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【シアトル通信No.5】すごいシェフ達のとにかくすごいレストラン! “Great Food. Better Lives!”

Greatな料理でより良い生活を!

Greatな料理でより良い生活を!


2009年9月に行われた米国NPO法人iLEAP社会起業のトレーニングの現場から、シアトルのサステイナブル・ムーブメントの一コマをレポートしている【シアトル通信】。今日はシアトルのソーシャルイノベーションの代表格である FareStartという団体を紹介したい。


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レストラン中央の大テーブルでランチタイムを楽しむiLEAP参加者

シアトル・ダウンタウンの一角。ビジネス街にも近いこの場所に、黒を基調としたモダンでおしゃれなレストランがある。入り口を入るとガラス張りの明るい店内が印象的で、ランチタイムにはビジネスマンや若い人でにぎわっている。一見何ともない都会のレストランに見えるが、メニューにはこんな一言が。

少々お待たせする事があるかもしれませんが、このレストランはトレーニングプログラムの一環なので、何とぞご了承ください。お客様のサポートに大変感謝致します!”

実はこのレストランは、アメリカにおける一番大きな社会問題とも言える、ホームレス問題に取り組むNPOであるFarrestartが経営するお店なのだ。この団体では、ホームレスの人々に“お金や物”という物質的援助ではなく、次の仕事に生かせる“スキル”を身につけるためのトレーニングを与える事で、彼らの自立を支援する。そのトレーニングはシェフとしての単なる調理の技術指導だけではなく、下記のように仕事に対するトータルのサポートを行う事が特徴だ。

Culinary Training:調理技術トレーニング
FareStartのキッチンに実際入って、直接シェフから指導を受ける

Individual Case Management:個人サポートプログラム
参加者個々のニーズに合わせ日常のケアーや健康状態、アパートメント手配などのアドバイス

Life Skills Training:ライフスキルトレーニング
職場での問題解決法やストレスマネージメント、時間管理、プレゼンテーション方法などを学ぶ

Job Placement and Retention Services:仕事紹介と継続サービス
トレーニング終了後の仕事紹介や労働環境アドバイスのサポート

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シアトル名物!サーモンのバーガー。まさにGreat Food!

ホームレスの人々がトレーニングを受けるためにFarestartのドアを開くのは簡単。しかし、ここを卒業するのは容易ではないようだ。16週間の無償プログラムの間、時間管理やクラスへの積極的な参加など、ありとあらゆるルールに従わなければならない。そして、この厳しいトレーニングプログラムを利用して、次のステップへの進んだ人は、なんと団体設立から17年間で3000人を超えるというからすごい。そして、レストランでサービスを受けたお客さんは300万人を超える。

非営利団体として登録されるこのFareStartだが、補助金や寄付だけに頼らず、このようなレストラン経営で事業収入を運営資金にしている、まさに事業型NPOだ。その他に、プロジェクトごとに地元優良企業が様々なサポートをしている。

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お皿に記された支援者のロゴ。スターバックスやマイクロソフトなどシアトルのビックネームがズラリ

また、ユニークな点としては、毎週木曜日のディナーはGuest Chef Nightというイベントになっており”Seattle’s best food lover’s event”と呼ばれ、シアトルのレストラン通の間では非常に有名。このイベントには、シアトルを代表するホテルやレストランのトップシェフ達がここで学ぶ参加者と一緒になり、特別料理を用意してお客さんを迎える。普段味わう事の出来ない有名シェフのディナーが、24.95ドルと大変リーズナブルに楽しめるので、ディナーはいつも予約でいっぱいだという。また、ほとんどのシェフがボランティアとして参加し、今までに200万ドル以上の収益を上げた。まさに、シアトルコミュニティーが一丸となって作り上げた成果ともいえる。

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コンピュータートレーニングでは履歴書の作り方などを学ぶ

仕事をする。この現代社会を生きるのには当然な事が、何かの社会的な要因で困難な人々がいる。それを他人事として見過ごしてしまうか、それとも同じコミュニティーに生きる者として助け合うか。FareStartの活動に見えるのは後者であって、これからの様々な社会問題の糸口がここから見えそうだ。

ソーシャルイノベーション、社会起業家、アントレプレナーetc…。社会的な問題を新しい切り口で解決しようとする人たちの呼び名はたくさんある。しかしその神髄はどれも、そして日本もアメリカもどこの世界も変わらないのであろう。少しクリエイティブになり、身近な自分の行動が人の為になるような想像力をつける事。なにより、おいしい食事を大切な人ととる事が、人々の手助けになるなんてそんなすばらしい事はないだろう。

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壁に堂々と飾られているのは過去の卒業生の勇ましい写真