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「いい会社をふやしましょう!」鎌倉投信が実践する“まごころ投資”とは?

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「鎌倉投信」という会社をご存知ですか?

もしあなたが、投資や金融商品に対して少しでも”怖い“という感情を持っているのなら、ぜひ知ってほしい会社です。

いい会社をふやしましょう!

を合い言葉に、独自の基準で設計した投資信託の運用・販売を行う独立系投信会社「鎌倉投信」は、これまでの運用会社とどう違うのでしょうか? その概要をご紹介します。

鎌倉投信とは?

鎌倉投信は、神奈川県鎌倉市に拠点を置く、常勤社員8名という小さな独立系投信会社です。参入障壁が非常に高いと言われる金融業界ですが、元々外資系金融機関で共に働いていた仲間4人で資本金の多くを自己資金でまかない、2008年11月に設立。2010年3月より、『結い 2101(ゆい にいいちぜろいち)』という、たったひとつの投資信託商品を運用・販売しています。

オフィスは鎌倉にひっそりとたたずむ築80年の日本家屋!

オフィスは鎌倉にひっそりとたたずむ築80年の日本家屋!

会社のスローガンは、

100年個人投資家に支持される長寿投信を目指し、
300年社会に貢献する企業を支援し、
1000年続く持続的な社会を育みます。

短期的な利益を追求する金融商品が多い中で、独自の視点で選んだ企業への長期投資にこだわりを持つ運用姿勢が今、受益者(投信の保有者)のみならず、社会から広く注目を集めているのです。

“いい会社”に投資する『結い 2101』

この会社の志が最も良く現れているのが、鎌倉投信が販売する唯一の商品『結い 2101』です。これは、これからの社会にほんとうに必要とされる会社、ファンとなって応援したくなるようないい会社に投資する投資信託。

いい会社が増えれば、社会に様々な価値が創造され、雇用が生まれ、その会社に関わる多くの人の幸福感も拡がります。

という考え方から、短期的な利益追求や株価を追い求めるのではなく、本当に日本社会にとって必要な会社を独自の基準で選定して投資を行っています。では、鎌倉投信の考える「いい会社」とはどんな会社なのでしょうか。

・これからの日本に必要とされる企業
・社員とその家族、取引先、顧客・消費者、地域社会、自然・環境、株主等を大切にし、持続的で豊かな社会を醸成できる企業

といった条件と共に、鎌倉投信では以下の3つのテーマを掲げています。
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人、共生、匠。ホームページにはこれらの視点を軸に投資先企業の紹介を掲載しています。企業の基本的な経営理念から事業内容の紹介、さらにはなぜこの会社を選んだかという考え方も記されており、一つひとつの企業との出会いを大切にする鎌倉投信の姿勢を見て取ることができます。

ホームページに掲載されている投資先企業の詳細情報

ホームページに掲載されている投資先企業の詳細情報

現在の投資先は31社。誰もが知っている大手企業から、地方に古くから根付いている中小企業まで幅広い業種が並びますが、そこにはやはりどこか、共通する経営姿勢を感じ取ることができます。鎌倉投信は、最終的には100社に投資することを目指して、今も全国に“いい会社”を探し続けています。

個人投資家と投資先企業が顔の見える関係でつながる仕組み

そして、鎌倉投信のもうひとつの大きな特徴は、個人投資家の方と投資先企業が顔の見える関係性でつながっていること。投資家(受益者)の大切なお金をお預かりして運用を行う投信会社にとって、欠かせないのが投資家の方との信頼関係です。鎌倉投信では、年に1回運用報告を行う「受益者総会」を開催し、投資家とコミュニケーションをとる機会を設けています。丸一日かけて開かれる受益者総会の場には、投資先企業の社長も参加し、投資家と言葉を交わすこともあるそうです。また、年に3回ほど投資先企業へ投資家と訪問を行い、投資家に直接自分の目で現場を見てもらうようにしています。

