは「みんなが集まれる居場所をつくること」。若い頃は苦手だったコミュニケーションのとり方を学び、それを活かして夢を叶えたい、とブログに綴っています。

このブログを教えてくれたのは、森本宏美さん。以前もご紹介しましたが、森本さんが代表を務めるの「Tie for Change」(以下、TFC)は、ネクタイを通じてホームレスの就労支援を行なっています。



Tie for Changeについておさらい!

TFCは家庭に眠る使われなくなったネクタイを回収しており、最近寄付本数が1万本を突破しました。家庭に眠っているなかなかいい保存状態のネクタイを、そのままリサイクルまたはリメイクして販売します。その収益がBIG ISSUEまたはTFCで行う就労支援プログラムを通じて、ホームレスの方々の収入になります。

国際協力から国内協力

大学在学時に半年間ジンバブエのNGOで村落開発を行い、卒業後には民間の教育機関で教師として働き始めたという森本さん。学校に通いながら開発学を学び、またイギリスに留学して修士号を取得。その後、ナミビア共和国のUNESCOとUNICEFで教育インターンとして「南部アフリカのための持続可能な開発のための教育」の国際会議の運営などを行いました。

国際協力バックグラウンドを持っている森本さんがなぜ、日本国内のホームレス支援に乗り出したのでしょうか?TFCを始めるにいたった経緯について伺いました。

ナミビアのUNICEFで働いていたとき、おそらく日本のODAの事業だったと思うのですが、小学校にコンピュータールームができたんですよ。その落成式は、政府関係者なども呼ばれて大々的に行われたのですが、日本の代表の人のスピーチがありました。それが本当に残念なものだったんです。

まずスーツが似合っていないということもありましたし、スピーチの仕方が何よりもったいなかった。ずっと紙を読み上げるばかりで、話し方に抑揚もなく…。来ていた子どもたちがどんどんテンション下がっていくのが見て取れました。そしてしまいには友だちとおしゃべりを始めたりしてしまいました。でもその後話してみると、その方はとても素敵な方だったんですね。

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Tie for Change代表の森本宏美さん

その数日後、別の国がナミビアに中古パソコンを数十台寄付した、というのが大々的に報じられたそう。どう考えても、日本の方が草の根的に行う支援の質も、かけている金額も多いのに、日本のそうした貢献はあまり報じられない。もちろん政府の方針の違いもあるかもしれませんが、国際社会において伝え方や見せ方の部分で、日本人は損しているのではないか、という想いが湧き上がったと言います。

そこで、2007年6月に帰国後にコーチングと国際イメージコンサルティングを学び、そのスキルがTFCの活動につながってゆきます。

帰国後たまたまBIG ISSUEに関わっている友人から、「ホームレスの方々がせっかく仕事を見つけても、馴染めなくて帰ってきちゃう人も多いんだよね」という話を聞きました。そのとき、「馴染めない」というのは、コミュニケーション力を鍛えることで解消できると思ったんですよ。

なぜ、ホームレスになったのかという理由は人それぞれあると思いますが、人と縁が切れてしまってホームレスになっている方も少なくないはず。そもそもコミュニケーションが苦手で、頼れる人がいなかった、ということもあると思うんです。

そこで身なりやマナーなどの身のこなしなど、自分のイメージを整えることで「私はここにいて大丈夫」という自信がもてます。そして周りからも「あの人は変わってる」という目で見られなくなりますので、お互いになじみやすくなるんです。

「楽しい」が明日の活力になる「タイ・カフェ」

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処分に困るネクタイを整理できてすっきりした奥さま、安価かつ似合うネクタイを楽しく新調できる働く男性、めぐりめぐって社会復帰を果たすホームレスの方々…とTFCの取り組みは関わる人みんなをハッピーにします。しかしモノの循環だけで人にハッピーのバトンを渡して終わり、ということにとどまりません。

そのひとつが定期的に都内で対面式のネクタイお見立て販売イベント「タイ・カフェ」。その運営にあたって、森本さんが何よりも心をくだくのは「楽しい」ということ。

タイ・カフェでは、まず平積みされた1,000本ものネクタイの中から、女子たちがお似合いのネクタイを数十本選んでくれます。そして、首に巻いてもらったり、当ててみたりしながら、徐々に候補を絞込み、最終的に誰もが納得する「運命のネクタイ」が選ばれる…という流れです。

