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お金と共に届くのは気持ち。 人をつなぎ、未来をつくるマイクロ投資プラットフォーム「セキュリテ」 [トム・ソーヤーのペンキ塗り]

被災地応援ファンドで事業の再開を目指す、事業主のみなさん

被災地応援ファンドで事業の再開を目指す、事業主のみなさん

この記事はフリーペーパー「metro min.(メトロミニッツ)」と井上英之さん、greenz.jpのコラボレーション企画『トム・ソーヤーのペンキ塗り』にて、メトロミニッツ誌面(10月20日発行)にも掲載中のものです。

“投資”と聞くと、どんなイメージですか? マネーゲームの印象が強く、怖くて手を出し難いと思っている方も多いのではないでしょうか。では、5万円の投資で、あなたが好きな日本酒の酒蔵を守り、純米酒を味わう蔵見学会に参加できたら? 1万円で、被災したふかひれ専門店の復興を応援し、初回出荷の商品を味わうことができたとしたら? そこにあるのは“好き!”とか“応援したい!”という気持ち。投資って本当はそういうものなのかも知れません。

セキュリテ』は、企業や団体の取り組みを個人が応援できる、マイクロ投資ファンドのプラットフォーム。サイトには、飲食店やサッカーチームのファンドから、妖怪ファンド(!)まで、1口1万〜5万円という小額で投資できる様々なジャンルのファンドが並んでいます。参加者は、事業内容や今後の構想などから共感できるファンドを選び、インターネット経由で手軽に出資者となることができます。

マイクロ投資プラットフォーム「セキュリテ」

マイクロ投資プラットフォーム「セキュリテ」

面白いのが、それぞれのファンドに設定された出資者特典。全量純米蔵を目指す「純米酒ファンド」には、年数回の純米酒の贈呈と、酒蔵見学会への招待。サッカーチームを応援するファンドでは、専用フラッグに名前を刻む他、招待チケットなどが与えられます。これらの特典により、ただ出資するだけじゃなく、企業と顔の見える関係性でつながり、楽しみながら自らも事業に参加できる仕組みが実現しているのです。

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「全量純米酒ファンド」の『奥播磨ファンド2011』。1口50,000円からの募集で、出資者には出資証明としてオリジナルのおちょこがもらえたり、蔵見学会への招待、純米酒各種が年に数回もらえるなど、純米酒好きにはたまらない嬉しい特典が豊富にある

「全量純米酒ファンド」の『奥播磨ファンド2011』。1口50,000円からの募集で、出資者には出資証明としてオリジナルのおちょこがもらえたり、蔵見学会への招待、純米酒各種が年に数回もらえるなど、純米酒好きにはたまらない嬉しい特典が豊富にある

セキュリテ』を運営するミュージックセキュリティーズ株式会社(以下、MS)の取締役・猪尾愛隆さんは、この特典のように特定のコミュニティの中で高い価値を持つものを“コミュニティ・リターン”と呼び、こう語ります。

ぼくらは、投資していただく動機の価値観が多様になることに対応していきたいと思っています。そのために大事なのは小額であること、そしてコミュニティ・リターンで当事者としての実感を持っていただくことです。参加者にとっては少ないリスクで楽しんで参加できるし、事業者にとっても、たくさんの人が仲間に入ってくれることの意味は大きい。出資を通じて届くのは、出資者の方々のお金に加えて、期待とか信頼とか、そういうものなのです。

この想いの結晶とも言える取り組みが、震災後に新たな枠組みで始めた『セキュリテ被災地応援ファンド』です。1口1万円(うち5千円は“応援金”として寄付)の投資で被災した企業の再建を応援できる仕組みで、8月末現在、11の企業が事業再開を誓い、ファンドを立ち上げました。

セキュリテ被災地応援ファンド

セキュリテ被災地応援ファンド

醤油醸造蔵、ふかひれ専門店、コーヒーショップなど、それぞれのページでは、被災状況と復興計画、代表の動画メッセージの他、随時更新される被災地からのレポートも掲載。“初回出荷のふかひれスープ”など特典の魅力も手伝って応募状況は好調。わずか2週間で募集口数を達成したものもありました。

