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ラウド・マイノリティー(2)

時代を熱狂させたロックンローラーたちの軌跡
エルビス・プレスリーが出演したTV音楽番組「エド・サリバン・ショー」は視聴率82%というあり得ない数字を記録。人種の壁を大きく越えて音楽が広まった50年代。ビートルズやボブ・ディランといったフォロワーを生んだ彼ら初期ロックンローラーの功績はあまりにも大きかった。

エルビス・プレスリーが登場する。彼のファースト・レコーディングは母へのプレゼント用に初任給で作った自主制作盤だった。2度目の自主制作録音でスタジオに訪れたところをサン・レコードのサム・フィリップスが目をつけ抜擢。1955年の8月にサン・レコードからメジャーのRCAへ移籍した後、エルビス・プレスリーは周知の通りロックンロール・アイコンとして爆発的人気で全米を熱狂させた。


Elvis Presley – Ready Teddy

1955年12月、黒人女性ローザ・パークスがアラバマ州モンゴメリーの公営バスで白人に席を譲らず逮捕された事件に、モンゴメリーの教会に赴任したばかりだった牧師のマーティン・ルーサー・キングらが抗議し、公共バスのボイコット運動を開始。約一年間続いた運動の末、公共バスでの人種隔離禁止の最高裁判決を勝ち取り、公民権運動が本格的にスタートした。

1955年はチャック・ベリー、ボ・ディドリー、リトル・リチャードといった黒人のロックンロール・スターが登場した注目すべき年なのだけれど、もうひとつの傾向として、この前後反抗的若者を描いた映画が数本公開されている。ビル・ヘイリーの主題歌「ロック・アラウンド・ザ・クロック」が大ヒットした『暴力教室』や、マーロン・ブランドが暴走族のリーダーを演じた『乱暴者(あばれもの)』、そしてジェームズ・ディーンが悩める反抗的思春期の若者を演じた『理由なき反抗』。

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『乱暴者(あばれもの)』のマーロン・ブランド


Bo Diddley 1955

いつの時代であれ、漠然としたことで身を悶えて悩んだり、有り余るエネルギーを無意味に発散したりすることは、若者にとって生きるという行為の一表現であって、この衝動は社会が幾分成熟したからと言って早々無くなるものではあるまい。赤狩りの政治的抑圧下でフォークが閉め出された反動もあってか、映画という当時最大のマスメディアに現れた社会に抗う不良のヒーロー像は、新しい躍動の音楽、ロックンロールとセットで多くの若者に支持された。


james dean documentary

こう考えてみると、今の時代、不良のリーダーがあまり見あたらない。日本全体の都市化や、ネット社会で要求されるリテラシーが逆に人間を鋳型にはめて、独創性を押さえてしまっているのかも知れない。少なくとも伝統の衰退と過剰な法治体制、両方の要因からアウトローが存在しにくい世の中になっていることは事実で、近年頻発する非情な事件の原因の一つはここにあるのかも知れない。表現は悪いが、無菌状態というのはオーガニックではない、ということ。

敢えてこう言うことを書くのは、エコロジーという語が現在抱えてしまっているコマーシャリズムと絶対的正当性=イデオロギー的な排他性に、上の実情と同様の問題も含まれる可能性を否定できないからである。かつて若衆宿や郷中制度と呼ばれた村の伝統教育文化や土地土地に伝わる祭礼の儀式が若者の性や暴力の問題までをも包括したものであったことからすると、今一般的に言われるエコロジーの概念に文化的なダイナミズムが不足していることは否めない。このことについては今後このサイトでもよく考えていく必要があるのかも知れない。

音楽の話に戻る。反抗的ロックンロール・スターの象徴、エルビス・プレスリーが人気の最高潮で徴兵されたのが1958年。同年、激しいシャウトとピアノ演奏で聴衆を魅了したリトル・リチャードが引退を宣言。翌1959年にはチャック・ベリーが逮捕され、バディ・ホリーが飛行機事故で死亡した。


Little Richard – “Long Tall Sally”

チャック・ベリー
バディ・ホリーの死亡記事

時代は変わる。ロックンロールがポップ化し、幾人かの大スターを失って下火になりつつあったこの時代、60年代にさしかかって新たに登場したのは、レイ・チャールズ、サム・クック、ジェイムズ・ブラウンらによる、R&Bにゴスペルの要素を取り入れたエネルギッシュな音楽、すなわち、後にソウル・ミュージックと呼ばれる魂の音楽だった。

この時代(1955年〜60年)の話題盤
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エルヴィス・プレスリー – エルヴィス・プレスリー登場!
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エルビスの記念すべきファーストアルバム。1956年発表。

ボ・ディドリー – THE BEST 1200 ボ・ディドリー
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アフリカンルーツのジャングルビート! 買い。

Little Richard – The Georgia Peach [Best of]
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若きディランも憧れたリトル・リチャード。特に説明不要。買い。