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【インタビュー】これから震災とどう関わり続ける?「みちのく仕事」の中村健太さんに聞きました。(前編)

Some rights reserved by Kasper Nybo

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震災から半年。今、改めて震災とどう向き合っていくのか、私たちひとりひとりが問われていると感じます。被災地の状況も徐々に変化を見せていて、ニーズもボランティア作業から雇用へ。今、私たちにできることは何でしょう?

改めて “震災と関わり続ける” ということについて考えてみたいーー

そんな思いから、現在もなお、震災にプロジェクトベースで関わっている方々にインタビューをして、greenz.jp読者のみなさんと、そこにある想いを共有してみたいと思いました。最初にお話を聞いたのは、震災後にウェブサイト「みちのく仕事」を立ち上げた株式会社シゴトヒトの中村健太さん。翌日から再び被災地に向かうという中村さんを、東京のオフィスに訪ねました。

「みちのく仕事」とは?

「みちのく仕事」は、被災地で活動されている方や復興に向けて動き出した被災者の方のインタビューを中心に展開されているウェブサイト。Twitterがきっかけで復興支援のために休職した人、被災地に仕事を作るプロジェクトを始めた人、被災者の中高生を受け入れる場づくりをしている人……。6月のサイトオープン以来、着々と更新されるインタビューは、震災と向き合い続ける人々のありのままの言葉が記録されていて、とても読み応えがあるコンテンツになっています。

「みちのく仕事」http://michinokushigoto.jp/

「みちのく仕事」http://michinokushigoto.jp/

また、復興支援プロジェクトの”右腕“を募集する「右腕求人情報」では、中長期的に被災地支援に携わる仕事の求人情報を掲載。震災にまつわる、人、仕事、思いをつなぐ役割を果たしています。

運営は社会に新しい生き方・働き方のスタイルを提案するNPO法人「ETIC」と、東京仕事百貨を手掛ける株式会社シゴトヒト。現在中村さんは編集長として、サイト全体のマネージメントから被災地でのインタビューまで、全面的にこのプロジェクトに取り組んでいます。

中村健太さんインタビュー

たんたんと、できるだけ言葉をそのままに伝える。

ーどんなきっかけで「みちのく仕事」を始めたのでしょうか?

震災が起こり、やはり僕も何か役に立てることは無いかと考えました。最初は、被災地での求人の情報を掲載すれば良いのでは、と思ったけど、それはもう大手サイトがやり始めていた。複数あっても仕方ないし、それは被災者のためにもならないと思い、きっぱりと止めることにしたんです。その時思ったのは、僕らはある程度情報を伝えていくことができるのではないかということ。それも闇雲にやるではなく、被災地に行っている人もすごく多いので、それを共有するだけでもいいんじゃないかと思ったんです。

テレビを見ていれば情報として間違いないモノが伝わってくるんですが、それは大皿料理のようなもので、確かにおいしいし間違っていないけど、世界にはたくさん料理があるのにそれを知り得ない。一方でインターネットは小皿料理が反乱していて、中にはお腹を壊してしまうものや不味いものがあって、どれがいいのかよくわからない状況で。

であれば、ぼくらは大きな皿ではないけど、確実に、自分たちに縁のあった人の情報を届けていくのは意味があるんじゃないかな、と。現地に居る人も、被災された方も。特に仕事という文脈で、復興に向けて、生活の中で仕事がどう位置づけられているのかを、できるだけその人たちの言葉をそのままに伝えていこう、と。

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ーインタビュー対象はどう選んでいるのですか?

今まで僕が関わってきた人で被災地で活動されている方もたくさんいるし、一緒にやっているパートナーのETICが関わってきた人、一方で全然関係ないけど会ってみたいな、と思った人に直感で会いに行くということもあります。

例えば、明日行くのは南三陸のケーキ屋さんを再建したいと言う人。「来てほしい」と問い合わせいただいたから行くと言う感じ。会ってみてどうなるか分からないけど、「まず会ってみなきゃわからん」という感じで。あとは、木の屋さんという缶詰やさんがいて、津波で全部缶詰は流されちゃったんだけど、中身は問題ないものを洗って提供して、まずそこから始めようとしている方を訪ねたり。ルールはあまり設けずに、縁があったら行くと言う感じで、たんたんと。

ーたんたんと。インタビューを読んでいると、その様子が伝わってきますね。中村さんが相手に寄り添っているというか。

それは難しくて、最初は失敗したんです。いきなり「震災当日、何してました?」って聞くと、まあ、アウトで。当然みんな思い出したくないから、もちろん答えてくれる人もいるんだけど、一回目では無理ってこともあって。そういうときは世間話から始めたり。うん、難しい。時々「あっ」って気付くことがあるので、軌道修正して。

だからね、本当に全然地震と関係ない世間話ができるくらいになるまで続けていきたいし、それ以降も続けていきたい。「この前大漁だったよ」とか「○○ちゃんが小学校入学した」とか、そういう話をできるような状態を目指したい。会話そのものよりも、そういう状況を共有するというか。地震の体験談だけを集めるのも必要かもしれないけど、その人たちがだんだんこうなっていく、というのを共有してもいいのかな、と。地震の激動期の話はけっこうあるけど、そのあと普通の生活をしている状況の話って言うのはあまり無いと思うし、やはりどんどん情報も減っていくから、そういう意味でも、たんたんと。

連続性を持って伝えることで、“自分ごと”として捉えられるのではないか

—初めて被災地に行った時、中村さんはどう感じましたか?

