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コミュニティトレードってなんだ?

ザ・ボディショップが行っている、一人でも多くの人がハッピーになるための仕組みをレポート!
今回で5回目になるこの企画は、社会的、環境的なテーマをビジネスに結びつけることで有名な企業である「ザ・ボディショップ」という企業を通して、「ビジネス」ってなんだろう、CSR、社会貢献、そして「商品を買う」という事がどういうことなのかを考えていく企画だ。今回は「ザ・ボディショップ」が行っている「コミュニティトレード」について見てみよう。

※上のマークは、ザ・ボディショップと、アナタ(YOU)と、コミュニティ、全ての人が「ハッピーなつながり」を持つことが出来るコミュニティトレードのシンボルマーク

不公平な世界と、買うだけでみんながハッピーになる仕組み

世界はいうまでもなく、不公平な状況にある。日本などの経済的先進国では、多くの人は必要以上に物質的に恵まれていると感じている。一方で世界の5人に1人(12億人)は、一日1アメリカドル(約110円)未満で暮らしている。そして毎年3万人もの人々が、食べるものがないという理由だけで亡くなっている。その4分の3は5歳以下の子どもだ。一方で、経済的成功を収めたはずの先進国でも、貧困や心の病気が広がっている。これはいったい、どういうことだろうか?

その不公平な世界を、少しでも公平に近づけ、一人でも多くの人がハッピーに暮らせる社会を創ろうという活動が、ザ・ボディショップが行っている「コミュニティトレード」だ。コミュニティトレードとは、「援助ではなく取引を!」をコンセプトにした、公正な貿易プログラムのこと。「コミュニティ」は経済発展に取り残され、恵まれない先住民や女性グループ、小規模農家など、小さな共同体のこと。多くの先住民は、文明の波に生活の場を追われてビジネスの機会に恵まれていない。多くの国では女性の地位はまだまだ低く、教育を受けられないまま大人になる女性も多いという。

そのコミュニティと持続的で対等な関係を築き、良質な原料や製品を公正な価格で取引(トレード)するのがコミュニティトレード。持続的な関係を築くのは、長期的なサポートをするため。そこに住む人々の雇用、医療、教育を充実させ、彼らの持つ文化や伝統を守りながら生活できるようにするためだ。ザ・ボディショップは2005年の1年間で24か国の31団体とコミュニティトレードを行った。金額にすると、500万ポンド(約11億6千万円)である。

「人とともに働く」ということ

このコミュニティトレードの仕組みは、どのように始まり、そしてなぜ必要なのだろうか?

同社を創業したアニータ・ロディックは1989年、アマゾン流域の森林破壊のため、生活の場を追われている先住民カヤポ族に出会った。なんとか彼らを支援する方法はないのかと考え、彼らのようなコミュニティを対等なビジネスパートナーとして原材料を取引するコミュニティトレードが始まった。

同社を創業したアニータ・ロディックはこう語っている。

私たちは、コミュニティに根づいた経済的取り組みの力こそ、人々の生活に影響を与え、変化をもたらすものであると確信しています。こうしたコミュニティと私たちが取引を行うということは、彼らの経済的取り組みに参画し、かつ激励する私たちのやり方なのです。こういったコミュニティとの取引の目的は、単に、ザ・ボディショップのための新しい製品や市場をつくることではありません。大切なのは、交流と価値観、取引することと敬意、そして友情と信頼です。

コミュニティトレードは、商品とお金を交換することを越える関係作りでもある。それは、「人とともに働く」ということなのだ。

コミュニティトレードはどのように行われている?

では、実際にコミュニティトレードは、どのように行われているのだろうか? 同社は、コミュニティが経済的自立、社会的進歩、発展を最大化するために、5つの基準を設けているという。

1.コミュニティに根ざした組織

ひとつめは、コミュニティの社会を代表する組織とともに働くこと。女性団体や農業組合、民族団体、都市のホームレス団体、社会的目的をもつ企業などだ。

2.支援を必要とするコミュニティ

ビジネスの機会が限られがちな人々とともに働くこと。社会的・経済的に恵まれないコミュニティのためにこそ、チャンスを広げたいと考えている。

3.利益

経済的利益だけではなく、特に女性の運営への参加、リーダーシップ、トレーニングを行う組織と共に働く。経済的利益だけでなく、社会的な利益を得るためだ。

4.採算性

言うまでもなく、取引は商業的に成り立つ必要がある。

5.環境面での持続性

同社の環境と動物保護の基準(可能な限り環境負荷を低くすること、動物を虐待しないことなど)を満たす必要がある。(詳しくは、greenz.jpの過去の記事「一人でも多くの人がハッピーになるビジネス」の「『5つの基本理念』(バリューズ)」を参照)

以上、5つの基準を全て満たしてはじめてコミュニティトレードは成立するのだ。

コミュニティトレードは世界を変えているか?

同社元CEOのアニータ・ロディックと夫であるゴードン・ロディックはこう語っている。

組織の力量や新たな自覚といったものの探求を測定する手段はどこにあるのでしょうか?

金額には換算できない大きな利益を、コミュニティは得ているのだ。この金額が「援助」されたのではない、というところに大きな意味がある。発展途上国の貧しいコミュニティに住む彼ら・彼女らの生活の糧をつくり出すことを助け、経済的に自立することを促す。そして彼ら・彼女らの生きる尊厳を取り戻し、誇りを持って自分の足で立つことにもつながる。そのような人々が増え、その結果、コミュニティの持続可能な発展につながるのだ。つまり、2005年度の1年間で、彼らは12億円の何倍もの利益、金額に換算できない社会的な利益がもたらされたのだ。

もうひとつ、コミュニティトレードのいいところがある。それは、「私たちにも参加できる」ということだ。ただコミュニティトレードの商品を買うだけで、すこし世界を良くすることができるのだ。

「THE BODYSHOP モノ語り」これまでの記事はこちら!
第1回 「ザ・ボディショップってナニ?」
第2回 「一人でも多くの人がハッピーになるビジネス」
第3回 「買うだけで世界がハッピーになるモノ語り」
第4回 「家庭内にもハッピーの種をまこう」