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パタゴニアの熱帯雨林で発見されたGliocladium roseumは地球を守ってくれるスーパー真菌?

Creative Commons. Some Rights Reserved. Photo by sicoactiva

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カーボンニュートラルで、かつ枯渇しない燃料として注目を集めてきたバイオ燃料。でも今年になって、食料不足などの問題を引き起こす可能性が指摘され、人気が下がってきてしまった。バイオ燃料なら何でもサステナブル、という時代は終わってしまった。

そんな具合に、バイオ燃料に向けられる視線が厳しくなってきた中、バイオ燃料の課題を解決してくれそうな真菌が発見された!

Gliocladium roseumと名付けられたその真菌は、パタゴニアの熱帯雨林の木の中から見つかった。ガスを発生していることが分かり、培養してみたところ、ディーゼルを構成する炭化水素が何種類も生成され、研究者はびっくり。これほど多種の炭化水素を生成する生物が見つかったのは初めてだという。

とてもエキサイティングで、全く予期できなかった結果が出て、腕の産毛がぜんぶ逆毛立っちゃったよ。

実験結果を得たときのことを振り返りながら、モンタナ州立大学の植物学者であるGary Strobel博士
はそう語った。

greenz/グリーンズ dr_strobel
Gary Strobel博士と、同博士に発見されたGliocladium roseum
Montana State University

Gliocladium roseumは、セルロースからバイオ燃料を生成する。同じことを人間がやろうとすると、とても難しい。セルロースを分解するのにも、炭化水素を合成するのにも、たくさんの熱と圧力と化学物質が必要だ。研究者が鳥肌立てて感動するのも、無理ないのかもしれない。

研究はまだ始まったばかりで、Gliocladium roseumによるバイオ燃料の生産が産業として成り立つかどうかは、まだわからない。それでも、このスーパー真菌は、炭化水素の生成をコントロールする遺伝子や酵素の特定につながるかもしれない貴重な存在だ。

Gliocladium roseumの遺伝子研究は、すでにGary Strobel博士の息子さんであるイエール大学のScott Strobel博士が進めている。同博士によると、Gliocladium roseumが原油の成分を生成するということは、いま私たちが使っている原油の一部も、同じような真菌から生成されたバイオ燃料である可能性があるそうだ。

それにしても、なぜGliocladium Roseumは、ディーゼルを生成するんだろう?Gary Strobel教授によると、木を害虫などの攻撃から守るためだそう。

サステナブルにディーゼルを生成して、地球も守ってくれているGliocladium roseum。発見されたのは、「ulmo」と呼ばれる古代植物の中だった。ulmoは、伐採によって絶滅の危機にさらされている種でもある。そんな事実を知ると、環境技術に頼る前に、まずは身近な自然を守らないといけないな、と改めて思う。