未来に希望を持てるエネルギーの形とは何かを考えるgreen drinks Tokyo「これからのエネルギー」レポート #gdTokyo

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わたしたち電力」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

greenz.jpが毎月第2木曜日に開催しているネットワーキングパーティ「green drinks Tokyo」。

9月は東日本大震災以降今まで以上に注目を集める「エネルギー」について、自然電力株式会社の磯野謙さん、R水素ネットワーク代表の江原春義さん、R水素のムービーを製作した映画監督の中野裕之さんをお迎えして、ちょっと難しいけれど刺激的な再生可能エネルギーについてのお話をして頂きました。

その模様をレポートでお伝えします。


どうする?これからのエネルギー

今まで、日本では主に火力、原子力、水力という3つの発電方法で電気を作り、各地域の電力会社が家庭や企業に電気を売ってきました。しかし、今回の東日本大震災の影響で、福島第一原発の事故が起こって原子力の安全神話が揺らぎ、電力供給が大幅に減ったことで計画停電や節電という影響が出ました。

このような中で、グリーンズが注目するのはもちろん地球にやさしい再生可能エネルギーです。しかし、この再生可能エネルギーで本当に必要とするエネルギーを賄うことは出来るのか?安全性などの問題はないのか?エネルギーと地域の関係はどうなるのか?などなど疑問もたくさん出てきました。

そこで、今回は自然エネルギーの力を信じて活動する3人をゲストにお迎えして、自然エネルギーの本当の所をじっくりお話いただきました。かなり突っ込んだお話に新たな知識を沢山詰め込んで、未来に向けた課題も見えてくる様なgreen drinksになりました。


今回のゲストは?

まずはゲストのプロフィールと、その取り組みをご紹介します。

磯野謙さん

green drinks tokyo 2011 09 磯野謙さん

太陽光や風力発電所の設置や運営、その導入のコンサルティングを行う会社「自然電力株式会社」代表。風力発電所を作る仕事に携わった経験を生かして、地域資源としてのエネルギー開発を支援する。
http://shizenenergy.net/Shizen_Energy_Inc./Home.html

江原春義さん

green drinks tokyo 2011 09 HALさん

greenz.jpもサポートするR水素ネットワーク代表、通称HALさん。R水素は発電ではなくエネルギーを貯めて使う方法に注目した持続可能なエネルギーの形、難しくてなかなか理解されないR水素を広めるために日夜活動を続ける。
http://rh2.org/

中野裕之さん

green drinks tokyo 2011 09 中野裕之さん

映画、PV、ドキュメンタリーなどを製作する“ピースな映像”作家。『美しい惑星 The Beautiful Planet』など地球の自然を撮した映像作品も手がける。HALさんとの出会いからR水素についてのショートムービーを作ることに。
http://www.peacedelic.jp/nakano/blog/


自然電力株式会社が成し遂げようとしていること

まずはgreenz.jp編集長・兼松も「同世代で実際にコミュニティ発電所をやっている数少ない人、こういう人がこういうことをやっていると紹介したかった」という磯野さんのお話から。

具体的な話に入る前にまず、日本の電力のお話から。日本の電力はオイルショック後、火力遂げ視力と水力のバランスを取ってきましたが、自然エネルギーはわずか1%で、ドイツやアメリカの10%、EUが目標とする20%と比べるとかなり少ないのです。しかし、自然エネルギーは建設後はCO2を排出しないという点で環境の面から価値があり、また今は4%しかないエネルギー自給率を上げることができるという点でエネルギーの安全舗装という面からも重要なものなのです。

磯野さんが自然電力株式会社を設立したのは今年の6月、それまでも風力発電所を作る仕事をしてきたものの「これまでは自然エネルギー賛成とはなかなか言ってもらえなかったのが現実」だそうです。しかし、3.11以降、主に地方の方から「太陽光や風力をやりたい」という話がたくさん来るようになり、それを実現するための規制や許認可の問題を解決するシステムを作るべく若手3人で会社を立ち上げたそうです。

green drinks tokyo 2011 09 自然電力株式会社

磯野さんがこの会社でやろうとしていることは「地域が主体的にエネルギーを作ること」。これまでの自然エネルギーは、例えば風力発電の場合10基以上作らないと採算が取れず、そのためには大規模なプロジェクトが必要で、そうなると低周波や景観の問題で地元の人達となかなかうまく行かなかったそうです。しかし、地域がオーナーシップで「自分たちの発電所」という意識が生まれればそのような問題は解決するのだといういいます。

そのために必要なのは、ネットワーク化。それは1ヵ所に大規模なものを作るのではなく、中規模なものを各地に作ってそれをネットワーク化することで、大規模なものを作るのと同様にコストを下げることができるからです。

いま考えているのは1メガワット程度の太陽光発電で、これで400世帯分の電力がまかなえるとのこと。1キロワットあたりの設置コストは住宅の場合60万円、1メガワットの中規模なものだと40万円、これをネットワーク化すると30万円程度になるんだとか。

