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教育×”映画づくり”!大人たちが南三陸町の子どもたちに伝えたかったこととは?

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映画制作が、小学校教育の現場に取り入れられることは日本ではまだほとんどありません。海外では、子どもの協調性や創造力の育成に活用されている国がありますが、日本では川崎市などの一部の小学校で行われているくらいです。

ところが今回、宮城県南三陸町の伊里前小学校で、子どもたちが映画づくりに挑戦する試みが行われました。

周囲の反対を押し切ってこの実現を強く願ったのは、同校の校長先生でした。3月の震災で被害にあい両親を亡くした子もいる23名の生徒に、映画づくりを通してさまざま生き方があることを知り、人との出会いやその楽しさを知ってほしいと考えたのです。これが映画監督の冨樫森さんの思いと一致し、この秋、山形県庄内での映画制作が実現しました。


山形県庄内と南三陸町の絆から生まれた機会

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震災の直後、多大な被害を受けた南三陸町には、山形県庄内町の人々が早朝からおにぎりを持って駆け付けたと言います。このことがきっかけになり、両町の交流は深まって伊里前小学校では6年生の修学旅行で庄内を訪れることになりました。

山形といえば、ドキュメンタリー映画祭や映画村など映画の活動が盛んな場所。そこで校長先生が望んだのは、単に庄内を訪れるだけでなく、子どもたちに映画づくりを体験してほしいということ。もともと自身も映画が好きだったこともあり、映画づくりを通して仲間の大切さや、さまざまな生き方があることを知ってほしいと考えたのです。ところが「映画=娯楽」のイメージがいまだ強い学校関係者の中では反対の声も多かったと言います。

それに協力したのが、映画『星に願いを』『あの空をおぼえてる』を手がけた冨樫森監督です。監督自身、金沢の映画教室で子どもたちに映画を教えた経験から、被災地の子供たちに映画づくりの機会をつくれないかと考えていました。その冨樫監督に、今回の取り組みへの思いを伺いました。

日本では、まだまだ映画を教育に使う試みが少ないですね。国立の東京芸大でさえ、ようやく映画専攻が大学院にできたのが、つい6年ほど前です。ただ今回はどちらかというと、子どもたちに、色々なことを忘れて一つのことに没頭する楽しみを感じてもらえたらと思ったんです。

冨樫監督、庄内町、南三陸町、伊里前小学校、庄内映画村、東京の映画24区という映画の学校、東北芸術工科大学の協働で、このプロジェクトは動き始めます。


映画づくりを通して彼らが学んだものとは?

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このプロジェクトで一貫して優先されたのは、子どもたちの自主性を重視すること。大人はなるべく口出しをしない、手出しをしない、という方針で進められました。

庄内映画村のスタッフ、東北芸術工科大学の学生が機材と共にボランティアで加わり、映画24区の卒業生も8名が参加。23名の子どもたちは、それぞれドラマかドキュメンタリーを選び4つのチームに分かれて、まず基礎的なことを学びます。

その後、修学旅行の一日を使ってロケハンを実施。さらに10月8~11日の3日半で撮影、編集、ポスター制作までを行い、初めての映画づくりに挑戦しました。

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ところが、小学6年生の子どもにとって、映画をつくることは想像以上に大変なものでした。今回のプロジェクトに、学校側のリクエストで出されたテーマは「絆」。短い制作期間でこのテーマを感じさせるプロットを考え、撮影、編集までを行わなければなりません。

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映画づくりには想像力やコミュニケーション能力やいろんなものが求められます。ただ歌ったり、踊ったりする行為とは違って、その工程が複雑です。今自分たちがつくっているものが、最後どんな形の映像になるのか見えなかったり。うまくいくチームもあれば、リーダーシップをとれる子がいないチームは最後までなかなか難しかった。

と、監督。それでも、プロジェクトの終結点として、作られた映像は今年行われた山形ドキュメンタリー映画祭で上映することが決まっていました。どうしてもうまくいかないチームに、監督は最後「こういうシーンを入れよう」と提案したと言います。

自主性を生かすのが今回の方針だったので、直接指示を出すことには葛藤がありました。ただ何年後かに彼らが映画を見直す機会があったら、その時の彼らに、何かが伝わればと考えたんです。

監督が彼らに伝えたかったのは、映画づくりだけでなく、これだけ映画に一生懸命打ち込む大人の姿でもありました。
そうして試行錯誤した末、子どもたちはなんとか無事に4本の作品を作り終えます。

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3月に大きな被害を受けたとは思えないほど、表向きは元気な子どもたち。そんな彼らに、監督やスタッフは一貫してふつうの子どもと同じように接してきました。その内面は計り知れませんが、撮影風景からは、笑ったり怒ったり疲れていたり、という子どもたちの活き活きした表情が伝わってきます。今回の映画づくりは、彼らにとってどんな体験となったのでしょう?

映画をつくるのはなかなか大変なことなんで、やらされてる~って子もいましたが(苦笑)、最後編集作業に夢中になっていた女の子が「ああ、この時間が終わらなけれいいのに…」ってつぶやいたんですよ。

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そのひとことは、彼らが夢中になって何かを創り出す楽しみを味わった証であり、大人たちへの贈り物のようでもあります。

楽しくも苦しくもあった今回の取り組みは、彼らの2011年の新たな1ページになり、これからの糧になるに違いありません。

冨樫森監督プロフィール