\新着求人/地域の生業、伝統、文化を未来につなぎたいひと、この指とまれ!@ココホレジャパン

greenz people ロゴ

C.W.ニコル

日本で森を育てる理由
「日本の森を、ふたたび野生動物の棲める豊かな森に戻したい」という思いで1984年、長野県に小さな森を買い、再生活動をはじめたC.W.ニコルさん。その森がのちに『アファンの森』と名づけられ、単なる森林保全活動にとどまらない大きな広がりを見せている。「森」を通して、日本を、ひいては世界を良い方向に変える活動を続けているニコルさんに、お話をうかがった。「あなたの夢は、なんですか?」

──ニコルさんが考えている理想の社会、夢、ビジョンを聞かせてください。

ニコル 僕の人生の大部分は日本です。私が望んでいる日本は、美しい、平和な国。そのために三つのことが必要です。治安、健康、美。これは私が考えた事ではなくて、地中海の小国マルタ共和国が独立した時、その副大統領が私に教えた事です。そしてその三角の頂点は、安らぎ。それは、お年寄りが安心して死ねるということ。金持ちのための治安や人間の治安だけではなく、この国の生き物すべての治安。じゃ、鹿、魚を穫る、野菜を採る、山菜を採るというのは、治安は良くないんじゃないか。でもちょっと待って。種は絶滅させません。この治安っていうのは、暴力的な犯罪をできるだけ無くす。それから、日本の中の生物の種の安全は絶対、守る。どっちが大事か、という馬鹿な話じゃない。蟻も大事だし、人間も大事。

健康もそうですね。人間の為に農薬などの毒を撒く。人間の為に生物を殺す。これは100%ナンセンスです。だから、土の健康、空気の健康、水の健康、それで人間の健康。

美は、難しい。でも、基本的には、周りの自然から、美意識が生まれてくるんですよね。その為に、何が必要か。まず、無駄を止める。無駄なコンピューター、無駄な毒。それから、人間も無駄にしない。

私がやっていることは、自分のもうけたお金で森を買って、スタッフたちのお給料を20年出したんですね。でも、僕個人ではそれ以上できなかったんだ。森という自然と付き合っているから、俺のわがままのとおりにはいかなかったけど、健康的で、美しくなっています。生態系が安定して、美しい森になっていますね。その森を僕は全部寄付したんですね。実際に、私の森じゃなくなったけど、でも余計、僕の森なの。言葉を変えると、僕はアファンの森の人間ですね。だから、僕は何も失ってないの。「何も」失ってないです。

森田(ニコルのマネージャー) 森のモノになったのね、ニックが。

ニコル  私、森のモノになっている。

──すごいですね。

ニコル 僕は名誉と信用と友情が増えただけですね。(もし土地を持っていたら)最後には歳をとったら、いざという時はあれを売って、金になってね、老人ホームに入れる。でも、それよりも森があって、山菜ときのこをちょこちょこと採って、森の中の小さな小屋に住んでね、森のホームレスになった方がずっといいですよ。(笑)

──森のホームレス!(笑)

ニコル ホームレスじゃないけど。でも、MORI is my home、でしょ。本当に計算できないモノがあるんですよね。愛情といいましょうか。それたっぷり、森に入れたのよ、本当に。その森は小さいです。一人の、元外人がつくった。でもこの影響が、例えば1000人、一万人、特に一万人の、世の中を変える意志のある人たちに及んだら、国は変えられますね。そうすれば、ネットワークができる。日本ならね、可能だと思う。なぜなら、数十年間の間に、ゴルフ場が犬の体の皮膚病のように増えたでしょ? じゃ、健康的な場所、健康的な里山や村や川や干潟が、本当にネットワークを作り出したら、増えると思う。そうすると、その次、鮎や鮭が戻って来るといいな。That’s my dream.(それが僕の夢です) That’s my dream.(それが僕の夢です)。実際に、今地球温暖化が進んでいるからどうなるかわからない。しかし鮭の場合は、うんと北の方に移動するんじゃないかな、生き残るなら、ね。北海道は100年は大丈夫でしょう。ちゃんとやれば。それでも、これだけ自然の多様性がある日本だから、生き生きとした、ビオトープが作れる可能性は日本が一番だと思う。世界で。それに人間の多様性もある。

ただもう、おじさんたちはだめ。もうまったく駄目。子どもですね。高校生にになったら、もうオジさんオバさんメンタリティー。オバさんの方がまだいい。そんなことできるわけない、とね。自分たちの現実がすべてだと思っていますね。でも本当は、ほかの現実がある。

現実を変えられないってことじゃないですね。if they have a really good dream, they’re following it and come true. (本当にいい夢をもっていれば、実現します)

