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CO2を海藻に食べさせて、残ったガスはリユース水素に!? 下水から生まれるリユース・エネルギーとは? [R水素アクションNOW]

下水処理場から出るガスを脱炭素化して再利用する試みに、沖縄ガスと琉球大学のチームがチャレンジしています。

元祖エネルギーシフターが注目する地域の埋蔵エネルギー

沖縄ガスは、那覇市周辺と琉球大学のある西原地区の6万世帯に、パイプラインによる都市ガス供給を行うローカル・エネルギー・カンパニー。2011年4月に新エネルギー開発部を新設し、激変が続くエネルギービジネス環境を見越したサステナブルなエネルギー供給システムを開発しています。

同社の創業者湧川善三郎氏は戦後、緑豊かなやんばるの森が失われていくことや、黒煙による大気汚染に心を痛め、薪からガスへのエネルギーシフトを実現させたという”エネルギーシフター”の草分け。新エネルギー開発部長の大城邦夫氏は、「地域の人と自然のためになるエネルギーを提供することが沖縄ガスのDNA。環境問題が深刻化した今、新しいエネルギーの研究開発を進め、提案する責務がある」と意気込みを語ります。

その沖縄ガスが目をつけているのが、県内17ヵ所にある下水処理場(浄化センター)。下水の処理過程で出る「消化ガス」と呼ばれる可燃性ガスには、都市ガスと同じ成分であるメタンガスが60%含まれています。これを有効活用するアイデアは、国土交通省から全国の下水処理場に通達され、各地で実用化されています。既存の例では、消化ガスを施設内で再利用してきましたが、同社はこれをパイプラインで外に運び出し、ボイラーの代替燃料として販売することで事業化を図っています。

ところが、消化ガスはメタンガス以外の約40%は二酸化炭素であるため、燃焼させたり純度の高いメタンガスに精製する過程で二酸化炭素を排出してしまいます。

埋蔵エネルギーに含まれる二酸化炭素を生かす方法

これを海藻に食べさせれば、海藻はぐんぐん育ち、二酸化炭素もなくなって一石二鳥!というアイデアを持つのが、琉球大学工学部機械システム工学科の瀬名波出(せなは いずる)准教授。このアイデアは、2008年度の経済産業省「低炭素社会に向けた技術シーズ発掘・社会システム実証モデル事業」に採択・実施されました。二酸化炭素を溶かした水でアオノリを育てる実用化規模の実証実験を行い、成長スピードが2倍に加速するという結果を得たというからオドロキです。

CO2で海藻の生育を加速させる実証実験を、「低炭素社会に向けた技術シーズ発掘・社会システム実証モデル事業」として行った

CO2で海藻の生育を加速させる実証実験を、「低炭素社会に向けた技術シーズ発掘・社会システム実証モデル事業」として行った

「しかも、海藻には水の浄化作用があり、二酸化炭素を吸ってくれるだけでなく水もきれいになります。消化ガスから、二酸化炭素を分離して残ったメタンガスはエネルギーとして利用。分離した二酸化炭素を海水に吸収させて海藻を育て、きれいになった海水から塩を採取する、というシステムも考えられます。ばらばらに存在しているパーツを組み合わせることで、下水から、エネルギー・CO2削減・海藻・塩 という4つの価値が生み出せるのです。」

消化ガスを充満させた中に水を噴射すると、メタンガスの30倍水に溶けやすい二酸化炭素が先行して溶けるため、気体は純度の高いメタンガスになる

消化ガスを充満させた中に水を噴射すると、メタンガスの30倍水に溶けやすい二酸化炭素が先行して溶けるため、気体は純度の高いメタンガスになる

瀬名波准教授によれば、「あるシステムからムリ・ムラ・ムダを省くと、個々の要素が他を補うように構築されていき、自ずと地球の生態系のありように近づいていく」のだとか。真に持続可能なエネルギー供給システムとは、地球が46億年かけてつくりあげた生態系のように、多様な要素が互いにつながりあい支え補い合うものなのかもしれません。 

現在、さまざまな海藻を使ったラボサイズの研究が進行中

現在、さまざまな海藻を使ったラボサイズの研究が進行中

リユースメタンからR(リユース)水素が取り出し地産地消電源に

沖縄ガスは、商品開発の第一段階としては消化ガスをそのまま燃焼させる方針。(消化ガスはカーボンニュートラル(※1)なバイオマスに該当するので、そのまま燃やしても温暖化を加速させないため。)第二段階として、瀬名波准教授との共同開発で”リユース・ノーカーボン・メタンガス”の精製にチャレンジし、最終的にはできたメタンガスの燃料電池利用も考えているとのこと。「メタンガス(CH4)は、燃やして暖房や温水にするという利用方法の他に、水素(H2)を取り出し、燃料電池を使って発電に利用するという利用方法があります。この方法は変換効率が高いのが特長で、熊本県の熊本北部浄化センターでは、消化ガスを使って100kWの燃料電池4台を動かし、同センターでの年間消費電力の約半分に相当する年間300万kWhを賄っているようです。」

琉球大学工学部のラボに沖縄ガスのガスタンク。産学が手を取り合って未来のエネルギーをクリエイト中!

琉球大学工学部のラボに沖縄ガスのガスタンク。産学が手を取り合って未来のエネルギーをクリエイト中!

燃料電池は、家庭用の小型(750W、1kWの2種類)のものが「エネファーム」という商標ですでに13000台普及しているほか、ノートパソコン用の小型バッテリーとしても実用化が期待されています。水素と酸素の化学反応で電流を生み出す燃料電池のエネルギー源は、水素。この水素を、地域の下水処理場にすでにある消化ガスから取り出して有効活用するR(リユース)水素モデルは、地域循環型のサステナブルなエネルギーのひとつのかたちとなるでしょう。

沖縄ガスと琉球大学の取り組みに、今後も要注目です!

沖縄ガスはエネファームを販売中

沖縄ガスはエネファームを販売中

※1 カーボンニュートラル : バイオマスは、生物が光合成によって生成した有機物であり、バイオマスを燃焼すること等により放出される二酸化炭素は、生物の成長過程で光合成により大気中から吸収した二酸化炭素であることから、バイオマスは、ライフサイクルの中では大気中の二酸化炭素を増加させない。この特性を称して「カーボンニュートラル」という。(農林水産省Webサイトより)