最初は「みちのく仕事」を始める前、物資を持ってボランティアをしに行ったんだけど、実は急激にグッとくるものはなくて。インタビューを重ねるごとに、実感を積み重ねた感じかな。瓦礫の山が広がってても、むしろ実感がないわけ。それよりもそこに生活していた人と話をすると「あー」って思うというか。僕の性格かもしれないけど、映像以上に、そこに生活していた人の言葉の方が重いと思った。

映像でどんなに見えていても、すごく断絶している感じがしていて、頭でわかるんだけど、腹の底からそれが起きているという実感は沸かないというのが相対的にあって。そこに住んでいる人が知り合いだとか、そういうことがあると途端にリアルになってくる気がするんだけど、そういう意味では自分ごとになっていないというか、すごい関係性が断絶している。たとえば東京では原発のニュースの方がリアルに感じられるっていうのは自分に降り掛かっていたからだと思うし、自分ごとになるっていうのは、自分に縁がある人がいるってていうのもあると思う。

だから、「みちのく仕事」に関しては、ある程度地続きにしたいと言う感覚はあります。惨状だけじゃなくて、人の声をそのまま伝えたい。一回インタビューして終わりって言うのもそういう意味ではちょっと違ってて、その人が何回か出て行く感じを見ていると、知り合いに接しているような感覚になれるんじゃないかな、と思っていて。それに「みちのく仕事」では、単に情報を提供する以上に、木の屋さんの缶詰を販売することもできるかもしれないし、ある種つながりを生むことができると思うんだよね。そういうことによって、自分ごととして捉えられるようになるんじゃないかな、と思っています。

—つながり続けることは、「みちのく仕事」において特に大事なことと捉えていますか?

多分それが役割だと思う。インタビューもそうだし、たんたんと続けていくことがすごく重要なんじゃないかと思う。“たんたん”って意味は、特に介入する訳ではなく、ありのままを、時間そのままに、川の流れのように伝えていくようなイメージ。それが、連続性をもって、全部じゃないけどある程度自分ごとになるようなものにすることが目的なので、1年とか2年とか、そういうスパンでずっと話を聞きにいくとかね。

—読んだ人から反応は?

やっぱり、「知り合いがこんな活動をしているのが分かった」という反応が多くて、それを見ると、それが自分ごとになる訳じゃないですか。そういうのはとてもうれしい反応です。

「みちのく仕事」のメインコンテンツは“たんたんと”更新されているインタビュー

”たんたん”と更新されているインタビューは、「みちのく仕事」のメインコンテンツ。

やっぱり縁があった人との関わり。それ以上のものはない。

—中村さんの中に、目標みたいなものはあるんですか?

目標は僕はつくらないようにしていて、とりあえずもう、行くこと。それも定期的に。それ以上のものはつくらない。行った中で、縁があって何かが起こったらそこで起こせばいいけど、目標で頭でっかちになるよりも、本当にもう、ありのままに寄り添うことを意識している感じはある。そういうスタンスをずっと続けるということが目標です。

—目標と目的は違いますものね。

そう。それは東京仕事百貨でも悩むところで。基本僕はたんたんと行くスタンスなんだけど、いろんなプロジェクトをもっと立ち上げられるんじゃないかとか、がんがん攻めるか、とか思うわけで。でもやっぱ違うなと思っていて。ある程度よりよいものにしていきたいけど、急激なものではなく、進化とか進歩。いろんなプロジェクトが3.11以降バーっと立ち上がって、収束していっていて、収束すること自体は悪いことじゃないんだけど、先走っちゃったものはあると思うし、本質が失われていたような場面も見ていて。

そういうのって目標を高みに設定してしまって現実と乖離してしまうパターンで、やっぱり目の前にあるものと向き合い続ければ、あんまりぶれることもないのかなと思って。今いる場所よりどっちにいる方が良さそうかなっていうのを続ける感じで、まあ、たんたんと、目の前のものと向きあうしかないよね。無理やり大きく見せようとすると反動があると思うし、ちゃんとやってれば着実に前に進むはずだし、そうやって積み上げたものは脆くないからすぐ壊れないはずだし。

「みちのく仕事」も、目の前のことに寄り添うスタンスでいないと、そこはやっぱり乖離してしまうんじゃないかと思うんだよね。やっぱり、人と人の関わり。人と人の関わりなしに、仮説を立てるのは悪い訳じゃないけど、関わり以上のものはなくて。縁があった人との関わりだなって思います。

たんたんと、インタビューという形式で被災者と向き合い、発信を続けるという中村さん。私も中村さんに習って、できるだけありのままに言葉を伝えることを意識してこの記事を執筆し、2回に分けてお伝えすることにしました。次回は、もうひとつのコンテンツ「右腕求人情報」についてお話を聞き、仕事を通して被災地と関わり続けるということについても考えてみたいと思います。

インタビューで、震災と向き合い続ける人の声を聞いてみよう。