企業と顔の見える関係でつながることができるなんて、これまでの投信商品では考えられなかったこと。これを可能にしたのは、鎌倉投信が販売会社を持たず、自ら販売を行う投信会社であることと、「企業の方針が大きく変わらない限りずっと投資を行う」という長期投資の姿勢を持っていること。このような風通しの良いコミュニケーションで、企業とも投資家とも、長く継続する信頼関係を築き上げているのです。

「きっかけは一冊の本との出会いから……」
資産運用部長・新井和宏さんインタビュー

これまでの投資信託のイメージを変えてしまいそうな鎌倉投信の取り組み。その設立にはどんな背景があったのでしょうか。取締役で資産運用部長の新井和宏さんにお話を聞きました。

取締役で資産運用部長の新井 和宏さん

取締役で資産運用部長の新井 和宏さん

創業メンバー4名は前の職場の外資系運用会社の同僚でした。それぞれ会社を辞めたタイミングは違ったんですが、僕自身は身体を悪くしたことがきっかけで退職し、そのときはもう金融は辞めようという思いがあったんです。でも、そんな時に『日本でいちばん大切にしたい会社』という一冊の本に出会いまして。「これまで運用者としてやってきたけど、こういういい会社を増やすことや育てることができていない」と思ったんです。だったら、「そんなコンセプトの運用会社ならやろう」と思い、現在の社長の鎌田と一緒に、著者の坂本先生のところに会社の企画書を持って行ったのが始まりでした。

著者がフィールドワークで見つけた「日本でいちばん」価値ある企業を紹介する一冊のビジネス書。この本との運命的な出会いから一念発起した創業メンバーが、多額の資本金を自己負担してスタートした鎌倉投信。設立後も苦労は絶えなかったようです。

まず金融機関として登録するまでに最低人数が必要で、現在の常勤は8人ですが、これは最低ラインなんです。さらに一番苦しいと思ったのは、設立から運用開始までの約1年半。体制を整えないと運用は開始できないので、始めるまでにものすごく時間がかかるんです。事業にはランニングで年間約1億円ほどかかるんですが、私たちは手数料を1%いただいているので、残高が100億超えないと損益分岐点を超えてこない。それまではガマン比べです。

僕たちは理想を追います。でも自分たちのコンセプトを貫こうとすればするほど販売力のある会社とは付き合えない(※)ので、最初から分かってはいたことではあるんですが、本当に今はガマン比べですね。

※鎌倉投信は、銀行や証券会社などの販売会社に委託せず、販売まですべて自らの手で行っています。

自分たちの理想を曲げないために、ガマン比べを続けるという覚悟。新井さんは、商品に関しても「現在の『結い 2101』を一人前にするまでは日本は良くならない」と言い、それまで他の商品を出すつもりはないそうです。その強い信念の裏には、金融マンとして長年抱いてきた思いがあります。

お金は大事だと思いますよね?でも、増やすことは“汚い”ものだと思っていませんか? でも違うんです。お金が必要なところに必要な分だけ届けば、生きたお金が使われるんです。お金儲けがいやらしいものという意識は、日本が最も強いんですが、それは僕ら金融業界自体がそういうイメージを作ってしまったんです。ここを変えて行かなくては決して良くはなりません。

それを変えて行くためには、お金じゃなくて気持ちから、です。「こういう会社に投資してくれるんなら、お金出して、ちょっとでも増えるならやってもいいかな」という気持ち。通常のリターンは儲けだけですが、僕らは、“資産形成”、“社会形成”、そして、“豊かな心の形成”という3つを投資によって得られるものとして「投資の果実」と呼んでいますが、3つ目の“心”が大切。「こういうところに投資しているんだ」と分かることによって心が幸せになっていくんだと思うんです。

お金だけではなくて、心をも豊かにする投資。なんだかこれからのお金に対する価値観を示唆しているような言葉です。

さらに深くお話を聞きたいところですが、今回のインタビューはここまで。続きは、新井さんをゲストにお迎えするgreen drinks Tokyo 「これからのお金」にてじっくりお話をお聞きしましょう。開催は10月13日(明日!)です!

続きは明日のgreen drinks Tokyoにて!

続きは明日のgreen drinks Tokyoにて!

鎌倉投信のホームページでそのコンセプトを知ろう。