そして、同時に地元に雇用が生まれ、400tのCO2削減にもなるということで、「新しいエネルギーのあり方として成り立つんじゃないか」と磯野さんはいいます。

そして、自然エネルギーには「天候に左右される」「台風などで壊れてしまう」「気候変動による条件の変化に左右される」という弱点もあることは忘れてはいけないけれど、これは「自然エネルギーをつかうということは自然と共生するということであり、そのような社会の仕組みを作っていこうという気持ちを一人一人が持つことが必要」だともお話くださいました。


自然エネルギーの弱点を補うR水素

つづいて、そんな自然エネルギーの弱点を補えるかもしれないR水素のお話をハルさんにして頂きました。

R水素の話に入る前に、化石燃料について。

現在の発電の材料になっている化石燃料というのは、例えば天然ガスは北極など、石油は中東など、ウランはオーストラリアなどと遠くから来ています。さらに石油の場合はタンカーで運ばれてきた原油を石油化学プラントで燃料にして、タンクローリーで全国に運び、しかも火力発電所の発電効率は35%しかありません。そんな化石燃料の調達代金は年23兆円にも上るのです。

なぜそんなにお金をかけて化石燃料を買わなければならないのか。燃料というのは炭素と水素の組み合わせで、水素の割合が高いほど効率がよく二酸化炭素の排出量も少なくなります。まきは水素が10分の1、石炭は3分の1、石油は4分の3、天然ガスは5分の4、つまり化石燃料は効率がいいわけです。でも100%水素ならもっと効率がいい。

水素とは何でしょうか?世界で一番軽い気体でどこにでもあるけれど、地球上では単体で存在しないので、取り出す必要があるものです。取り出せば燃料電池を使ってエネルギーに変えることができます。エネファームの場合は天然ガスから取り出した水素を使っていますが、R水素の場合は自然エネルギーで発電した電気で水を電気分解して取り出します。

これによって不安定な自然エネルギーの余った電力をどうするかという課題が解決できます。余った電気で水を分解して水素を取り出して貯めて、必要なときに燃料電池を動かせばいいのです。R水素と自然エネルギーを使った小規模分散型の利点は送電や変電に使われてきたコストが要らなくなること、排熱利用がし安くなること、災害にもつよいこと、利用者の意識が高まることなどです。つまりR水素は「命を壊さず、空気を汚さず、地域・国のエネルギー・セキュリティになる」だとハルさんはいいます。

green drinks tokyo 2011 09 R水素

そしてこれが世界に広がったら「火力や原子力発電所はいらなくなり、奪い合いによる戦争や難民、貧困もなくなり、水や空気も綺麗になり、権力が一曲に集中することがなくなって心の民主主義が実現する」とまで言うのです。

そして、どうしてこんないいものがこれまで広まらなかったのかといえば「エネルギーを制するものが世界を制する」というように、権力を手放したくな人が抵抗をしてきたからで、それを可能にしているのは「政治に対する関心の低さ」なのだと言うのです。太陽と水から作る「夢のエネルギー」R水素の普及の障壁は技術的なものよりもむしろ社会の構造であり、私たちの考え方なのです。

そして「そんなR水素に取り組んでいる人たちは世界中にいるけれどつながっていない。エネルギーに関してはみんなでつながらないと限界がある」と編集長兼松が補足し、そのR水素を広めるためのムービーを作ってくださった中野裕之さんが登場しました。


R水素を広めるために


中野裕之さんの短編『明日』(仙台短編映画祭 ウェブサイトより)

「3.11以降、知らなかったことを色々知るようになって、その中の一つにR水素があり、Twitterでハルさんと知り合って、R水素を柔らかく説明できるものを作りたいと思って作りました」というのが『明日』と題されたこのムービーの成り立ち。

中野さんは燃料電池を作っている岡山の学校やgreenz.jpでも取り上げたR水素マシーンを作っている中島さんを取材し、それを映像に収めたのです。

中野さんも震災の後、「自家発電して独立したい」と思ったそうで、中島さんの機械はソーラーと水さえあればそれができると感銘を受けたそうです。機械の詳しい説明は記事に譲るとして、中野さんはその中島さんの機械とR水素について「すごくいいものを知ること、そして広めること」が大事だといいます。日本という国は「メルアドも持っていないような国会議員が牛耳っている国」で、そういう人が握る利権とは無縁ではいられないけれど、なるべく放おっておいてくれというスタンスでいることはできるというのです。

そして、(中島さんが以前携わっていた)CDやDVDの技術は新しいものが出ると捨てられてしまうけれど、この水素吸蔵合金の技術はこの先何百年も使えるときき、そこに「すごく未来を感じた」そうです。

このあと会場から自然エネルギーの安全性やデメリットを問う質問が出ましたが、実際に問題になっているのはそのものの危険性よりも新しいものへの抵抗なのです。もちろん自然エネルギーにもデメリットはあります。しかし、それが火力発電や原子力発電よりも大きなものであるとは思えません。

磯野さんの言うとおり「エネルギーの問題はコストの問題」であり、コストの問題さえ解決されれば、自然エネルギーは未来のエネルギーになりうるのです。

最後に兼松は「本当にいいものを信じちゃいけない世の中ってなんかおかしな感じもしますよね」と話しました。果たして何を信じればいいのか、もやもやしたものは残りながらも、未来に向けて考えるべき材料はたくさん得られた、そんな green drinks となりました。

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