If you have a dream, if you don’t have a dream, how you gonna make a dream come true? (夢がないなら、どうやってそれを実現させるんだい?)その夢は何の夢? 僕の、アファンの夢はすごく簡単です。今、アファンの森は16ヘクタールですね、日比谷公園と同じ広さです。私が持っている土地もまだあります。アファンの広さは40ヘクタールくらいになったらいいなと思うんですよね。そうすると、結構大きい。小さいけど、ビオトープとしては大きいですね。経済的にどうにか独立できると。

僕は、死ねない。今、私と森田さんがいなければ、成り立たないです。でも40ヘクタールあったら、(生態系が安定するので)大丈夫。われわれがちゃんとした夢を追いかけたら、隣接している国有林。何百ヘクタール、何千ヘクタールが黙っていられないですよね。そうすると、信濃町のコミュニティー、戸隠、飯綱が森と動物と子どもの教育、サバイバルトレーニング、私、日本語探しているけれどね、Wild Living Morality(自然の倫理). I’ve never hard anyone says that(その単語を日本で聞いたことがありません). You have to have the morals to live in wild(自然の中で生きるには、倫理が必要なんです).This is a study taking all my live(私の人生のテーマです).この考え方は クチン族、ツィンシャム族の人々に学びました。彼らは自然の中で生きるための倫理をもっています。鹿は獲るけれども、種全部は獲らない。子鹿がいる母鹿は獲らない。必要以上の獲物は捕らない。自然の生き物に対する尊厳をもつ、などなどです。

そういう勉強を日本でもやるべきだと思うんですよね。だから我々の小さな森から大きな影響を与えることができるかもしれないな、と今、66歳になって考えています。じゃべりすぎですか?

──(笑)そんなことないですよ。おもしろいですね。ニコルさんのいろんなインタビューを読みましたけど、本当の心の中にあるヴィジョンが初めて聞けました。

ニコル 私が育った南ウェールズでは、我々(ウェールズ)は支配されたのですね、イングランドに。そして自然をものすごく破壊された。南ウェールズは特に、石炭がたくさん採れたから。ぼくが子どものとき、南ウェールズの森の面積は5%しかありませんでした。鉄砲水が頻発して病気も蔓延、石炭産業がだめになった時から、失業者がものすごく増えた。私は最近まで知らな
かったんですが、1947年、戦争から3人の若い先生が帰ってきた。その3人の先生が、未来は子どもだとわかっていた。自分のウェールズがどんどん貧乏になって、どんどんひどい状態になっていましたから。子どもたちに未来を信じ、人間はほかの生き物と協力する、それから、自分がやっていることにはやりがいがある、そして自分たちの文化に誇りを持つ。そういうことをしなければならないと思っていました。そのために、その3人は国から10ヘクタールの荒れた土地を借りた。まずその土地の石器時代からの歴史や過去にどんな木々があったかまでを調べた。そして、子どもたちと、その木々を植え始めたんです。いろんな道具を借りて、おんぼろ小屋を作って、子どもたちとたき火を焚いて、紅茶作って、トーストを焼いてね。その10ヘクタールは今は11000ヘクタール。

──11000!?すごい!

ニコル それが、アファン・アルゴード森林公園。.国がすごく困った時代にも、その先生たちは10年、20年と教え続けた、それでも、恐ろしい事故があったんですね。1967年に大規模な地滑りがあった。アヴァバンというところで、たくさんの小学生が犠牲になったんです。助かった子供は6人だけ、あとは百何十人か死んじゃったんですね。もう、仕事はない、川は死んでいる、森は死んでいる、金持ちは相変わらず金持ち、もう政治はめちゃめちゃ。でもその3人の先生の教え子がいたんですね。「この国が助かるためには、森、森だよ。森が復活すれば、水が戻ってくる。動物が戻ってくる。人間らしい生活ができるじゃないか」とね。「何を言う、金がないのに、森だなんて」という議論もあったけれど、たった3人とその仲間たちが作っちゃったんですよね。宗教関係なく、政治関係なく、ですよ。社会を、変えられたのよ。で、1980何年かに、アファン・アルゴード森林公園から手紙が来て、それで私行ってみた。そしたら、感動した。「これなら、僕にもできるんだ!」って。

情熱です、最後には。その情熱をどうやって持ち続けるかということ。今僕は偉いオジさんになったけど、情熱は負けません。僕は誰と付き合いたいかと言ったら、情熱をもった人、小さい子どもたち。アファンの森で成功したら、いい友達ができるかな、って思っています。

でもひとつ言いたいのは、問題の解決方法を聞かないで欲しいと言うこと。あなたの夢を語ってもらいたい。あなたが行動していることについて語ってほしい。わたしに南アフリカの森林を守る方法を聞かないでほしい。日本の小さな森を助けた方法は教えられます。そういうことです。「私はこう思っている」という人と会いたいですね。

──自分で考えて、自分で行動しろ、とそういうメッセージですね。

ニコル そう。