greenz.jpの連載「暮らしの変人」をともにつくりませんか→

greenz people ロゴ

70年代へ(1)

60年代後半の流行を象徴したウッドストック・フェスティバルが終わった。以降、ポピュラー音楽は更なる変化を始めるのだけれど、この暑い夏の時代、実際はどうだったのだろうか?

前回までがサマー・オブ・ラブのおおまかな概略。あくまでも一般的な略歴で、実際にはもちろん多元的にいろんなことが起こっていた。例えばフラワームーブメント発祥の地、サンフランシスコのヘイト・アシュベリーではヒッピーカルチャー自体は1967年にはピークを迎えた。しかしそれ以後のヘイト・アシュベリーといえば、麻薬中毒者の巣窟のような荒廃した状況だったらしい。

どの時代でもそうなのだけれど、物事が巷で流行するころにはその物事の本質自体は徐々に忘れ去られ、形骸化した現象が世間を賑わすことが多い。この場合もやはりそうだったわけで、いわゆるドラッグカルチャーが終息に向かうことは、1967年のサンフランシスコでは既に予見されていた。それを見越した先見的な若者や識者は、世界を旅して見聞を得ようとしていた向きが多い。ビートルズの各メンバーが68年にインドへ希望を持って旅立ち、若干の失意を胸に、あっさり舞い戻ってきたように。
The Hippie Revolt (1967) movie trailer
http://www.youtube.com/watch?v=lc4gMfngD1k

1968年にジョンがインドで書いた、アルバム『THE BEATLES』収録曲。瞑想に夢中で小屋から出て来なくなった女優ミア・ファローの妹、プルーデンス・ファローのことを歌った曲。ジョンは同アルバム収録の「Sexy Sadie」でインド人の導師のマハリシ=マヘッシ=ヨギに幻滅したことを皮肉って歌にしている。
The Beatles – Dear Prudence
http://www.youtube.com/watch?v=Q5b2tbIr1e8

reporteditleft_490
60年代のヘイト・アシュベリー・パーク
インド滞在中のビートルズ

世のなかのあらゆる現象が放物線を描いて波状にそれを繰り返すように、時代の流れも人間の営み、つまり自然現象である以上、株式の指標を表す曲線にみられるような盛衰が当然現れる。歴史とはそういうものだ、と平家物語の冒頭にもある。ウッドストック・フェスティバルで当時ベトナム各地で炸裂していた爆撃音をノイジーなギターで模しながらジミ・ヘンドリックスが合衆国国歌「星条旗よ永遠なれ」を披露してから4ヶ月後の1969年12月6日。ローリング・ストーンズがカリフォルニア州オルタモントで開催したフリーコンサートで、警備にあたっていたヘルズ・エンジェルスのメンバーが観客の黒人青年を刺殺。青年がストーンズのメンバーに銃口を向けていた様子が映像に残っていたためエンジェルス側は無罪となったものの、自由というどこまでも放埒でありうる諸刃の時流に乗って若者たちがドラッグや暴力にまみれていく、フラワー・ムーブメントの負の遺産が露呈した象徴的な出来事となった。
Jimi Hendrix – Star Spangled Banner Solo (Woodstock ’69)
http://www.youtube.com/watch?v=WlD6zfosEIk

この時代(1967年〜70年)を知るための話題作
———————————-

ギミー・シェルター
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00005FHHH/
The Rolling Stones: Gimme Shelter Trailer
http://www.youtube.com/watch?v=K0q7wPVvVJo
ライブ会場で刺殺事件が起き「オルタモントの悲劇」と呼ばれるようになったローリング・ストーンズのライブ・ドキュメンタリー。当時の混沌がわかる貴重な資料映像。ご長寿バンドはいろんな局面を乗り越えてきたのだ。

フェスティバル・エクスプレス
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B0009NW59M/
ジャニス・ジョプリン、ザ・バンド、バディ・ガイ、グレイトフル・デッド他のアーティストが1970年の夏、カナダを列車で移動しながらフェスティバル・ツアーを敢行したときの記録映画。オフ・セッションの模様も収められた貴重なドキュメンタリー。

イージー・ライダー
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00005LMFE/
http://www.youtube.com/watch?v=x0rwBkb1eOU
デニスホッパー監督・脚本・主演。いわずと知れた60年代のアメリカ青春映画の名作。既に観た人も、いま一度観てみると意外に旬かも。

真夜中のカーボーイ
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000185D9Y/
Nilsson – Everybody’s Talkin’ (Midnight Cowboy)
http://www.youtube.com/watch?v=sX8Y6AVMLDs
1969年にアカデミー賞を受賞したこれも60年代アメリカ青春映画の名作。何ともいえない悲しみとおかしさと友情とが詰まった傑作映画なのでまだ観てない人はぜひ一度観た方がいいかも。印象的なサウンドトラックもいい。

嵐の青春
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000091KOE/
60年代のサンフランシスコ、ヘイト・アシュベリーを舞台にしたジャック・ニコルソン主演の映画。「PSYCH-OUT」の原題からもわかるようにサイケデリックな当時の様子を知れる異色作。

2001年宇宙の旅
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00006585M/
2001 A Space Odyssey (Trailer)
http://www.youtube.com/watch?v=Z8dfQlGoZKw
スタンリー・キューブリック監督の不朽のSF名作映画。1968年4月6日にアメリカで初公開されたという時代性を踏まえて観ればまた違った面白さがある。キューブリックは一時、手塚治虫に美術担当を要請したがスケジュールの都合上叶わなかった、という逸話も有名。