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イギリス政府も注目!サステナブルな社会をつくる19のアイデアとは?

Creative Commons, Some Rights Reserved, Photo by zetson

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『スコットランド銀行(ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド)』を『サステナビリティ銀行(ロイヤル・バンク・オブ・サステナビリティ)』に変えてしまおう!

そんな大胆な提案が、チャールズ皇太子も参加したロンドンのイベントで、発表された。

このイベントでは、全部で19のアイデアが提案された。その全てに共通するのは、サステナブルな社会づくりのためのアイデアである、という点。いずれも、一般公募によって寄せられた285案から選抜されたアイデアだ。政府に向けたシリアスな提案には珍しく、「幸せについて真剣に考える」「個人のCO2排出量を把握するカーボン・カードを発行する」など、ユニークなアイデアが揃った。

このイベントの主催者は、英国政府の独立顧問機関(non-departmental public body)である持続可能な発展委員会(Sustainable Development Commission:SDC)。英国首相に対して、持続可能な発展に関する助言をするのが、この機関の役目だ。

国家レベルでは、持続可能な発展に向けた取り組みが遅れている。一方で、地元コミュニティをよりサステナブルにしようと、人々は各地で活動を繰り広げている。彼らは、技術革新や政策づくりを後押しするアイデアを持っている。

と語るのは、SDCの理事長Jonathon Porritt氏。地域のアイデアで、政策立案者や政府関係者をインスパイアしたい、国家レベルの取り組みを活性化したい、という思いが、今回のアイデア募集の背景にある。

それではここで、今回発表された19のアイデアのうち、いくつかを紹介しよう。

(1) プリペイ(事前支払)からペイ・アズ・ユー・セイブ(節約しながら支払)へ

アイデア:省エネ設備の初期費用を光熱費に組み込み、月々の分割払いにする。

見込まれる効果:省エネ設備の初期費用の高さは、省エネハウス導入を遅らせている原因の一つ。賃貸物件の場合は、設備投資をする人(オーナー)と、低光熱費など設備の恩恵を受ける人(住居人)が異なるので、特に導入が遅れている。このアイデアを実現すれば、これらの問題が解決して、省エネハウスの導入が加速する。省エネ効果によって、月々の光熱費を現状より抑えることも可能。

(2) スコットランド銀行からサステナブル銀行へ

アイデア:石油・ガス産業とのつながりが強い国営銀行を、気候変動対策プロジェクトに投資する銀行に変える。

見込まれる効果:再生エネルギーシステムや持続可能な交通システムの導入が加速する。化石燃料への依存が軽減する。

(3) キャップ&シェア

アイデア:全市民に一律の排出権を無料配布する。市民は、それを売るか保持するかを選択できる。売られた排出権は、石油・ガス生産業者のみが購入できる。石油・ガス生産業者は、予想される排出量に見合う排出権を購入しないかぎり、燃料を販売する権利を取得できない。

見込まれる効果:排出権を売らない市民が多ければ、温室効果ガスの排出量が削減される。売買される排出権が増えれば、温室効果ガスの排出量も増加するが、光熱費やガソリン代も上昇し、消費者は省エネを心がけるようになる。石油・ガス生産業者は、リスク回避のため温室効果ガス排出量削減に取り組む。

greenz/グリーンズ cap_and_share
キャップ&シェアのしくみ
1. Cap:科学者による判断のもと、配布される排出権の排出総量を定める。
2. Share:全市民に一律の排出権を無料配布する。
3. Sale:市民は銀行や郵便局で排出権を売る。
4. Buy:石油・ガス生産業者は自社の排出量に応じて排出権を購入する。
5. Enforcement:監査役は石油・ガス生産業者による排出量と排出権を確認し、排出量が排出権を上回る場合は、業者に罰金を課す。

(4) 幸せについて真剣に考える

アイデア:学校教育のカリキュラムに、「幸せ」について考える授業を追加する。

見込まれる効果:こどもの暴力や未成年飲酒、未成年妊娠が減る。他人や地域に貢献することに喜びを見出す若者が増える。

(5) マイ排出量枠

アイデア:個人に対して一律の温室効果ガス排出量枠を設ける。実際の排出量が排出枠を上回ったり下回ったりする場合は、排出権をトレードする。

見込まれる効果:人々が目的意識や責任をもって温室効果ガス排出量を削減するために行動する。


「カーボン・カード」を発行して、地域レベルでマイ排出量枠を実施しているFair Shares, Fair ChoiceのPR動画。このサイトのカーボン・フットプリント計算機もおススメ。

以上、5つのアイデアを紹介してみたが、どんな印象をもっただろう。発想は画期的だけど、「言うは易し、行うは難し」だな、と感じるかもしれない。確かに、どのアイデアも、地域レベルでは試験的に導入されているものの、全国展開には課題が残る。

たとえば、マイ排出量枠の配分を提案するオクスフォード大学の研究者Nick Eyre氏によると、このアイデアを実現するには、強い政治的リーダーシップ、関連法の整備、排出量や排出権取引状況を把握するためのITシステム、所得配布を考慮した調整などが必要だ。そしてもちろん、ハードウェアが完備しても、人々に理解されなければ成り立たない。

それでも、イギリス政府は前向きな姿勢を見せている。

(持続可能な社会づくりについての)話し合いには十分な時間をかけた。いま必要なのは、それを実現することだ。

というJonathon Porritt氏の言葉に応えるように、今回挙げられた19の提案すべてについて真剣に考慮する、と発表したのだ。同政府は、自治体やビジネス業界からも協力を仰ぐ予定だ。

2008年11月に、他国に先駆けて温暖化ガス削減の長期目標を発表したイギリス。今後の取り組みに注目したい。