被災地応援ファンドで事業の再開を目指す、事業主のみなさん

被災地応援ファンドで事業の再開を目指す、事業主のみなさん

被災地応援ファンドの一例。左は60余年の歴史を持つ回船問屋「斉吉商店」で、出資者には初回出荷される商品が真っ先に送られる。右は新蔵を建設し復興を目指す蔵元「寒梅酒造」。出資者特典は酒米田植え体験や新蔵での仕込み体験など。

被災地応援ファンドの一例。左は60余年の歴史を持つ回船問屋「斉吉商店」で、出資者には初回出荷される商品が真っ先に送られる。右は新蔵を建設し復興を目指す蔵元「寒梅酒造」。出資者特典は酒米田植え体験や新蔵での仕込み体験など。

応援ファンドの立ち上げは、被災者の再建を精神面で強く支えるとともに、投資のユーザー層を広げることにもつながりました。寄付ではなく、壁を越えていこうとする人をみんなで支え、共に歩むことができるファンドの仕組みが、震災と言う状況下で人々の気持ちをつなげ、ダイナミックに機能し始めたのです。

2001年の会社設立時、ミュージシャンが自らお金を集める手段として立ち上げた音楽ファンドの事業が、今ではあらゆるジャンルに広がり、MSの歩みは誰の目にも順風満帆に見えます。でも猪尾さんは、「まだまだ出発に過ぎない」と言います。

プラットフォームは立ち上がりましたが、投資をもっと安心して恐怖感なく参加できるものにしていかないと、しっかりと出資者を集めて事業者のいいサービスや取り組みを支えていくことができない。その点でまだまだだと感じています。今後は、インターネットだけでなく、地域の企業の資金集めの現場にこの仕組みが入っていけるようにしたい。そのために地域の金融機関と連携し、ファンドから融資への道筋を作る取り組みを始めています。

猪尾さんが所属する証券化事業部では、事業主の計画などを検討することに加えて、その魅力を伝えていくことにも注力しているそうです。猪尾さんは、「事業主を訪ねると必ずファンになってしまう」と言います。まさにこれが、『セキュリテ』が生み出した新しい価値観。この想いが人々に伝播し、投資のイメージを変えていくのも時間の問題かも知れませんね。

ミュージックセキュリティーズ株式会社 取締役 猪尾愛隆さん

ミュージックセキュリティーズ株式会社 取締役 猪尾愛隆さん

いのさんのここがポイント!

大切なものを守るための”投資”
自分もそれに加担できるとしたら・・・
投資が変わると、世の中も変わります

続いてほしいお店や味、大好きな森林。大切なものを守るための“投資”、そんな動きに自分も直接加わっていくのも“投資”——なんだか、これって楽しそうです。

以前、大学の授業できいてみたことがあるんです。『よい投資』って何ですか?身近な事例でおしえて!って。そうしたら、かなりの学生たちが、誰かにお世話になったことや、先輩や後輩とのエピソード、自分の未来への投資とか、「心が動いた」なかなかいい話をするんですね。

その話をまとめると、どうも、投資するものは、お金もあるんだけど、それ以外の、言葉や気持ちや現物、お金以外のものも含まれている。さらに、投資の結果の「リターン」も同じで、お金だけじゃなく、自分や誰かの成長や、わくわくする何か、“お金以外のもの”が含まれてくる。投資って、もともとは、よりよい未来を実現しつないでいこうと、日常の中にあるもっと広いもののようです。

だから、今の金融の仕組みの外側にも、ぼくらの毎日には「投資する」機会って、意外とたくさんある。そんな投資の本来の姿をインターネットというツールも使い、実現していく。セキュリテは彼らが“大好きな”事業をぼくらにつないでいく。だから、お金の出し手にも、受け取り手にも「居場所」ができるんですね。

気持ちが届く投資のカタチ。被災地応援ファンドも出資者募集中!


編集長YOSHより

この連載「トム・ソーヤーのペンキ塗り」は、日本のあらゆるソーシャルイノベーションの中心で活躍し、たくさんの社会起業家を応援してきた井上英之さんと、日常の中の”Quality Time”をテーマに都内52駅で配布されているフリーペーパー「metro min.(メトロミニッツ)」とのコラボレーション企画です!

やる側も楽しく、社会も良くなり、ビジネスにだってなり得てしまう。そんな三方良しの「トム・ソーヤーのペンキ塗り」的FUN!が満載のソーシャル・デザインプロジェクトを紹介しています。東京の方はぜひ見つけたらお手にとってみてください。

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