TFCスタッフの女子たち複数名がお客さん一人につきっきりでわいわいしながら進めるので、その女子に取り囲まれて盛り上がる様子たるや、まさにキャバクラ状態、と森本さんは言います。

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ぴったりのネクタイを選ぶにあたって、その男性のことを知らなければちゃんと選べません。どういう人と会う仕事なのか?どういう場所に行くことが多いのか?周りにはどういう人がいるのか?ファッションとはコミュニケーションの手段ですが、特にビジネスの場においては、主張すべき「個」とは、そのビジネスセクターの文脈に沿ったものでなくてはなりません。

そのため、女性スタッフはお客さん一人ひとりに色々な質問を投げかけます。そして人となりと生活を考えに含めながら、徐々に選択肢を削っていきます。最後に残るのは「運命」というほど似合うものになるそう。ネクタイ1本でそんなに変わるの?と思いますが、森本さんは言います。

これだ、という1本をつけた瞬間、本当にみるみる男性がかっこよくなるんですよ。目から鱗の感動体験です。

その流れの中では、スタッフとお客さんは必然的に活発に会話することになりますが、そこはまさに、双方に承認体験が生まれる場となります。

お客さんにとっては、自分の話を聞いてもらえる、そしてそれに対して反応がある、という楽しさがあります。そして女性スタッフにとっては、自分たちが選んだネクタイで、目の前の男性が素敵に変わる、という体験があります。コミュニケーションを経て互いに反応があると、それはやっぱり、何もないコミュニケーションより何倍も楽しいですね。

ネクタイでつなげるコミュニケーションの輪

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寄付されるネクタイの仕分け・解体を行なっているのがホームレスの方々。これまでは森本さん自身が行なっていましたが、ホームレスの就業支援のための機会をつくるために、昨年からネクタイの解体や縫製作業のほか、簡単な表計算や書類作成のスタッフとして雇用しています。

実際に一緒に働いても思いましたが、やはり職歴の浅い方ほど、コミュニケーションが苦手な方が多いです。基本的なことはできるのですが、うまく会話がキャッチボールにならなかったり、一言が相手の気分を害したりなど、職場の人間関係に大切な何気ない会話が難しかったり。外見部分だけでなく、そうしたコミュニケーション力もプログラムを通じて今後も指導していきたいと思っています。

このプログラムも4回目を終えましたが、人といっしょに働くっていいよね、って思って言ってくれるのがすごく嬉しいですね。

「自分自身が幸せなことが世界を幸せにする」

TFCの事業は、リサイクル事業によるゴミの削減というところから、社会的弱者のための仕事づくりと就業支援、など、さまざまな社会的課題の解決に貢献しています。しかし、そのどれか1つの問題解決に焦点を当てることが目的ではありません。

と、森本さんは説明します。

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TFCでは、プログラム全体を通じて「自己価値の低さ」を高めることを目指しています。一人ひとりが世界を構成している。だからこそ「あなたが幸せなことが、世界を救う」という想いが根底にあるんです。

ホームレスの方々にとっても、運命のネクタイを選ぶタイ・カフェの参加者も、そこにいる人たちが楽しそうに輝いているのは、とどのつまり、「自分の存在を認めてもらいたい」という誰もが共通して持っている欲求を満たしているからなのでしょう。コミュニケーションを生むTFCの一本一本のネクタイは、お互いのあり方を尊重し、他者との結びつきを生むネクタイなのです。

冒頭のホームレスの方の夢「みんながいられる場所をつくる」というのは、人の縁が切れてしまったホームレスを再び人の縁に結びつけることにつながるでしょう。そのことに、人は一人では幸せになれないんだな、ということを感じます。

自分のあり方を肯定されるという感覚は、人を前向きにします。そうした前向きな一歩が積み重なれば、身近な世界からめぐりめぐって世界の反対側まで幸せの輪を広げる日が来るかもしれません。

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