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第10回ロハス会議(LOHAS 10)

第10回ロハス会議(LOHAS 10)

京都と銀座でお宿を営む中川誼美さん。現代の衣食住のスタイルを見直す文化活動を行っておられます。「生きていく上での知恵を”すごいですね”と感心するだけではなく、実践してもらえるようなブログにしたい」と中川さんの想いは熱い。
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ロハス会議の会場風景

去る、4月26,27,28日、カリフォル二ア州サンタモニカで開かれた、「第10回ロハス会議」のジャパンルームに、銀座吉水の部屋を展示して参りました。「ロハス(LOHAS)」とは、「Lifestyles of Health and Sustainability」の頭文字をとったもので、健康と地球の持続可能性を志向する生き方暮らしかたを意味します。

1990年終わりに、コロラド州ボルダーでLOHASが誕生し、このライフスタイルの提唱は、ビジネス社会の目の付け所となり、企業のコンセプトにも取り入れられるようになりました。そして今回の「第10回ロハス会議」へと発展したのです。ロッキー山脈の麓の小さな町ボルダーから始まったこの会議は、毎年参加者を増やし、今年は日本からも60人近い参加者があり総勢600人の大規模なものになり、場所も海辺の美しい町サンタモニカとなりました。

さて、「第10回ロハス会議」に出展を決めた後、まず無農薬のイグサ畳を植田畳店植田昇氏に注文するところから作業は始まりました。3年前の銀座吉水開業時に、彼は全ての和室に無農薬のイグサ畳の製作を担当してくれていました。四畳半分の畳を航空便で送る作業は税関の問題など予想以上に大変でしたがなんとか間に合わせることが出来ました。

ここで少し銀座吉水の説明をさせていただきます。銀座の小さい土地ではビルは不可欠な建物ですが、10フロアーのビルの内装を出来る限り自然素材で造ることで快適な宿と食事処ができるのではないかというのが私の願いでした。

無農薬の畳、サメジマコーポレーションの珪藻土の壁、竹の床、和紙の天井、障子や襖等日本の伝統的建材を徹底的に使うことで出来上がった空間は、ビルの中、銀座の中とは思えないほど心地よいものになりました。それは予想以上の出来で、いかに日本の伝統工法が優れているかの証明になりました。

出展のお誘いがあった時すぐに思いついたのは、吉水の部屋を持って行くことでした。日本の伝統的な暮らし方はロハスそのものであり、それを実現させているのは、日本の家であり部屋です。空間があってこそ日本のロハスが主張できるにちがいないと考えてのことでした。畳は空輸しましたが、壁を運ぶことは不可能です。そこでサメジマコーポレーションの有光氏と吉水のスタッフ中川は、サンタモニカの建材店から材料を買い、壁を作ることを思いつきました。有光氏は壁の材料と塗るために必要なコテなど道具一式を手荷物として飛行機に乗せ、現地で彼らは大型レンタカーで材料を運び、モーテルの駐車場で壁の製作に取り掛かりました。モーテルの主人に足りない大工道具を貸してもらいながら、カリフォルニアの空の下での作業は順調に終わりました。

26日にジャパンルームで組み立てが終わり、出来上がった壁に珪藻土を塗り始めますと、参加者の中から手伝いたいとの希望者も現れ、楽しい笑い声の中、壁も完成しました。ベージュ色の珪藻土の壁に、畳、障子の衝立を置き、吉水コーナーは出来上がりです。部屋の他のコーナーには竹布、日本酒、石鹸、香等伝統的な商品が並べられました。

多くの方々がジャパンルームを訪れて下さり、畳に座りお茶を飲んだり寝転んだりして、日本間の感触を味わってくださいました。様々な国の方達が靴を脱いでぎごちなく畳の部屋に上がり、誰もが気持よいとの表現をされ、畳がイグサで出来ていることを体験していかれました。日本の方の中にも畳が植物のイグサで作られていることを知らなかったと、手で撫でて納得されておられるのを見て、ただただ驚きました。私にとってあたり前のことが、実は外国の方ばかりでなく、日本の方にとっても新しい体験であったことに、今回の展示の意味の大きさを感じました。

山田まりさんと

今回の出展者のなかに92歳の山田まりさんが居られました。ミルバレーから娘さん夫妻と共に参加されていましたが、芝生の椅子に掛けられ始めから私達の作業の一部始終をご覧になり、悠然と毎日を過ごされていました。初めは遠慮しておりましたが、私はお話をさせて頂くことになり、まずそのお年にびっくりしました。

とにかくお若い、その一言につきますが、その秘訣をすぐさまお聞きしましたところ、つぎのようなお言葉がかえってきました。「貴女、ネガティブはだめよ、ポジティブに生きること。そして諦めることは淋しいことなのよ」と。「毎日夕食にワインをいただき、部屋に入って一人になってからはブランデーを少しいただくの。聖路加病院の日野原先生のご著書を読むことも何よりの楽しみ」。

60歳を過ぎてからのアメリカ暮らしにも何の抵抗もなく、92歳の毎日を楽しんで居られます。日本の伝統文化を大切にされ、単にアメリカナイズされておられるのでなく、すべてを日々の暮らしの中に生かして、お料理から仕事の行く末にまでもご自身の思いをおろそかにされていませんでした。そしてまりさんと私との間にひとつの共通点も見つけることが出来たことで、これからの私の生き方にも自信を持たせていただくことになりました。その共通点は、化粧品を持たないということでした。まりさんはオリーブ石鹸のみ、私はリップクリームを年間2本、それだけが二人の消費でした。「第10回ロハスワールド会議」については次回またご報告させていただきます。

著者プロフィール
中川誼美(なかがわよしみ) 株式会社吉水代表取締役

ナチュラルライフを求めて多くのヒッピーたちが暮らしていたNY州ウッドストックで、70年代、私の新婚生活は始まりました。以来自然志向の暮らしは全ての基礎に。1998年京都に自然を肌で体験できる宿「京都吉水」を、2003年銀座に内装に自然素材を使った10階建てのビルを建築、宿とレストラン「銀座吉水」を開業。

料理は科学物質を含まない安心な食材のみで調理されているものをお出しし、テレビや冷蔵庫のない和室でオーガニック布団に包まれてお休みいただいております。

吉水のコンセプトを通じて、自然に優しい暮らし方を提案し、日本文化の素晴らしさを再認識していただきたいと思います。夢は安心安全な食事を当たり前に食べられるようにすること。また、家族や友人、職場も楽しくコミュニケーションがとれる社会を作ること。そんなことを本気で考えています。