流れる水の造形

流れる水の造形

八ヶ岳のふもとに、「三分一湧水」というとても有名な湧き水があります。八ヶ岳に降った雨や雪が地中に染みこみ、何十年、あるいは何百年とかかってまた地上に顔を出すのです。

地中深く自然に濾過された水は、皆さんご存知のとおり、口にふくめば峻烈でほのかに天然のミネラルの甘みがあります。手にすくえば、切れるほどの冷たさにとても清々しい気持ちになります。特にこの暑い日差しの中では格別です。

山梨県/三分一湧水の水の流れ

夏の暑い昼間にそこを訪れると、夏休みの親子連れがたくさん来ていて、その流れに手をつけて清涼な感触を楽しんでいました。そのこんこんとわき出る泉をみていると、その水紋の模様はひとつとして同じものはなく、しかしながらあるパターンの造形をなしていて、見ていて飽きることがありません。その絶妙なゆらぎが脳に何かをはたらきかけるのでしょう。寄せては返す海の波もそうだし、たき火でみる炎も同じです。人をだまらせます。

自然にある様々な文様はエネルギーの流れがそのまま造形になったものと考えられます。渦巻きや雷のパターンは、身の回りを見回すとそのまま同じカタチがどこかにみつけることができるのではないでしょうか。

水の流れも同じで、その力とエネルギーの流れがあるパターンになっているのだと考えられます。それはもっともスムーズに、自然に無駄なく流れる美しさそのものです。

群馬/藤岡の達磨窯で手焼きでつくられた瓦

さて、この水の流れと似たパターンがデザインに応用されたものが私たちの近くにもないでしょうか?

そう、水に関係するものです。

建築で最初に雨を受け止めるのは屋根ですが、昔から日本の家屋の屋根にはいわゆる「瓦」が葺かれていました。古来、その瓦は大陸から伝わった本瓦というものが主流でしたが、江戸時代に桟瓦というものができ、現在の住宅ではそれが一般的になっています。

そして、そのうねるような形状は水の流れるパターンに似ていないでしょうか? 雨を素早く流し去ることが建物を守ることだとしたら、水のパターンを瓦のデザインに見いだすのはとてもリーズナブルな気がします。実際、そのような説があるようです。つまり、雨水の流れをさまたげず、すんなりと下に流してくれる形状、というわけです。

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