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自然エネルギー発電が増えまくっても大丈夫な送電線って?「グリッド」のパラダイムシフトに挑戦する東京大学システム創成学  

原発、節電、自然エネルギー・・・3.11以降、これらのキーワードがメディアに載らない日はありません。かつてないほど「でんき」に対する意識が高まる中、電力会社の資産である送電線(グリッド)に熱い視線が集まっています。

蓄電なくして、自然エネルギーの大量普及なし

「つくった電力の流通方法を確立しないまま、太陽光発電や風力発電の大量導入が先行した欧州の国々の中には、すでに供給障害が起きている国もあるようです。」こう語るのは、東京大学でシステム創成学を研究する田中謙司氏。

田中謙司氏。東京大学システム創成学研究室は、船形流体力学がルーツというユニークな研究室。さまざまな要素技術の組み合わせで動くものをつくる総合工学のアプローチを社会に生かすというビジョンで創設されました

田中謙司氏。東京大学システム創成学研究室は、船形流体力学がルーツというユニークな研究室。さまざまな要素技術の組み合わせで動く船をつくる総合工学のアプローチを社会に生かすというビジョンで創設されたそうです

田中氏が言及するHIS Emerging Energy Research社の調査結果によれば、自然エネルギーの導入量が太陽光発電で世界第2位、風力で第4位のスペイン(※1)などの国々が、電力供給が気象条件に左右されるという困難に直面しているのだそうです。
一方で、太陽光発電で世界第1位、風力で3位のドイツ(※1)は、全電源に占める自然エネルギーの割合が17%(2010年※2)という高水準でも今のところは問題なし。文字通り自然まかせの自然エネルギー電力の供給を、一時的に蓄えたり融通しあったりして、需要に合わせてコントロールする能力の有無が、明暗を分けているのです。また、さらなる自然エネルギーの導入を目指すドイツは、先手を打って二次電池などの蓄電デバイスへの投資を進めています。蓄電や融通体制なしに自然エネルギーへの依存度を高めるのは、備蓄なしに石油に頼るようなものなのかもしれません。

揚水発電所による蓄電能力を縦軸、国際電力融通能力を横軸に、欧州各国をプロットした図。田中氏プレゼン資料より(以下すべて)

揚水発電所による蓄電能力を縦軸、国際電力融通能力を横軸に、欧州各国をプロットした図。田中氏プレゼン資料より(以下すべて)

※1 Renewable Energy Policy Network for the 21th Century 「RENEWABLES 2100 GLOBAL STATUS REPORT
※2 ドイツ連邦環境省 再生可能エネルギー統計作業部会(AGEE-Stat)

これらの先行事例に学び、自然エネルギーの恩恵を賢く使いこなすために必要なこと。それは、19世紀型のグリッドから21世紀型のグリッドへのシフトだと田中氏は言います。

「現在の送電線は、片方の端から入れる分(供給量)と、もう片方の端から出る分(需要量)が常に一定でなければなりません。そのため、供給量をコントロールできない自然エネルギーには対応するには限界がある。エジソンとテスラーがつくった19世紀のモデルがそのまま残っている状態です。これを、供給が需要を上回る時につくった電気を貯めておき、需要が供給を上回るときに貯めておいた分を使うことができるようにすれば、発電が自然まかせでも問題ない。その上、需要の平均ライン分の発電設備があれば需要をまかなえるので、現在のように、需要のピークに合わせて発電所を建設・保守する必要がなくなるんです。」

「いつ、どのくらい、発電し、蓄え、使うか」を時間経過とともにシミュレーション

このアイデアを具現化するべく、田中氏が所属する東京大学システム創成学研究室では、自然エネルギーを供給源とし、蓄電デバイスを搭載した送電線で電力を供給する新しいエネルギーインフラの「設計方法」に着目。一日/一週間/一ヵ月/一年ごとの需要変動のラインと自然エネルギーによる発電量を、電力会社の過去のデータや気象データを使って予測し、両者のギャップを埋めるためにどの程度の蓄電容量が必要かを緻密にシミュレーションするシステムの研究開発を行っています。自然エネルギー発電設備に加えて蓄電デバイスをつければ、当然イニシャルコストがかさみますが、このシステムでは、導入後削減できる化石燃料費分やいらなくなる火力発電所の設備費分などで、何年で元がとれるかも、はじきだせるそうです。

具体的なシミュレーション例をご紹介しましょう。
例えば石垣島に自然エネルギーを導入する場合。
まず、朝昼晩で細かく変動しながら季節によっても上下する電力需要がどんなラインを描くのかを、過去のデータからモデリングします。

電力需要は、常に変動し続ける

電力需要は、常に変動し続ける

次に、気象庁の気温・日射量・風力のデータから、太陽光発電と風力発電による発電量を予測します。

太陽光発電と風力発電による発電量の予測。一日のうちでこれだけ変動することが予測される

太陽光発電と風力発電による発電量の予測。一日のうちでこれだけ変動することが予測される

一日のうちで変動しながら、季節によっても変動します

一日のうちで変動しながら、季節によっても変動します

その上で、設計の目標値をCO2削減量で設定すると、次のようなシミュレーション結果が得られるというもの。

CO2 50%削減シナリオの投資回収年数は17.7年

CO2 50%削減シナリオの投資回収年数は17.7年

電力を「いつ」「どのくらい」つくってためて使うのかを、時間経過とともにシミュレートするという緻密さです

電力を「いつ」「どのくらい」つくってためて使うのかを、時間経過とともにシミュレートするという緻密さです

「この結果には、化石燃料の外部コストや将来の高騰リスク、電力会社がリスクヘッジのために行っている資源の先物取引による金融コスト、炭素クレジット制度が導入された場合のCO2排出コストなどは含まれていないので、それを計算に入れれば回収年数はもっと短くなる」とか。greenz.jp的には、みんなで省エネをして需要そのものを減らすケースや、先日紹介したR水素システムを入れたケースなども、見てみたいですね。

研究室では、自然エネルギーで地域の復興を目指す自治体や、自然エネルギーを活用した経営に興味のある企業を広く募集中!こちらから、上に掲載したデータを含むプレゼン資料もダウンロードできるので、ぜひアクセスしてみてください。