Surfer’s Interview 中村竜:サーフボードとテントとギターを車に詰め込んで、六ヶ所村へ!

六ヶ所村原燃PRセンター前に立つWAVEMENT CREW

2007年8月。湘南に大きなうねりが巻き起こった。
六ヶ所村核燃料再処理工場に疑問を抱いたプロサーファーやアーティストが、ついに立ち上がったのだ。2008年2月に本格操業が予定されている再処理工場の真実を自分たちの目で確かめるため、事実を知ったうえで明るい未来への一歩を踏み出すため、WAVEMENTと名乗る一行は、11日間の旅に出た。子ども達に安心して遊んでもらえる「海」を残していけるよう、サーフボードとテントとギターを車に詰め込んで、湘南鎌倉を出発し、千葉、茨城・福島・宮城と北上し、青森県六ヶ所村に向かった。各地の海で、サーフィン教室・映画上映会・音楽ライブ・ライブペインティング・ヨガ教室・トークイベントを通して伝えようとしてきた六ヶ所村再処理工場の現実。旅を終えたWAVEMENTのメンバーであり、プロサーファー、俳優でもある中村竜にスポットをあてた。

取材協力:サーフライダーファウンデーションジャパンBlue.Magazine
写真:志津野雷

WAVEMENT の旅に参加したきっかけ、六ヶ所村に行こうと思った旅の理由を教えてください。

中村竜(以下:RYU) : 今年5月頃に、六ヶ所村再処理工場が本格稼働したら海に放射能が流れてしまうことを聞いて、最初は信じられなくて。でも、聞けば聞くほど、相当ヤバそうだなって思ったから、自分の目でみて感じて確かめようと思って6月にはじめて六ヶ所村に行ったんだ。その旅の途中でたくさんのサーファーに会って、話をしたけど、六ヶ所村について知っている人があまりに少なくてびっくりしたよ。だったら、自分たちで真実を確かて、それを伝えればいいんじゃないかって思った。僕自身も、この問題を知ったから行動に移すことができた。だから、まずはたくさんの人にこの問題を知ってもらおう、知らせることから始めようと思って、自分たちにできることとして、友達のミュージシャンやアーティストと一緒に、WAVEMENTという風になって大洋沿岸を北上しながら、六ヶ所村の問題を「伝えていく」旅のカタチを選んだんだ。

ゆったりした音楽が会場を包みこむ:青森県プレイピア白浜にて

湘南鎌倉から出発して9日目に青森県六ヶ所村入り。実際に訪れて感じたことは、何ですか?

RYU:実際に行ってみて、放射能という核のゴミを海に捨てようとしていることが、本当なんだなってことが改めてわかった。ゴミだったら拾えるけど、放射能は目に見えないし、ニオイもない。半永久的に残る。日本国政府や事業者は、「廃液は大量の海水で希釈されるから問題がない」と安全性を強調しているけど、本当にそう言い切れるのかな。いずれ自分たちは死ぬから、影響はないかもしれないけど、未来を生きる子どもたちや生物は、放射能が流されることを許してしまった海をベースに生きていかなきゃならない。僕たちが犯した過ちを罪もないのに背負うことになる。だから、人として、地球人として、それは許しちゃいけない行為だとおもった。無垢であるべき海が汚されるなんてあり得ない。

東北の海は驚くほどキレイだ

(スポンサーのいるプロサーファーという立場上)六ヶ所村の問題に取り組むことで不安やリスクはなかったですか?

RYU : きれいな海で、放射能が流されずに済むのなら、自分たちが行動を起こす必要もなかった。イイ波にのって単純にサーフィンを楽しんでいたい。WAVEMENTは、そんな連中の集まりなんですよ。でも、そうじゃないことを知ってしまったし、サーファーで誰もやっていなかったから、自分たちきちがそのきっかけになるしかなかった。プロサーファーは(よくもわるくも)影響力があるので、自分たちの行動や意見がどういう反響を呼ぶか、正直いろいろ不安や葛藤はあった。だけど、僕たちがそうであったように、プロサーファーの意識が変われば、他のサーファーの意識も変わっていくと思いたいから、こうして「伝える」活動を続けている。その結果、六ヶ所村のことが日本全国のサーファーに知れ渡って、みんなが想いをひとつに本格稼働を止めさせる行動につなげられたら、WAVEMENTはお役目終了だよ。でもそうなるまでは、自分たちが責任をもって推し進めないといけないし、1年なのか2年なのか5年かかるのかわからないけど、やり続けるつもりだよ。

各地の海で「伝える」トークを展開

今後、WAVEMENTをどういうカタチで広げていきたいですか?

RYU :今回、何故サーファーに対して情報発信しているかというと、サーファーは自然と密接に関わっていて、生活と海がリンクしている人たちだから。自然と自分がつながっているということを解っている人たちだから、知るべきだし、知ってほしい。六ヶ所村の話をしても理解できない人は、自分が自然とつながっていること、自然に生かされていることを忘れてしまっている人たちが多いんじゃないかな。本当は、自然があるから地球が成り立つわけで、その結果、いまの自分たちの暮らしが成り立っているってことに感謝しなければならないはずなのに、そういう意識を持っている人が少ない。でもサーファーは波がよければ海に行くし、ライフスタイルが波乗り中心の生活だったりする奴がたくさんいる。そうやって、毎日自然と向き合って、自然のリズムを感じて、かかわって生きている。だから、きっとこの問題の深刻さに気付いて、一緒に行動を起こしてくれると思う。そうやって仲間を全国に増やしていきたい。

とかく難しく考えがちな六ヶ所村の問題について、まずは「知る」ことが大切だ。そして、知ったうえで、私たち一人ひとりが行えることは、あるのでしょうか。

RYU : WAVEMENT はきっかけに過ぎず、六ヶ所村のことだけじゃなく、そこからさまざまな問題に対するみんなの意識が変わって、毎日電気を大量に使っていることや無駄の多い今のライフスタイルを前向きに見直すきっかけになればいい。この問題を通して、1人ひとりが、人間としてみんなとつながって、日々の生活のなかで自分にできる範囲でいいから、地球環境のために、未来のために、賢い選択と決断をしていくことが大事じゃないかな。自分1人では何もできないと思っているうちは、何もできないし、何もはじまらない。まずは、自分が知り得た情報を、人に広げて仲間を増やしていく。そういうことも大事だよね。

たくさんの人に出会って、たくさんのことを学んだ11日間の旅路。まだまだWAVEMENTの風は吹き続けそうだ。最後に、旅を通して見えたアナタが望む未来のカタチ、アナタの夢を教えてください。

RYU : 六ヶ所村は本当に自然が豊かで海も山もキレイなところだった。だから、その無垢である自然と海を守っていきたい。あるがままの自然を子どもたちに残していってあげたい。子どもたちが自然の中で思いっきり自由に、楽しく遊べる環境を残していってあげたい、それが夢。サーフィンを通して自然からもらったものに感謝して、それをカタチにして、次世代にきちんと残してあげたい。自分にも子どもが生まれたたいま、それが一番の願いかな。

きれいな海を子どもたちに

中村竜

中村竜プロフィール
鎌倉市出身。プロサーファー。13歳でサーフィンを始め22歳でプロに転向。俳優業(代表作:オレゴンより愛・白線流しなど)などをこなしつつ世界をサーフボードと共に旅してきた。最近はフォトグラファーとして写真展を開催し好評を得ている。

ブログ:http://nakamuraryu.blog.shinobi.jp/
公式サイト:http://nakamuraryu.com/