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あなたはチベットの真実を知っていますか?

greenz/グリーンズ 雪の下の炎

チベット僧パルデン・ギャッツォは1959年から33年間を囚人として過ごした。無実であるにもかかわらず。そのパルデンが逮捕されたチベット蜂起から50年、ニューヨーク在住の日本人女性監督が中国によるチベット弾圧の生き証人パルデン・ギャッツォの半生を描いたドキュメンタリー映画を撮った。まだ果たされぬチベットの自由のために……。

チベットにおける中国による人権侵害は、2008年の北京オリンピックに際して大きな問題となった。そしてその翌年2009年は1959年のチベット蜂起から50年という節目の年を迎え、その問題にさらに焦点が当てられることとなった。ニューヨーク在住の日本人楽(ささ)真琴監督の『雪の下の炎』はチベットについて考えるべき今こそ見ておかなければならない作品だ。

この映画はチベット僧パルデン・ギャッツォが1996年のチベタン・フリーダム・コンサートで自分の拷問に使われた“電流棒”を示すところからはじまる。しかし彼はその悲惨な自分の状況を無表情に語り、舞台裏では満面の笑顔を浮かべる。衝撃的な事実と彼の魅力、それが冒頭にはっきりと示されて見るものは彼の人生にぐっと引き込まれる。

このドキュメンタリーはパルデン・ギャッツォという魅力的な人物を通して「チベット解放」を訴える映画である。その内容は今まで私たちの目にはなかなか触れることのなかったチベット弾圧の事実を白日のもとにさらすものであり、正義を主張するものである。

ただ一方的であることも確かで、作品の中にはパルデン・ギャッツォの平和だった子供時代を想起させるようなスチル写真や回想シーンじみた再現フィルムが挿入されるが、それは彼の少年時代そのものを記録したものでは決してないにもかかわらず、彼の半生を語る文脈の中で何の説明もなく使われる。このような手法はプロパガンダだという批判を受ける危険性を常にはらむ。

しかし、この作品はプロパガンダに陥るすれすれのところで踏みとどまっていると私は思う。それはこの創作部分が「明らかに」彼の少年時代そのものではないというところにある。明らかに事実そのものではない映像を挿入することで、自身のプロパガンダ性を明らかにしているのだ。

世界を目覚めさせるには極端と言っていいほどの刺激が必要になることもある。この作品はあえてプロパガンダ的な要素を取り入れることで刺激を強め、私たちに強く訴えかけようとする。

そのように攻撃的であるにもかかわらずどこか優しい印象が残るのはなんと言ってもパルデン・ギャッツォの慈愛に満ちた優しい笑顔によるところが大きい。人を救うのは結局最後には人なのだ。彼のような人物がいる限り未来に希望はなくならない。

『雪の下の炎』
「4月11日より渋谷アップリンク、他全国順次公開」
http://www.uplink.co.jp/fireunderthesnow/

パルデン・ギャッツォの著書「雪の下の炎」を読む!