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安定した「住まい」が日本の次のステップをつくる~貸す人と借りる人がつながる「仮り住まいの輪」

未曾有の大震災と言われる東日本大震災。いまだに被害の大きかった地域では数十万の人々が避難所暮らしを続けています。暮らしの土台となる住まいは、これからの重要な課題。仮設住宅の建設も始まりましたが圧倒的に数が足りず、集落全体で遠方に移住する集団移動も行われています。

そんな中、不動産・建築業界のプロが集って作り上げた新しいサービスが始まります。一定期間、無償で借りられる空き部屋の情報を閲覧できるサイト「仮り住まいの輪」。マンションやオフィスなどの空き部屋を提供できるオーナーと、短期間でも間借りしたい被災者のニーズをマッチングするサービスです。

Creative Commons.Some rights reserved by Maryl

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<全国に400万戸以上ある民間住宅の空室を役立てられないか?>

アーツ&クラフト社の中谷ノボルさんの呼びかけで不動産・建築業界のプロが集って生まれたのが「仮住まいの輪」プロジェクト。ウェブサイトを使った、無償で部屋を貸せる人と借りたい人のマッチングサービスです。

今回の大震災で必要とされる被災者用の住宅は約34万戸程度と言われています。…幸いにもこの国には、全国で400万戸を超える民間賃貸住宅の空室があります。…このような既存ストックを、各不動産オーナーの善意で被災者住宅として活用する。というのが、本プロジェクトの基本的な構想です。(「仮り住まいの輪」コンセプト)

サービスそのものはシンプルな掲示板のようなもの。貸し出せる部屋の情報を誰でも自由に閲覧できます。サイトで提供される物件は、自宅の一室、ルームシェア、賃貸住宅、社宅、寮、宿・ホテルなど、単身入居から複数世帯の同時受け入れまで様々なものが想定されます。ごく短期間貸してくれる間借り的なものから、一定期間フリーレントで両者の合意のもと長期契約に切り替えられるものまで幅広いニーズに対応するもの。
ただし、あくまで当事者同士の自己責任にもとづく合意・マッチング、機会提供の場です。 

※サイトイメージは仮のものです。

※サイトイメージは仮のものです。

また一般の賃貸住宅と違って、無償で貸し借りができる「使用貸借契約」に基づくものに限られます。つまり、無償で貸せる部屋であることが大前提。「二人暮らしで部屋が余っている」「マンションの空き室をまとめて幾世帯かに貸せる」といった情報をオーナーがサイトにあげ、借りたい側が気に入れば直接申し出るイメージです。

無償とはいえ、後々揉めないためにも実行委員会のメンバーが推奨ガイドラインを設けます。このガイドランで期間や実費についての決め事を補足。一定期間借りた後、延長したい場合の条件や、光熱費や水道代、食事が出せる場合の食費をどうするかなど、最終的には双方の判断に委ねられますが、どういったことを決めておけばよいかの参考にしてもらいます。

保証人や敷金礼金が必要ないのも嬉しいところですが、自宅に見ず知らずの人を受け入れるためには最低限の安心できる材料が必要と、知人など第三者の紹介者をたてることを推奨しています。

<人と人の気持もつなげるプラットフォームに>

本サイトの公開に先駆けて開始されたFacebookにはすでに空き部屋提供の声がたくさん寄せられています。山形や長野、岡山に熊本、鹿児島と幅広い地域から「お部屋提供します!」の声が。

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けれど被災者の方々は衣食にも不自由している中、パソコンで情報を取ることはなかなか難しいのでは?広報担当の大西さんに疑問をぶつけてみました。

被災者ご自身でなくとも、親戚や知人友人などこんな情報が出ていたよ、といった形で情報が広がり伝わることを期待しています。公開当初は間に合いませんが、追って被災者側の「こんな部屋はないですか?」といったリクエストの声を反映できる場も用意する予定です。情報を流通させる仕組みだけでなく、人と人の気持ちをつなぐプラットフォームになれたらと思っています。

直接行政に働きかけることは考えていませんが、そこは不動産や建築業界に身を置くプロの集団。自分たちのもつネットワークを駆使して不動産オーナーや仲介業者にも積極的に声をかけていく予定です。
twitterやFacebookなどのオンラインツールで広まりいいマッチングが生まれることも期待しています。

Creative Commons.Some rights reserved by水泳男

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いまだに見つかっていない数多くの行方不明者や長年暮らした土地への思いから、今まで住んでいた場所を離れたくない人が多いのも事実です。つながりの強いコミュニティがこれからの復興に向かう力にもなり、慰めになることも忘れてはならないこと。

けれど安定した暮らしの基盤があってこそ前向きに次のステップを考えられるもの。このサービスが少しでも安定した暮らしを一日でも早く送りたいと願う人々の気持に応えられることを願っています。

「仮り住まいの輪」サイトを見る